ナイアシンによる眼毒性 その1

以前の記事「ナイアシンは安全か? その2」の最後の方で、ナイアシンによる眼に対する毒性について書きましたが、どうやらナイアシンは眼の細胞の中のミューラー細胞というものを傷害するようです。

ミューラー細胞とは網膜に特異的に存在するグリア細胞で、網膜の支柱をなすような形で存在し、様々な機能があると考えられています。例えば、変性網膜の修復機能、神経細胞を標的とする神経栄養因子の分泌機能、血管新生作用、神経伝達物質の代謝などです。(ここを参照)また、ミューラー細胞は光を分けて、異なる波長の光を桿体細胞と錐体細胞に当てることにより、夜間視力を損なわずに昼間視力を向上させる作用があると考えられています。(この論文参照)

眼にとって非常に重要な細胞です。ナイアシンはこのミューラー細胞に毒性を示すようです。

一般的には「Niacin Maculopathy」「ナイアシン黄斑症」と言われています。今回の研究の61歳の患者は数か月間、1日に3~6gのナイアシンを摂取していました。1か月前から視力が低下し、病院で検査した時にはほとんど視力を失った状態でした。この人の眼を詳しく検査すると、ミュラー細胞の機能不全と考えられる所見が得られました。ただナイアシンをやめて2か月後までに回復したそうです。

ナイアシンを1日3g以上摂取すると、視力障害、まぶたの浮腫、中毒性弱視、眼球突出、まつげまたは眉毛の喪失、表在性点状角膜炎および嚢胞性黄斑浮腫(ナイアシン黄斑症)を引き起こす可能性があると報告されています。

ただ、これまでにナイアシン黄斑症の副作用を示した最少のナイアシン量は18㎎です。この人は2型糖尿病を持つ53歳の女性でした。糖尿病ではミューラー細胞が影響を受けて機能障害になっている可能性も高くなるでしょう。それにより低用量のナイアシンであっても黄斑浮腫の発症の原因になる可能性があります。糖尿病の人では止めるべきかもしれません。

ナイアシンを摂取して、眼に何らかの症状を感じたらすぐに中止しましょう。

ナイアシンには膵毒性、肝毒性、そして眼毒性と様々な臓器に有害なことが起きる可能性があります。慎重に使用したほうが良いでしょう。

「Optical Coherence Tomography, Fluorescein Angiography, and Electroretinography Features of Niacin Maculopathy: New Insight Into Pathogenesis」

「ナイアシン黄斑症の光干渉断層法、フルオレセイン血管造影、および網膜電図の特徴:病因への新しい洞察」(原文はここ

サプリメント

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コメント

  1. ジェームズ中野 より:

    清水先生、いつも有益な情報をありがとうございます。ナイアシンについてお尋ねいたします。

    今回取り上げられました症例の方は、薬かサプリメントでナイアシンを単独で摂取されていたのでしょうか?あるいは食品からでしょうか?

    糖質制限をする中で食品から摂取するナイアシンの量は糖質制限をしていない人よりも多い可能性がありますね?例えば、にぼしであるとかさばの水煮缶であるとか、ぶなしめじなどのキノコ類であるとかナッツ類であるとか…。いちど1日の総摂取栄養素のうち、ナイアシンの量を計算してみるべきでしょうか?

    清水先生は、1日のナイアシン摂取基準をどれぐらいに定められていらっしゃいますか?

    先ほど女子栄養大学の七訂から毎日摂取する食品のナイアシン量を抜き出してみました。これから合計してみようかなと思っています。ところでその食品に含むナイアシン量がそのまま人間の体が吸収するでしょうか?何割かは吸収されずに、排出されてしまいますよね?それはいったい何割ぐらいでしょうか?ご存知ならば教えていただきたいです。

    以上よろしくお願いいたします。

    • Dr.Shimizu より:

      ジェームズ中野さん、コメントありがとうございます。

      もちろん、今回の方のナイアシンはサプリです。
      ナイアシンの摂取量は考えたこともありません。自分の食事でナイアシンが不足するとは思えないし、過量過ぎることもないと思っているからです。
      問題が起きる過量は人類にとって不自然な摂取の仕方であり、通常食事からでは起きないと思います。

      日本人の食事摂取基準によると
      「日本で食されている平均的な食事中のナイアシンの遊離型ナイアシンに対する相対生体利用率は、60% 程度であると報告されている」
      と書かれています。

  2. あるビタミン嫌い より:

    ナイアシン黄斑症:文献のレビュー

    Ocular Effects of Niacin: A Review of the Literature.

    https://europepmc.org/article/MED/26060832#free-full-text

    ナイアシンには注意が必要ですね

    • Dr.Shimizu より:

      あるビタミン嫌いさん、情報ありがとうございます。

      この論文は記事を書くときにすでに読んでおります。