糖質はがんのエサです。何でも好きなものを食べていては、がんを育ててしまう可能性があります。
今回の研究は症例報告なので、それがそのままエビデンスではありませんから注意が必要ですが、通常の糖質過剰摂取をしていては得られなかったであろう、経過をたどっています。
54 歳の男性が頭痛、めまい、歩行失調、嘔吐、かすみ目の症状で受診しました。36年間大量に喫煙していました (1日4~5パック)。脳のCTで、左小脳、右側頭葉、前頭葉の両側に複数の転移病変があり、胸部CTより肺がんの脳転移と診断されました。下の図は脳と肺のCTです。矢印は脳の転移病変と肺の原発巣を示しています。(図は原文より)
この患者は脳の放射線療法と抗がん剤の治療を行いましたが、原発性および転移腫瘍病変の縮小に効果がありませんでした。その後、がんの進行を安定させるための補完的な代替療法として、ケトン食を始めました。
1日の平均は脂質192g、タンパク質62g、炭水化物2.5g、摂取エネルギー1,995kcalでした。
下の図はケトン食を始めておよそ1年4か月後のものです。脳の転移も肺の腫瘍も明らかに小さくなっています。
ケトン食開始2年7か月後です。ほぼ石灰化した病変のみですね。
ケトン食開始9年7か月後です。右前頭葉グリオーシスと石灰化のみです。
ケトン食開始10年後です。肺の病変も安定しています。
ケトン食の経過中に重大な副作用は見られませんでした。患者は3年後に腎臓結石を発症しましたが、砕石術で簡単に除去できました。
ケトン食の間、血糖値は60~70mg/dL、ケトン体値は約2mmol/L でした。10年間ケトン食を続けましたが、なぜか、HDLコレステロールはあまり上がらず40~55mg/dL、中性脂肪はあまり下がらず150~170mg/dLでしたが、10年後に総コレステロール280mg/dL、中性脂肪300mg/dLとなってしまい、ケトン食を中止しました。10年も続けるともしかしたら中性脂肪も大きく増加するのでしょうか?でもここでやめたのはもったいない気がします。ただ、患者がケトン食を中止してからほぼ4年が経過しましたが、腫瘍の再発の証拠もなく健康を維持しています。がんはケトン食10年で活動性を停止したように思えます。
もちろん全員がこのように上手くいくとは思いませんが、やってみる価値は十分にあるでしょう。その前に禁煙も重要ですが。
がんは糖質過剰症候群です。糖質はがんのエサです。少なくとも何か症状や疾患があるのであれば糖質制限をしっかりして、がんになればできる限りケトン食を行ってみた方が良いでしょう。
「Restricted Ketogenic Diet Therapy for Primary Lung Cancer With Metastasis to the Brain: A Case Report」
「脳への転移を伴う原発性肺がんに対するケトン食療法:症例報告」(原文はここ)
「補完的な代替療法として、ケトン食を始めました。1日の平均は脂質192g、タンパク質62g、炭水化物2.5g、摂取エネルギー1,995kcalでした。」
癌の症例ですが、いわゆる「健常者」にもケトン食は良さそうですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
普通の人がケトン食をやるのは結構大変かもしれません。スーパー糖質制限で十分だと思います。
「日に脂質192g、タンパク質62g、炭水化物2.5g」という食生活を10年続けた後、中性脂肪値が300に跳ね上がったことが気になりますね。「糖質を制限した食生活は中性脂肪値は確実に下げる」、この点は化学的見地からみても間違いないと理解していましたので、ちょっと不思議でした。糖質を極度に抑えたケトン食を10年単位の長期間にわたって続けることは、身体にとって好ましくはないということなのか、糖質制限の前提があるかぎり、中性脂肪値ガ300あってもとりたてて問題ないということなのか
赤松小三郎さん、コメントありがとうございます。
私もこの結果には疑問を持っています。しかし、その前からHDLコレステロールは低めだし、中性脂肪も3桁でしたので、
この方は何らかの別の代謝異常があるのかもしれませんね。
また、測定のタイミングなのかもしれません。わかりません。
いつもためになる論文紹介ありがとうございます。
n=1ですが、肺癌治療に希望の光をもたらす報告だと思います。
私もKDを取り入れておりますが、血糖値60-70はなかなか難しいです。
今後も工夫してKD治療を実践してゆきたいと思います。
猛暑の中、ご自愛ください。
吉田良昌さん、コメントありがとうございます。
推測にすぎませんが、恐らく血糖値は60~70ではなくとも、ケトン体が大きく上昇していれば、同じようなことが起きる可能性が高いと思います。