尿酸値が高いことは悪いことなのか? その1 骨と筋肉

尿酸は増加すると痛風になると思われています。確かに痛風を起こす人は高尿酸血症の人が多いのは確かなのですが、痛風発作を起こすときに多くの人は尿酸値は基準値以内です。

何かしっくりきません。以前の記事「食事の変更と痛風発作の減少」では、食事を変更して、ちょっと尿酸値が下がっただけで、基準値よりもまだ高い状態なのに、痛風発作が激減することを書きました。

本当は尿酸値が高くても問題ないのでは?と思っています。そして、尿酸値が高いことは実はメリットもあります。

いくつもの研究によれば、高尿酸血症は骨を保護する可能性を指摘しているのです。尿酸値が低い人と比較して高い人では骨密度が高いという研究が非常に多いのです。(図は原文より)

 

 

上の図は縦軸が骨密度を表し、横軸は尿酸値により4分位に分けてQ1が最も低い尿酸値群、Q4が最も高い尿酸値群です。左のグラフが腰椎、真ん中が股関節、左が全身のグラフです。見てわかるように尿酸値が高い群の方が骨密度が高くなっています。

そして、実際の脊椎の椎体骨折について、平均値(約6mg/dL)より低い人と比較して平均値より高い人ではオッズ比が0.65と、尿酸値が高い人の方が骨折も起きにくいという結果になったのです。

「Serum uric acid is associated with bone health in older men: a cross-sectional population-based study」

「血清尿酸は高齢者の骨の健康と関連しています:横断的な集団ベースの研究」(原文はここ

 

また別の研究では骨密度だけではなく、筋肉量についても分析しています。尿酸値により4分位に分け、Q1の平均尿酸値は4.32mg/dL、Q2では5.35mg/dL、Q3では6.15mg/dL、Q4では7.58mg/dLでした。(表は原文より改変)

骨格筋質量指数(SMI)というものを用いて比較すると、下の表のようでした。

SMIQ1Q2Q3Q4
全身SMI6.5836.726.8786.990
腕SMI1.5891.6151.6471.672
脚SMI4.9935.1115.2315.317

全身も腕や脚も尿酸値が高いほど筋肉量も増加していたのです。

非常に抗酸化作用が高い尿酸は非常に重要です。年齢とともに酸化ストレスが増加し、その酸化ストレスによって、骨量減少や筋肉の老化が起きていると考えれば、尿酸値が高いことは骨や筋肉を保護すると考えても不思議ではありません。

そう考えると、痛風を発症していない人に尿酸値を下げる薬を投与することは問題である可能性があります。どんどんコレステロールと同じ匂いがする気がしてきたのは私だけでしょうか?

糖質制限と尿酸値上昇」で書いたように、糖質制限をして尿酸値が増加してもあまり気にしなくても良いのではと思います。

そして、さらに尿酸値が高いことの別の利点を次の記事で書きます。

 

「Elevated Serum Uric Acid Is Associated with Greater Bone Mineral Density and Skeletal Muscle Mass in Middle-Aged and Older Adults」

「中高年層の高血清中尿酸が骨密度および骨格筋量に関連している」(原文はここ

16 thoughts on “尿酸値が高いことは悪いことなのか? その1 骨と筋肉

  1. 次の記事が待てないので早速反応しますが(笑)
    一年前までの(超)糖質過剰摂取時代より高尿酸血症を指摘されてきた私です。

    現在に至るまでむしろ尿酸値は上昇傾向なのですが、LDL-C等と同様に”質”や意味が変化している可能性もあるのでしょうかね。

    このような研究結果があると心強いのですが、何事もバイアスの罠には気をつけたいとも思います。

    1. ねけさん、コメントありがとうございます。

      糖質過剰摂取(インスリン抵抗性)+高尿酸血症=痛風だと思っています。
      もし、このまま糖質制限をしているのに高尿酸血症により痛風を発症したら是非お知らせください。

  2. 半年ほど前の検査になりますが、空腹時インスリンは1.73(その4ヶ月前は3.41)と順調に”正常値”を割り込んでいて、HOMA-βは検査時の空腹時血糖値が63であったため計算式に当てはめると「0」になってしまうという(笑)

    HOMA-IRも0.27程度となるようなのでインスリン抵抗性は低いようです。
    スーパー糖質制限開始後の過去1年の尿酸値は8.2-9.8、直近は8.8で高値安定です(爆)糖質制限前は過去10年ほど7台でむしろ上昇しています。

    もちろん糖質制限はこのまま継続しますので、この条件下で痛風発作を起こした場合は直ちにご報告します。今後の貴重なデータになるかもしれませんから(笑)

    1. ねけさん、コメントありがとうございます。

      HOMA-βは一応30%以下は軽度、15%以下は顕著なインスリン分泌低下です。しかし、ケトン食でケトン体がものすごく高い場合、
      確かに空腹時血糖が非常に低い場合があり、HOMA-βはゼロまたはマイナスになります。
      糖質制限をしている人は低めになるので、糖質制限をしている人は参考程度ではないでしょうか?
      HOMA-IRはそのまま使えると思っていますが、わかりません。
      いぜれにしてもすべてのデータの基準は糖質過剰摂取の人ですから、糖質制限をすると当てはまらないものがいっぱい出てくると思います。

      n=1のデータは貴重です。痛風にはならないと思いますが…

  3. いつも拝見しており,とても勉強になっております.
    私は糖質制限を始めて7年になりますが(かなりいい加減な糖質制限ですが)尿酸値はほとんど上昇しませんでした.ちなみにLDL-Cは120くらいから190くらいに上昇しました.個人差があるのでしょうね.
    空腹時インスリンはファルコで測定してもらっていますが検出限界(1.5)以下で,HOMAは計算不能です.

    1. 和田久泰さん、コメントありがとうございます。

      空腹時インスリンが検出限界であることがあるのですね。無知で知りませんでした。
      非常に興味深いです。

  4. フェブリク10mg/日服用して3年になります らこ です。
    主治医は「老化が原因」と言ってますが、私らこ は糖尿病合併症と思っています。中期アルツハイマー型認知症発症するほど、糖質ガンガン食ってたからなあwww

    従兄弟が5才から透析受けて50年以上、悲惨な生活知っているので、フェブリク服用はきちんと守っています。主治医からは「3年全く悪化しない患者はいないよ!」と言われてます。透析食らいたくないですからねえ。

    ◎骨うんぬんよりも、「透析への道を遠くする」

    と思ってます。

    1. らこさん

      糖質制限10年ですから、フェビリクがまだ必要かどうか?
      診察していないのでわかりませんが、止めてみて痛風が出なければ飲まずに済むのではないでしょうか?
      尿酸値が高い=痛風ではないので、欧米では尿酸値が高くても痛風発作がなければ、経過観察です。
      尿酸値が高いことは悪いことなのか? その2 認知症
      も読んでみてください。
      痛風から透析になることはあると思いますが、高尿酸血症だけが悪いのではなく、糖質過剰摂取が一番の問題だと思います。
      もし、止める気持ちがあれば、主治医の先生とご相談を。

  5. 高尿酸血症 → 透析 と主治医に教わっています。痛風は怖くないですが、透析は怖いです。フェブリク10mg/日 服用は、止める気はありません。骨が丈夫になるよりも、透析回避が優先です。
    主治医は「勝手に服用中止が多く、透析になってから戻ってくる」と言ってます。

  6. このHPが分かり易いです。

    https://www.skk-net.com/health/illness/02/

    痛風は2番目、透析は3番目です。痛風の方が多いのでしょうね。
    高尿酸血症を放置すると、

    1. 関節痛
    2. 痛風
    3. 透析
    4. 尿路結石

    になります。透析になったら、一生悲惨な生活が待ってます。骨が丈夫にならなくても、全く問題ありません。特に、疲労骨折もしていませんから。

  7. 「スーパー糖質制限食実行していれば、高尿酸血症になっても、透析にはならない」

    と言う情報を教えて下さい。

    1. らこさん

      「スーパー糖質制限食実行していれば、高尿酸血症になっても、透析にはならない」というエビデンスは存在していないと思います。

      糖質制限と高尿酸血症の関連は次のように私は考えています。
      1.ケトン体がまだ尿から排泄されていることによる尿酸の再吸収の増加
      2.摂取エネルギーが少なすぎて、それがストレスになったり、筋肉の分解を起こして尿酸値が上がっている
      3.糖質制限をしていること自体がストレスになってコルチゾールが分泌されて、尿酸値が上がっている
      4.塩分制限になっていて、コルチゾールが分泌されて、尿酸値が上がっている
      5.水分摂取量の不足により脱水傾向にあり尿酸値が増加している
      糖質制限と尿酸値上昇」を読んでみてください。

      また、10mg/dLを超える尿酸値でも痛風を発症するのは10年間で約40%だけです。つまり、高尿酸血症以外の因子が何か働いて痛風になると思われます。
      痛風腎での透析導入は全体の1%をはるかに下回っていて、男女合わせても0.3%、女性だけなら0.1%です。一方で糖尿病性腎症で透析になる割合は約40%です。

  8. >1.ケトン体がまだ尿から排泄されていることによる尿酸の再吸収の増加

    スーパー糖質制限食実行7年経過するまで、高尿酸血症になっていないので、考えにくいですね

    >2.摂取エネルギーが少なすぎて、それがストレスになったり、筋肉の分解を起こして尿酸値が上がっている

    BMI=22で安定しているので、小食の可能性ゼロです

    >3.糖質制限をしていること自体がストレスになってコルチゾールが分泌されて、尿酸値が上がっている

    10年続けているので、日常生活です。

    >4.塩分制限になっていて、コルチゾールが分泌されて、尿酸値が上がっている

    塩は気にせず食ってます。

    >5.水分摂取量の不足により脱水傾向にあり尿酸値が増加している

    水は最低 2.4L/日 摂取してます。大概 3.2L以上飲んでます。

    痛風は怖くないです。透析の話をお願いします。

    1. らこさん

      私から尿酸について提供できる情報はこれ以上ありません。
      私はまだまだ知らないことが多いので、これ以上の解明ができません。
      ご自身が正しいと思うことをご自身でご判断ください。

  9. ありがとうございます。

    清水先生が誤解していることは、

    ◎高尿酸血症 → 痛風腎 → 透析

    だけ、と思っていることです。主治医の話では

    ◎高尿酸血症 → 透析

    が極めて多い、とのことです。つまり痛風は発症しないのです。清水先生は「痛風経由の透析」の確率が低い、を挙げていらっしゃいます。確かに論文の通りでしょう。「痛風経由無しで透析」が怖いです。「痛みが出なければ良い」とは思っていません。透析の悲惨さは従兄弟見て充分認識してますから。

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