一流の医学雑誌と言われている「Lancet」に最近掲載された研究は、世界中の糖質制限推進派に一斉にブーイングを浴びせられています。ほとんどジョークのような研究に見えます。
この研究の主旨は「炭水化物(糖質)をエネルギーの50%程度摂取することが最も長生きである」というものです。これを見て、3流の医師や自称専門家が雑誌やマスコミを通じて、「糖質制限派危険だ!」とまた言い出すかもしれません。世界中で炭水化物(糖質)をエネルギーの50~60%消費し、これだけ世界中に肥満や様々な病気が蔓延しているにも関わらず。
では、この論文の中身をちょっと見てみましょう。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図はこの研究で得られたデータです。横軸は摂取エネルギーに対する炭水化物の割合です。縦軸は全原因死亡率です。スーパー糖質制限食では、糖質の割合は10数%ですから、死亡率が50%も高くなるように見えます。
Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | Q5 | ||
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炭水化物のエネルギーの中央値% | 37%(5・7) | 44%(2・5) | 49%(2・2) | 53%(2・8) | 61%(6・3) | |
男性 | 1635(53%) | 1496(48%) | 1379(45%) | 1294(42%) | 1112(36%) | |
女性 | 1451(47%) | 1590(52%) | 1706(55%) | 1792(58%) | 1973(64%) | |
平均BMI | 28・0 | 27・9 | 27・6 | 27・6 | 27・4 | |
糖尿病 | 415(13%) | 404(13%) | 345(11%) | 330(11%) | 316(10%) | |
高血圧 | 1095(35%) | 1028(33%) | 1046(34%) | 1052(34%) | 1148(37%) | |
喫煙 | ||||||
現在の喫煙者 | 1016/3083 (33%) | 821/3085 (27%) | 787/3083 (26%) | 707/3084 (23%) | 687/3084 (22%) | |
元喫煙者 | 1079/3083 (35%) | 1042/3085 (34%) | 995/3083 (32%) | 950/3084 (31%) | 899/3084 (29%) | |
非喫煙者 | 988/3083 (32%) | 1220/3085 (40%) | 1301/3083 (42%) | 1427/3084 (46%) | 1496/3084 (48%) | |
不明 | 0 | 2/3085 | 0 | 0 | 2/3084 | |
最高の身体活動 | 474(15%) | 534(17%) | 575(19%) | 581(19%) | 614(20%) | |
平均全エネルギー摂取量 kcal | 1558(11) | 1655(11) | 1660(11) | 1646(11) | 1607(11) | |
平均動物タンパク質 | 16・9% | 14・8% | 13・5% | 12・3% | 10・1% | |
平均植物タンパク質 | 3・9% | 4・3% | 4・5% | 4・6% | 4・8% | |
平均動物脂肪 | 26・3% | 22・4% | 19・9% | 17・6% | 13・6% | |
平均植物脂肪 | 12・5% | 13・6% | 13・6% | 13・2% | 11・5% | |
平均食物繊維 g | 13・5 | 16・5 | 17・7 | 18・7 | 19・8 |
上の表で、炭水化物が最も少ない群がQ1、最も多い群がQ5です。Q1とQ5を比較すると、なぜか炭水化物が最も少ない群のQ1の方が男性が非常に多く、女性が非常に少ないです。そしてQ1の方がなぜかBMIも高く、糖尿病の割合も高く、喫煙者の割合も高く、身体活動は少ないのです。比較している集団があまりにも炭水化物の量以外の因子が違い過ぎています。そして、あまりにも炭水化物が最も少ない群のQ1が不健康な集団です。これでは勝負になりません。
さらに、全ての群のエネルギー摂取量を見てください。1600kcal前後です。アメリカ人の摂取エネルギーがたった1600kcalだと思いますか?日本人でも2000kcalを超える人はざらにいます。アメリカ人のエネルギー摂取量は平均して3500kcalぐらいはあるのではと推測されています。それが本当だとするとこの研究のデータは実際のエネルギー摂取量の半分以下しか評価していないと考えられます。
この研究のデータはいつものように食事に関するアンケートで行われます。質問票があり、それに答えるのですが、この摂取エネルギーの少なさを見ただけで、全く本当の摂取量を答えていないことがわかります。かなりの過小申告です。特に健康的だと思われているものは多めに申告しますし、不健康と思われているものは少なめに申告するのが人間によくあることです。しかも、昨日何を食べたかも忘れているのに、もっと前に何をどれだけ食べたかなんて覚えているわけがありません。全く信用できないアンケートの回答です。
さらに、この研究の食事のアンケートは、25年間も追跡しているのに、その間にたった2回しか行っていません。6回患者さんは受診しているようですが、なぜか2回しか食事の調査をしていないのです。意図的でしょうか?それとも6回アンケートは取ったけれども、都合が悪いデータだったのでしょうか?25年もの間に2回ですから10数年間は同じ食事をしたという前提の研究となっています。1回の食事のアンケートの内容が10数年も同じというのは非常にありえない設定です。
糖質制限は基本的に1日の糖質摂取量は60g以下ですが、この研究の最も少ない群の平均は炭水化物が37%であるので、約150gになります。山田先生のロカボの130gよりも多い量です。この研究で糖質制限を批判するには非常に無理があります。
そして、今回の研究ではアルコールの評価が全くされていません。アルコールをたくさん飲むほど炭水化物の摂取量は減少するという研究があります。非常に健康にとって重要な食事の因子であるのに、何も評価しないのも意図的かもしれませんね。
恐らく糖質制限反対派の人間が都合よくデータをいじくって、都合の良い結果を出しただけではないかと思います。
このような非常に質の低い研究がLancetに掲載されてしまっています。こんなものは科学ではありません。Lancetも恥ずかしくないのでしょうか?
「Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis」
「食生活の炭水化物摂取量と死亡率:前向きコホート研究とメタアナリシス」(原文はここ)
仮に、1000000000000000歩譲って(笑)本研究が”事実”だったとして。
生きている間に生活習慣病や炎症由来の疾患に悩まされず、認知症も恐れず、ガンにも罹らないで最短最小の苦痛で逝けるなら、私は迷わず低糖質生活を続けます。
国家財政のためにも個人のQOL、あるいは家族や周辺の人への負担を考えても、理想的終末に近いのはどちらかという視点は持っていたいと思います。
ねけさん、コメントありがとうございます。
私も同意見です。