尿酸値と言えば痛風ですが、尿酸値に関しては何かしっくり来ていません。痛風発作が起きているときに尿酸値が高くない人もいます。尿酸が高くなることと、尿酸の結晶ができて痛風発作を起こすことの間にはまだ何か他のことが絡んでいる気がします。尿酸が何を表しているのかもまだ私にはわかりません。
今回は痛風のことではなく、尿酸値が心血管疾患のリスク増加と関連があるという研究をご紹介します。
対象は1423名の中年のフィンランド人男性です。平均追跡期間は11.9年です。(図は原文より)
上の図はAが心血管疾患による死亡、下のBが全原因死亡を表しています。
血清尿酸値を3つの群、3.03~5.04mg/dL、5.05~5.88mg/dL、5.89~9.58mg/dLに分けました。そうすると上位2/3の血清尿酸値は下位1/3の尿酸値よりも心血管疾患による死亡リスクが約2.7倍高かったのです。メタボリックシンドロームに関連する因子で調整するとなんと4.98~4.77倍にもリスクが増加しました。つまり、尿酸値は5.05以上であると非常に心血管疾患のリスクが高くなるというのです。
また、何らかの原因で死亡するリスクは上位1/3の血清尿酸値は下位1/3の尿酸値よりも約1.7倍増加し、様々な調整をすると1.85倍までリスクが増加しました。
脳卒中による死亡も5.52倍のリスク増加です。
本当でしょうか?私は5.1なんですけど。まだ示していませんが、今回皆さんからいただいた血液データでの尿酸値の平均は5.5です。(基準値は7以下です。)
様々な研究ではインスリン抵抗性と尿酸値の上昇が関連しているとしています。インスリンの分泌はナトリウムおよびカリウムの排泄の減少を伴う尿酸排泄の顕著な減少を引き起こします。高インスリン血症となり、尿酸の排泄が悪くなることにより尿酸値が高くなると考えられます。インスリン抵抗性がない、糖質制限をしている人の尿酸値はあまり気にしなくていいのではと思っています。痛風も本当に尿酸値が上昇することだけが原因なのか疑問に思っています。しかし、中性脂肪が高かったり、脂肪肝のある人で尿酸値が高い場合は要注意なのかもしれません。尿酸が増加した背景が重要だということです。
尿酸は抗酸化物質です。心血管疾患の主要要因がアテローム性動脈硬化症であり、それには酸化LDLが大きく関わっているとすると、なぜ尿酸が高値であるほど心血管疾患のリスクが増加するのでしょうか?もちろん関連はしていると思いますが、尿酸が高くなるのはリスク増加の要因ではなく、心血管疾患の結果ではないでしょうか?身体を防御するためのメカニズムがあるのかもしれません。
また、以前の記事「果糖は中性脂肪を増加させ、小さなLDLや酸化LDLも増加させる」に書いたように、果糖過剰摂取は尿酸値を増加させ、インスリン抵抗性を起こします。一方で果糖は中性脂肪やレムナントを増加させ、sdLDLも増加させます。そう考えると、果糖摂取により、様々な変化が起き、その一つが尿酸値の増加であり、尿酸値が増加すること自体が悪いことではないのでは?と考えます。
心血管疾患では尿酸値が高いことが多いということは、血管内は抗酸化物質がたっぷりあるということです。何とか防御しようとしているのかもしれません。さらに抗酸化物質が多いのであれば、酸化LDLは血管内でLDLが酸化されてできるものではないと思われます。つまり、酸化LDLは悪さをしているというより、もうすでに悪いことが起きているマーカーではないでしょうか?つまり、どこかで酸化LDLができて、それが血管内に漏れ出てきているのです。
これについてはまた記事にしたいと思います。
「Uric acid level as a risk factor for cardiovascular and all-cause mortality in middle-aged men: a prospective cohort study」
「中年男性における心血管疾患および全死亡率の危険因子としての尿酸値:前向きコホート研究」(原文はここ)