久しぶりに糖質制限反対派のネットの記事が出ましたね。記事の内容は著書の宣伝のようです。その著者は、エビデンス大好きの専門家(?)の方です。実際には全く同じような内容が2021年にも書かれていました。(その3年前にも出ていましたので、3年周期で同じ内容の記事が出るようです)全くアップデートされていません。その時も同じように反論しています。(「結構久しぶりの糖質制限否定の記事だけど その1」参照)今回のネット記事は完全な焼き直しです。私の反論も焼き直しですが、ちょっとはアップデートしています。
本の題名は「正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール」。無駄なお金と時間は使いたくないので、この本は私は購入しませんが、以前出版していた本と同様に、彼の言っていることが正しい知識であるというのが大前提のようです。以前の本ではエビデンスレベルが高い=正しい、というような感じを醸し出し、しかし自分の述べている内容に関して引用する論文のエビデンスレベルは決して高いものばかりではありませんでした。また、エビデンスが誰かにとって都合よく作られたものであることは、多くの人が知っていることなので、それを隠しているのは何らかの意図が感じられます。
今回の記事の題名は「糖質制限ダイエットは絶対やってはいけない3つの理由…医師が解説する“納得”しかないその根拠」(記事はここ)です。
ケネディさん曰く、
「“Saying ‘trust the experts’ makes no sense at all. Trusting the experts is a function of religion and totalitarianism. It is not a function of democracy. In a democracy we question everything.”」
「専門家を信頼しろ」と言うのはまったく意味がありません。専門家を信頼するのは宗教と全体主義の任務です。民主主義の任務ではありません。民主主義では、私たちはすべてを疑問視します。
マスコミはスポンサーには逆らえず、臆病になり、権威や「専門知識」を主張する人々の言うことを無批判に垂れ流しています。その結果、新型コロナウイルスのパンデミックは大成功しました。企業のセールスマンと化した専門知識を持っているとされる人たちが毎日のようにマスコミを通じて煽り続け、洗脳を行っていました。権威や専門家の人に対して質問、疑問を投げかけ、時には批判していた本来のジャーナリズムはどこに行ってしまったのでしょうか?言論の自由は統制され、様々な検閲が行われて、人々を思考停止状態に簡単に持って行けます。
専門家たちは、一部の狭い領域の勉強、研究をして、深い知識を持ち、その一部の人だけが専門知識を持っているので、その専門家の言っていることだけが正しいと主張するでしょう。しかし、それは非常に危険な考えです。人々をコントロールできてしまいます。
この著者が言う、「正しい医学知識」と称する内容は、本当に「正しい」かどうかしっかりと自分で考えて判断する必要があります。専門家が言うのだから間違いがない、という考えは一部の人の思う壺です。
私が今回書く記事の内容も、正しいかどうかはご自身で考えて判断して下さい。
今回取り上げる記事の中の3つの理由は「死亡率を高める」「不健康になる」「リバウンドする」です。
糖質制限は「体重を減らすという目的は達成できるかもしれないが、死亡率が高くなるなど健康を害してしまうリスクが報告されている」と言っています。本当でしょうか?
まずは糖質制限が死亡率を高めるのでしょうか?
彼が主張していることの根拠は以前に紹介したLancetの一部では有名な論文です。(「糖質を制限すると寿命が縮まる? 冗談のような研究」参照)一部で有名というのは、頻繁に自称専門家たちがこの論文を取り上げて、糖質制限を批判しているからです。その論文の中で最もよく使われる図は下の図です。(図は原文より)
この図はどこかで見たことがある人も多いでしょう。しかし、今回のオンラインの記事では、同じ論文の中でも違う図を使ってきました。
図は変えてきましたが、それでも、内容に違いはありません。この研究の言いたいのは、炭水化物の摂取割合が50%程度摂取することが最も長生きである。そして炭水化物の割合が少なくなるほど、死亡率は増加する、というものです。図を信じれば確かにそうです。
しかし、「糖質を制限すると寿命が縮まる? 冗談のような研究」で書いたように、問題点がいくつもある研究です。
炭水化物が最も少ない群と最も多い群を比較すると、なぜか炭水化物が最も少ない群の方が男性が非常に多く、なぜかBMIも高く、糖尿病の割合も高く、喫煙者の割合も高く、身体活動は少ないのです。比較している集団があまりにも炭水化物の量以外の因子が違い過ぎています。そして、あまりにも炭水化物が最も少ない群の方が不健康な集団です。さらに、全ての群のエネルギー摂取量は1600kcal前後です。アメリカ人のエネルギー摂取量は平均して3500kcalぐらいはあるのではと推測されています。それが本当だとするとこの研究のデータは実際のエネルギー摂取量の半分以下しか評価していないと考えられます。つまり、多くの人が過少申告をしています。そして、この研究のデータはいつものように食事に関するアンケートという質の低いデータを分析しています。
さらに、この研究の食事のアンケートは、25年間も追跡しているのに、その間にたった2回しか行っていません。25年もの間に2回ですから10数年間は同じ食事をしたという前提の研究となっています。
さらにさらに、糖質制限は基本的に1日の糖質摂取量は60g以下ですが、この研究の最も少ない群の平均は炭水化物が37%であるので、約150gになります。この研究で糖質制限を批判するには非常に無理があります。
そして、今回の研究ではアルコールの評価が全くされていません。アルコールをたくさん飲むほど炭水化物の摂取量は減少するという研究があります。非常に健康にとって重要な食事の因子であるのに、何も評価しないのも意図的かもしれませんね。
糖質制限反対派の人間が都合よくデータをいじくって、都合の良い結果を出しただけの研究ではないかと思います。
私は、この研究を持ち出して糖質制限を批判する人間の言うことは信用すべきではないと考えています。それは、ちゃんと中身を読んでいないか、糖質制限の知識がほとんどないか、それとも糖質制限の知識はあるが敢えて騙そうとしているのか、のどれかではないかと考えるからです。論文の中身をちゃんと読んでいない人は多いでしょう。要旨だけを読んで、その結果に飛びついて、よく考えないまま情報を発信してしまっている人です。もう一つ、糖質制限の知識がない人も多いでしょう。ちょっと糖質を減らしただけで糖質制限だ、と思い込んでいる人も多いのではないでしょうか?これは糖質制限の定義がしっかりと決まっていないことが要因でもありますが。
しかし、エビデンス、エビデンスといつも主張している人であれば、敢えて騙そうとしている人も少なくないのかもしれません。エビデンスを武器にする場合、一般の人はその中身をちゃんと理解できないであろうと思い込んでいるからです。専門家という立場でものを言えば、多くの人は信用すると思っているからです。
いずれにしても、こんな程度の研究が一流と言われている医学雑誌に掲載され、こんないい加減なレベルのデータで、エビデンスと称して、糖質制限は死亡率を高める、と断定するのは真の専門家とは言えないでしょう。医学という未知のことが多い領域、人間という複雑系、食事という不確定で様々な要因が複雑に絡み合うものに対して、「正しい」と言い切るのは不可能でしょう。「正しい」って何ですか?
記事の題名にある「“納得”しかないその根拠」。納得できましたか?
「Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis」
「食事中の炭水化物摂取と死亡率:前向きコホート研究とメタ分析」(原文はここ)
こういう論文を根拠に自説を
述べる専門家、
大袈裟に言えば人生への
向き合い方もそれなりなのでは?
逆に可哀想なような。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
どうしてもお互いチェリーピッキングの応酬です。
スポンサーの付いたチェリーの方が規模が大きくて、数も多いでしょう。
でも、生物学的、生理学的に考えれば、私のチェリーの方が良いと思います。