以前の記事「アテローム性動脈硬化症は生まれた頃から始まっている その1」で、アテローム性動脈硬化症は小さな子供の頃から始まっていることを書きました。そして、このような現象のいくつかは自然の成長の一部であり、残りのいくつかはミスマッチによる過剰な現象ではないか、と書きました。つまり糖質過剰摂取がアテローム性動脈硬化症をもたらしていると考えられるのです。
今回の研究はその糖質過剰摂取が大きな要因となることを示唆しています。
外部要因で亡くなった15~34歳の若い人1532人の大動脈と右冠動脈のアテローム性動脈硬化症を分析しました。(表は原文を改変)
年齢 | 糖化ヘモグロビン | 大動脈(%) | 右冠動脈(%) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
胸部 | 腹部 | ||||||
脂肪線条 | 隆起病変 | 脂肪線条 | 隆起病変 | 脂肪線条 | 隆起病変 | ||
15-19 | <8 | 17.03 | 0.17 | 22.17 | 0.63 | 2.11 | 0.52 |
≧8 | 24.58 | 0.26 | 22.32 | 0.62 | 2.51 | 1.45 | |
20-24 | <8 | 21.28 | 0.17 | 31.28 | 0.92 | 3.58 | 0.63 |
≧8 | 26.06 | 0.33 | 39.86 | 0.94 | 4.41 | 1.35 | |
25-29 | <8 | 23.46 | 0.19 | 35.22 | 1.96 | 4.64 | 0.91 |
≧8 | 20.71 | 0.19 | 38.43 | 4.31 | 30.76 | 7.49 | |
30-34 | <8 | 22.44 | 0.31 | 34.38 | 5.31 | 9.30 | 1.83 |
≧8 | 27.23 | 7.00 | 29.29 | 38.06 | 32.06 | 15.19 |
糖化ヘモグロビン(HbA1c)が8以上であると、25歳以上で右冠動脈の病変が急増し、30~34歳では右冠動脈だけでなく、大動脈の病変も非常に増加します。
糖化ヘモグロビン | 胸部大動脈隆起病変(%) | 腹部大動脈隆起病変(%) | 右冠動脈脂肪線条(%) | 右冠動脈隆起病変(%) |
<8% | 1.51 | 11.52 | 22.97 | 5.21 |
≧8% | 10.22 | 21.62 | 47.79 | 16.73 |
上の表は血管の表面の5%以上病変が発生している割合です。やはり腹部を除き、糖化ヘモグロビンが8%以上だと病変が非常に増加します。BMIや皮下脂肪の厚さも右冠動脈の病変と関連していました。
コレステロールや喫煙は関連を示しませんでした。
つまり、まだ若いにも関わらず、これほど糖質過剰摂取に関わる糖化ヘモグロビン上昇、肥満に関連して、アテローム性動脈硬化症が進行してしまうのです。10代では関連をまだ認めていませんが、徐々に進行していることがうかがえます。
糖化ヘモグロビン値を8で区切っているので、もう少し低い値で区切ったらどうなるか知りたいですね。
いずれにしても、10代で大動脈ではすでに20%前後の割合で病変が存在しているのです。右の冠動脈では2%以上が病変が存在しているのです。そして、その割合は、大動脈の脂肪線条では年齢とともにあまり増加しないのですが、隆起病変に関しては年齢とともに進行し、特に糖化ヘモグロビンが高いとかなり高い割合で進行してしまいます。
右冠動脈は年齢と共に脂肪線条も徐々に進行しているようです。
10代ですでにこれほど多くの病変が認められるということは、もっと若いときに、つまり幼い頃から脂肪の蓄積が始まっているのです。これはある程度避けられないことである可能性が高いのですが、しかし、かなりの部分では進行を抑えることが可能であるとも考えられます。糖質過剰摂取がこれほど病変の進行に影響があることを考えれば、糖質制限がかなり有効ではないかと私は考えます。
「Relation of glycohemoglobin and adiposity to atherosclerosis in youth. Pathobiological Determinants of Atherosclerosis in Youth (PDAY) Research Group」
「青年期における糖化ヘモグロビンや肥満とアテローム性動脈硬化症との関連 青年におけるアテローム性動脈硬化症の病態生理学的決定要因(PDAY)研究グループ」(原文はここ)