「糖質制限ダイエットは絶対やってはいけない3つの理由」って本当? その3 糖質制限はリバウンドする?

その1」「その2」の続きです。

今回は糖質制限はリバウンドするのか?を見ていきます。その1、2と同様のネットの記事からのものです。(記事はここ

糖質制限は比較的すぐに減量を実感できるので、良いと信じている人が多い印象がある。しかし、そもそも糖質制限ダイエットによる減量効果は一時的であり、長期的に維持することが難しいことはあまり知られていない。炭水化物の摂取量を控える糖質制限と、脂質の摂取量を控える低脂質ダイエットを比較した研究がある。その結果を見ると、たしかに6か月までの短期的な追跡においては、糖質制限ダイエットに軍配が上がることが分かる。しかし1年経つと、この2つのグループの間での違いはほぼなくなってしまった。
さらにデータを見てみると、1年後の段階で両群とも約4割の人は継続できず脱落していることが分かる。つまり、糖質制限ダイエットは長期的に続けることが難しい食事法と言える。

今回取り上げたネット記事の文章は、3年前の別の雑誌のネット記事の文章とほとんど変わっていません。アップデートはゼロです。糖質制限は6か月までは減量効果があるけれど、1年経つと低脂肪食と違いがなくなる、ということを説明する図が2つ掲載されています。

以前の記事「結構久しぶりの糖質制限否定の記事だけど その3 糖質制限と体重減少」で詳しくカラクリを書いていますが、もう一度何が問題かを書きたいと思います。

ここで掲載されている2つの図ですが、実は別々の研究です。(図はここここより)

まるで一つの研究であるかのように文章は書かれていますが、最初の図の参加者が12か月後に下の図のようになったわけではありません。もし、使うとしたら下の図だけで良いはずです。2つの別の研究をまるで1つの研究であるかのように受け取られかねないようにするのは、悪質ではないかと私は感じてしまいます。

別の研究なので、参加者の特徴も異なります。1つ目の参加者は平均年齢53~54歳、BMI42.9、体重130kg程度の人たちで、約40%が糖尿病です。

2つ目の研究の参加者は、平均年齢44歳、BMI約34、体重は約98kgで、糖尿病は除外されています。全然対象が違うのがわかります。

2つの研究を見てみましょう。最初の6か月間の研究は、低脂肪食と低炭水化物食の比較をしようとしたものです。低脂肪食では1日あたり500kcal減少したエネルギー(カロリー)制限を含み、総エネルギーの30%以下が脂肪に由来するようにデザインされていました。低炭水化物食は炭水化物の摂取量を1日あたり30g以下に制限するように指示されましたが、エネルギー制限は指示されていません。しかし、実際には、めちゃくちゃです。

エネルギー摂取量は低炭水化物食の方が500kcal近く減っていますが、低脂肪食は270kcalほどの減少です。また、低脂肪食群では脂肪由来のエネルギーの割合はベースラインと全く変わりありません。低炭水化物食では糖質制限とはほど遠い炭水化物の摂取割合は37%、摂取量で考えると150gもの炭水化物を摂取しています。30g以下の炭水化物を指示されていたのに全く守られていない研究なのです。恐らく申告した量も適当かもしれません。全くいい加減な研究です。それを取り上げるなんて…

2つ目の研究は、低炭水化物食はアトキンスダイエットなので、糖質制限に非常に近いものです。最初の2週間は、炭水化物の摂取量を1日あたり20 gに制限し、その後、安定した望ましい体重が得られるまで徐々に増やしていきます。つまり、体重減少量が設定されている食事です。設定減少量は不明です。また、実際にどこまで炭水化物摂取量が増やされたかはわかりません。一方、従来の食事群は高炭水化物、低脂肪、低カロリーの食事で、女性の場合は1日あたり1200〜1500 kcal、男性の場合は1日あたり1500〜1800kcalで、エネルギーの約60%が炭水化物、25%が脂質、15%がタンパク質です。

この研究では尿中のケトン体を測定していますが、糖質制限食を開始してしばらくは、尿中のケトン体も陽性となっていますが、尿中ケトン体が陽性の人の割合が最大でも60%前後ですので、恐らく40%程度の人はちゃんと糖質制限になっていなかったでしょう。さらに、12週間後から徐々に尿中ケトン体陽性の割合が低下して34週では10%程度ですが、これがちゃんと糖質制限をやっていてケトン体が陰性化したのか、それともいい加減にやる人が増加して陰性化した人が増えたのかはわかりません。

2つの研究の脱落者の割合は、最初の研究では6か月で、低脂肪グループは47%、低炭水化物グループは33%でした。低脂肪食の方が脱落者が多いですね。2つ目の研究では12カ月で、従来の食事グループが43%、低炭水化物グループでは39%で、これも低炭水化物(糖質制限)の方が脱落者が少ないです。

でも記事の中では「1年後の段階で両群とも約4割の人は継続できず脱落していることが分かる。つまり、糖質制限ダイエットは長期的に続けることが難しい食事法と言える。」と書いています。「両群とも」約4割脱落しているのに、「糖質制限ダイエット長期的に続けることが難しい」と書いています。なんで糖質制限だけ難しいと言えるのでしょうか?

実際のデータでは、低脂肪食やエネルギー制限食のグループの方が脱落者が多いのです。つまり、どんな食事法でも、自分自ら積極的に行ったものではない食事では、長くは続けられないのです。糖質制限だから続かないのではなく、強制的にやらされている食事を1年も続けられる人は少ないでしょう。だから1年も経てば体重はだんだん元に戻ってくるのです。ただ、それでも糖質制限では1年後でもベースラインよりも7.3%体重減少を維持しています。1年後で糖質制限に「効果が無くなった」わけではなく、両群に統計的に差が無くなっただけであり、体重が完全にベースラインに戻ったわけではないのです。

だからこのような研究を提示して、糖質制限はリバウンドしやすい、とは言えません。もちろん、糖質制限を止めて元の食事に戻せば、誰でもリバウンドします。当たり前です。食べたもので体はできているのですから。

ちゃんと糖質制限を続けている限り、リバウンドはしません。そして、自分で納得して、糖質制限をちゃんとやろうと思えば、全く長期的に続けることは難しくありませんし、その効果を実感できれば、元の食事に戻そうなどとは考えないでしょう。

AIも簡単にウソを言いますが、専門家を名乗る人たちに話にも要注意です。AIも専門家の話も、自分で内容をちゃんと調べるべきでしょう。

2 thoughts on “「糖質制限ダイエットは絶対やってはいけない3つの理由」って本当? その3 糖質制限はリバウンドする?

  1. 継続しなければ効果も何も
    あったもんじゃないでしょう。
    こういう情報で糖質制限の
    イメージが悪くなることも
    あるのでしょうね。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限を貶めるのが目的ですから。
      そうしないとみんな健康になってしまいます。

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