マルチビタミンの使用は乳がんを増加させる可能性がある

小林麻央さんが乳がんで亡くなりました。34歳という若さです。何が乳がんにとって良くないのかまだわからないことだらけです。その中で、いくつかの研究論文を取り上げていきたいと思います。

まずはマルチビタミンです。健康のためを思い、マルチビタミンを常用している方もいるかもしれませんが、そのマルチビタミンが乳がんの増加の一因である可能性を示唆したものです。

「Multivitamin use and breast cancer incidence in a prospective cohort of Swedish women」

「スウェーデンの女性の前向きコホートにおけるマルチビタミンの使用と乳がんの発生率」(原文はここ

要約

背景:多くの女性は、これらのサプリメントががんや心血管疾患などの慢性疾患を予防すると考えて、マルチビタミン剤を使用しています。しかし、マルチビタミンの使用が乳がんのリスクに影響を与えるかどうかは不明です。

目的:スウェーデンのマンモグラフィーコホートにおいて、マルチビタミンの使用と浸潤性乳がんの発生率との間の関連を前向きに検討しました。

デザイン:1997年に、35,329人のがんのない女性に、マルチビタミンの使用に関する情報と他の乳がんのリスク要因に関する自己管理アンケートを行いました。相対リスク(RR)および95%CIを計算し、乳がんリスクファクターを調整しました。

結果:平均9.5年の追跡期間中、974人の女性が、乳がんを発症したと診断されました。マルチビタミンの使用は、乳がんの統計的に有意に増加したリスクと関連していた。マルチビタミンの使用を報告した女性の多変量RRは1.19(95%CI:1.04,1.37)でした。この関連性は、乳房腫瘍のホルモン受容体状態によって著しい違いはありませんでした。

結論:これらの結果は、マルチビタミンの使用が乳がんのリスクの増加と関連していることを示唆しています。

リスクの上昇は19%です。対象は49歳から83歳で、しかもスウェーデンでの話でしょ?と思う方はそれで構いません。どうとらえるかは個人の自由です。食生活も違うでしょうから。麻央さんのような若い方は研究の中に入っていません。

実はスウェーデンは糖質制限先進国で、2013年の情報で23%の人が糖質制限を実施しているほどです。(詳しくは江部先生の記事を読んでみてください。)

そんな国民の中、健康に気を使っている人は多いのではないでしょうか?健康のためのビタミンサプリメントが逆の結果をもたらしてしまったことになります。

マルチビタミンなのでどの成分が乳がんと関連しているのかはわかりません。しかし、次からの研究を見るともしかしたら葉酸が原因の一つかもしれません。

同じスウェーデンからの研究で次のようなものがあります。乳がんにはエストロゲンと結びついて増殖するものがあります。エストロゲンレセプターのαとβの違いは私は良く知りませんが、今回の研究はそのβが陰性の方での研究です。

「Plasma Folate Concentrations Are Positively Associated with Risk of Estrogen Receptor β Negative Breast Cancer in a Swedish Nested Case Control Study」

「スウェーデンのコホート研究において、血漿葉酸濃度はエストロゲンレセプターβ陰性の乳がんのリスクに正の相関がある」(原文はここ

要約

乳がん発達における葉酸の役割は論争の的になっています。エストロゲンレセプター(ER)の状態だけでなく、腫瘍のERβの状態も、以前の疫学研究の結果を混乱させる可能性がある。我々は、血漿葉酸濃度とER状態によって定義される閉経後乳がんとの間の関連性を調べることを目的とした。この症例対照研究は、ERαおよびERβ状態に関する情報を伴う204の事例乳がん症例で行われた。血漿葉酸濃度を、症例および408対照(年齢および血液サンプル日付と一致)について分析した。血漿葉酸濃度(0.12 nmol / L)の第3三分位の女性(葉酸濃度が最も高い群)は、第1三分位の女性(葉酸濃度が最も低い群)よりもERβ陰性乳がんの発生率が高かった(OR:2.67; 95%CI:1.44-4.92; P-trend = 0.001)。血漿葉酸濃度とER状態によって定義される他の乳がんサブグループとの間の有意な関連性は観察されなかった。(つまり、ERαは関連無し)血漿葉酸濃度とERb陰性乳がんとの間の正の相関を示すということは、葉酸および乳がんの研究においてERbの状態を考慮に入れることの重要性を強調している。他の集団で再現された場合、観察は公衆衛生、特に葉酸強化についての示唆をもたらすかもしれない。

この研究も閉経後の女性を対象としていますが、エストロゲンレセプターの状態によっては、葉酸が乳がんリスクをかなり増加させることを示唆しています。リスクの高さは実に2.67倍です。

さらに、閉経後の乳がんでは、

「Folate intake, alcohol use, and postmenopausal breast cancer risk in the Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial」

「前立腺、肺、大腸、卵巣がんスクリーニングトライアルにおける葉酸の摂取、アルコールの使用、および閉経後乳がんリスク」(原文はここ

結果は、食品からの葉酸では閉経後乳がんと有意に関連していなかったのですが、葉酸サプリメント(マルチビタミンを含む)で400μg以上を摂取している女性は、葉酸サプリメントを服用していない女性よりも閉経後乳がんのリスクが19%高い(95%CI:1.01,1.41; P = 0.04)結果となりました。さらに総葉酸量の最高5分の1の人(つまり葉酸量が最も多い人の群)では、最低五分位群(最も少ない群)よりも32%高いリスク(95%CI:1.04,1.68、P = 0.03)が認められたのです。

つまり、サプリメントと食事の葉酸ではリスクが違うことを示唆しているのです。

葉酸は非常に重要な栄養素で、特に妊婦さんは胎児の成長に葉酸が欠かせません。葉酸が不足すると二分脊椎などの先天性異常が起こる可能性が高くなります。しかも、一番必要な時期は非常に初期の段階なので、普段から葉酸不足にならないようにしなければなりません。

もちろん、この妊娠する前後の時期にどうしても栄養が不足する場合はサプリメントという手段は非常に価値があるでしょう。しかし、やはり食事から摂れる方は食事を基本にしなければならないでしょう。食事から普通に摂っていれば、体が自然と調整します。しかし、大量の成分を含んでいるサプリメント摂取はこの自然の調整を乱してしまう可能性が十分考えられます。また、人間の体は本当の栄養と、人工の栄養を区別できているのかもしれません。

閉経後の研究が多く、若い方の乳がんのリスクはサプリメントと無関係である可能性ももちろんあります。それぞれがよく考えるべきでしょう。

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コメント

  1. 情報提供 より:

    既にご存じのこととは思いますが、こんな情報もあります。

    Cancer Incidence and Mortality After Treatment With Folic Acid and Vitamin B12
    葉酸とビタミンB 12による治療後の癌の発生率と死亡率
    Marta Ebbing, MD; Kaare Harald Bønaa, MD, PhD; Ottar Nygård, MD, PhD; et al Egil Arnesen, MD; Per Magne Ueland, MD, PhD; Jan Erik Nordrehaug, MD, PhD; Knut Rasmussen, MD, PhD; Inger Njølstad, MD, PhD; Helga Refsum, MD, PhD; Dennis W. Nilsen, MD, PhD; Aage Tverdal, PhD; Klaus Meyer, PhD; Stein Emil Vollset, MD, DrPH
    Author Affiliations Article Information
    JAMA. 2009;302(19):2119-2126. doi:10.1001/jama.2009.1622
    https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/184898

    Abstract要約

    Context 背景
    Recently, concern has been raised about the safety of folic acid, particularly in relation to cancer risk.
    最近、葉酸の安全性、特に癌の危険性に関して、懸念が高まっています。

    Objective 目的
    To evaluate effects of treatment with B vitamins on cancer outcomes and all-cause mortality in 2 randomized controlled trials.
    2つの無作為化対照試験において、ビタミンB群による治療が癌の転帰および全死因死亡率に及ぼす影響を評価すること。

    Design, Setting, and Participantsデザイン、設定、及び参加者
    Combined analysis and extended follow-up of participants from 2 randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trials (Norwegian Vitamin Trial and Western Norway B Vitamin Intervention Trial).
    2つの無作為化二重盲検プラセボコントロール臨床試験(ノルウェーのビタミン試験および西部ノルウェーBビタミン介入試験)からの参加者の複合分析および長期追跡調査。
    A total of 6837 patients with ischemic heart disease were treated with B vitamins or placebo between 1998 and 2005, and were followed up through December 31, 2007.
    虚血性心疾患を有する合計6837人の患者が1998年から2005年の間にビタミンB群またはプラセボで治療され、2007年12月31日まで追跡調査された。

    Interventions 介入
    Oral treatment with folic acid (0.8 mg/d) plus vitamin B12 (0.4 mg/d) and vitamin B6 (40 mg/d) (n = 1708);
    folic acid (0.8 mg/d) plus vitamin B12 (0.4 mg/d) (n = 1703);
    vitamin B6 alone (40 mg/d) (n = 1705);
    or placebo (n = 1721).
    葉酸(0.8 mg / d)とビタミンB 12(0.4 mg / d)およびビタミンB 6(40 mg / d)(n = 1708)。
    葉酸(0.8 mg / d)とビタミンB 12(0.4 mg / d)(n = 1703)。
    ビタミンB6単独(40 mg / d)(n = 1705)。
    またはプラセボ(n = 1721)。
    による経口治療。

    Main Outcome Measures 主要アウトカム測定
    Cancer incidence, cancer mortality, and all-cause mortality.
    がんの発生率、がんによる死亡率、および全原因死亡率。

    Results 結果
    During study treatment, median serum folate concentration increased more than 6-fold among participants given folic acid.
    試験治療中、血清葉酸濃度の中央値は葉酸を与えられた参加者の間で6倍以上増加した。
    After a median 39 months of treatment and an additional 38 months of posttrial observational follow-up, 341 participants (10.0%) who received folic acid plus vitamin B12 vs 288 participants (8.4%) who did not receive such treatment were diagnosed with cancer (hazard ratio [HR], 1.21; 95% confidence interval [CI], 1.03-1.41; P = .02).
    中央値39ヵ月の治療とさらに38ヵ月の試験後の観察追跡調査の後、葉酸とビタミンB 12を投与された341人の参加者(10.0%)と治療を受けなかった288人の参加者(8.4%)が癌と診断された (ハザード比[HR]、1.21; 95%信頼区間[CI]、1.03-1.41; P = .02)

    A total of 136 (4.0%) who received folic acid plus vitamin B12 vs 100 (2.9%) who did not receive such treatment died from cancer (HR, 1.38; 95% CI, 1.07-1.79; P = .01).
    葉酸とビタミンB 12を投与した合計136人(4.0%)、そのような治療を受けなかった100人(2.9%)が癌で死亡した(HR、1.38; 95%CI、1.07-1.79; P = 0.01)。
    A total of 548 patients (16.1%) who received folic acid plus vitamin B12 vs 473 (13.8%) who did not receive such treatment died from any cause (HR, 1.18; 95% CI, 1.04-1.33; P = .01).
    葉酸とビタミンB 12を投与した合計548人の患者(16.1%)、そのような治療を受けなかった473人(13.8%)が死亡した(HR、1.18; 95%CI、1.04-1.33; P = 0.01)。
    Results were mainly driven by increased lung cancer incidence in participants who received folic acid plus vitamin B12.
    結果は、主に葉酸とビタミンB12を摂取した参加者における肺がん発生率の増加によってもたらされました。
    Vitamin B6 treatment was not associated with any significant effects.
    ビタミンB 6の投与は有意な効果と関連していませんでした。

    Conclusion 結論
    Treatment with folic acid plus vitamin B12 was associated with increased cancer outcomes and all-cause mortality in patients with ischemic heart disease in Norway, where there is no folic acid fortification of foods.
    葉酸とビタミンB12を併用した治療は、食品の葉酸強化が行われていないノルウェーの虚血性心疾患患者におけるがんの転帰と全原因死亡の増加と関連していました。
    Trial Registration clinicaltrials.gov Identifier: NCT00671346

    • Dr.Shimizu より:

      情報提供さん、コメントありがとうございます。

      情報提供ありがとうございます。もちろん、知っております。いつか記事にしたいと思います。