タンパク質摂取と、インスリンとグルカゴンの分泌

以前の記事に続いて、タンパク質摂取後のインスリン分泌と合わせてグルカゴン分泌はどうなのかを記事にしたいと思います。

正常な人を対象にした前回と同じ論文から図を拝借しました。(原文はここ

Gluというのはグルコース(糖質)50gを単独で摂取、Proというのはタンパク質50gを単独摂取、Glu+Proはグルコース50gとタンパク質50gを同時摂取したものです。

 

 

 

これを見ると、タンパク質摂取のみでは血糖値の変動はほとんどありません。

しかし、グルコースとタンパク質を同時に摂取すると最初30分過ぎころではグルコースのみよりも血糖値の増加は大きいのですが、そのあと急速に低下して、90分過ぎにはベースラインよりも血糖値が下がっています。インスリンとグルカゴンを見ると、グルコースタンパク質同時摂取では、インスリンが60分くらいまでグルコース単独よりもかなり増加を示すにもかかわらず、グルカゴンは逆に45分くらいまでは低下しています。このインスリンとグルカゴンのアンバランスで、血糖値がその後大きく低下してしまったのかもしれません。そこで慌てたかのように、グルカゴンはどんどん上昇し、120分を過ぎるとタンパク質単独よりもさらに上回る高値となって、そのまま4時間後も低下していません。

タンパク質単独でも、グルカゴンは4時間してもまだベースラインよりもかなり高めを推移しています。グルカゴンはかなり複雑な動きをしていて、インスリンとの関係は完全に同期していないと考えられます。それよりもαアミノ窒素の曲線と非常に近似しているので、夏井先生のホームページにあったように、グルカゴンの役割はタンパク質の代謝で生じるアンモニアを尿酸に分解するのが主な役割だというのが最も考えられます。なので、タンパク質摂取によるグルカゴンの分泌がインスリン分泌を刺激しているわけではないということになります。

しかし、タンパク質単独摂取でもグルコース同時摂取でも、インスリンやCペプチドはしっかりと分泌されています。タンパク質とグルコース同時ではグルコースが何らかの邪魔をして、タンパク質の代謝で生じる物質が生成されるのが遅れて、グルカゴンが遅く上昇したのでしょうか?グルコースのグルカゴン分泌阻害作用が強烈なのでしょうか?そうすると、タンパク質単独摂取時の血糖値上昇はグルカゴンによるもので、タンパク質グルコース同時摂取の血糖値上昇はグルコースによるものなのでしょうか?

また、NEFAというのは遊離脂肪酸です。遊離脂肪酸は60分ほどで最低値になりしばらくそれが続きます。これはインスリンは脂肪の分解を阻害するので、インスリン追加分泌が60分くらいで最大になることと関連していると思われます。そして、タンパク質単独ではその遊離脂肪酸の低下の程度はかなり少ないので、グルコース摂取とそれに伴うインスリンの分泌がかなり強力な脂肪分解抑制の作用があると考えられます。

しかし、遊離脂肪酸の低下はタンパク質単独やグルコース単独では210分頃にベースラインに戻っていますが、タンパク質グルコース同時摂取では240分でもまだ、ベースラインには戻りません。インスリンのグラフを見ると同時摂取では240分でもまだインスリン追加分泌が出ていることと関連しているようです。

タンパク質単独では血糖値がほとんど変化せずに、グルカゴンは増加、インスリンも増加、遊離脂肪酸減少ということを合わせて考えると、タンパク質を単独で摂取した場合には、グルカゴンの分泌が刺激されて、それにより糖新生またはグリコーゲンの分解が起こりって糖が産生され、最初の段階ではそれに反応してインスリンが分泌されているのでは、と推測できます。

今回の論文でわかったことや推測できることは、

・タンパク質単独ではほとんど血糖値に影響はないこと

・しかしそれはインスリンとグルカゴンの追加分泌によって変動がないように見えているだけで、タンパク質摂取はグルカゴンを分泌刺激し、糖を作り出してはいること。最初の段階ではそれによりインスリンも追加分泌されていること

・グルカゴンの役割は糖を作り出すだけではなく、アミノ酸代謝産物の分解に関わっていること。それにより、グルカゴン分泌とインスリン分泌は途中から関連性が無くなっていること。

・タンパク質単独摂取で、グルカゴンの分泌の仕方によっては、つまり人によっては、糖が多くつくられ過ぎて血糖値が上がる可能性があること。

・タンパク質単独摂取では240分でインスリン値がベースラインに戻っているということは、タンパク質の消化吸収は恐らく4時間もあれば終わるということ。

・タンパク質と糖質同時に摂取すると、インスリンが3時間以降もダラダラ追加分泌が続くこと。それにより脂肪の分解も抑制され続けること。

・タンパク質と糖質同時摂取では、グルカゴンの分泌が最初抑制されてしまっていること。

・このグルカゴン抑制は糖質による、タンパク質吸収の阻害作用なのか、直接のグルカゴン分泌抑制作用なのかはわからない。しかし、αアミノ窒素が1時間ぐらい増加しないことを見ると、吸収が阻害されていると考えられること。

・そうすると、プロテインに糖質が含まれている場合には、プロテイン摂取は運動後30分以内がゴールデンタイムだ!というのは非常に怪しいこと。

・タンパク質と糖質同時摂取では、インスリンの追加分泌促進作用が大きくなるためか、インスリンが出過ぎて、2時間くらいするとかなりの低血糖を誘発する可能性があること。

などでしょうか?

非常に複雑な感じでまだうまく説明できません。

どなたかわかれば教えてください。

 

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