糖尿病薬のSGLT-2阻害薬は、様々な利益があるような、多くの研究が出てきています。一時期のスタチンのように思えてなりません。所詮薬は薬。副作用がないわけではありません。そして、この薬の利益を示すほとんどの研究は製薬会社がスポンサーの研究であることは忘れてはなりません。
現在、アメリカ内科学会のガイドラインでは、糖尿病薬のDPP-4阻害薬は推奨されないとしています。(ここ参照)そのガイドラインには次のように書かれています。
「メトホルミンと生活習慣の改善を行っても血糖コントロールが不十分な成人の2型糖尿病患者の罹患率と全死亡率を減少させるために、DPP-4阻害薬を追加することを推奨しない(強い推奨、エビデンスの確実性・高)」
「確実性の高いエビデンスによると、DPP-4阻害薬を追加した場合、通常治療と比較して、全死亡率、主要な心血管イベント、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、慢性腎臓病進行、重度の低血糖に差はない。NMAのエビデンスによると、DPP-4阻害薬はSGLT-2阻害薬と比較して、うっ血性心不全による入院を増加させ、主要な心血管イベントのリスクと慢性腎臓病進行を増加させる可能性が高い。GLP-1作動薬と比較して、DPP-4阻害薬はうっ血性心不全による全死亡率と入院、主要な心血管イベントのリスクを増加させる可能性が高い。・・・費用対効果分析による確実性の低いエビデンスからも、2型糖尿病の治療にメトホルミンに追加した場合、DPP-4阻害薬はスルホニル尿素薬よりも高価で効果が低い可能性があることが示唆されている。」
DPP-4阻害薬、けちょんけちょんです。アメリカ内科学会はDPP-4阻害薬に見切りをつけたようです。他にも裏の事情でもあるのでしょう。SGLT-2阻害薬やGLP-1作動薬の方が儲かるからかもしれません。
そんな大したことのないDPP-4阻害薬と比較して、本当にSGLT-2阻害薬は素晴らしい薬なのでしょうか?今回の研究を見ると、SGLT-2阻害薬も大したことがないようにしか思えません。
欧米人と比較して、肥満の糖尿病の患者がそれほど多くない日本では、SGLT-2阻害薬の効果がどうなのか、今回の研究では、BMIのカテゴリーで分けて分析しています。京都大学からの論文です。
2015年4月1日から2022年3月31日までに取得された、日本の3000万人を超える労働年齢の国民の保険請求記録と健康診断記録を使用して、SGLT-2阻害薬の新規使用者139,783人が、BMIカテゴリー(< 20.0、20.0〜22.4、22.5〜24.9、25.0〜29.9、30.0〜34.9、35.0 ≤)ごとに層別化され、DPP-4阻害薬の使用者139,783人とマッチングされました。平均年齢55~56歳で、中央値 24 か月の追跡調査です。
主要評価項目は、全原因死亡、心筋梗塞、脳卒中、または心不全の複合で、副次的評価項目は、主要評価項目の構成要素でした。主要評価項目は参加者の 2.9%(8,165人)に発生しました。
上の図は、SGLT-2阻害薬使用者とDPP-4阻害薬使用者の主要アウトカムの累積発生率です。SGLT-2阻害薬はDPP-4阻害薬よりも主要アウトカムの累積発生率が低かったのですが、相対的にたった8%リスクが低くなるだけです。実際にはほとんど差がありません。
それぞれのイベント別で見ても同様です。上の図は全原因死亡、脳卒中、心筋梗塞、心不全の発生率です。脳卒中がDPP-4阻害薬でやや、ほんの少しですが高いだけです。この脳卒中による死亡や入院が、主要アウトカムや全原因死亡に関連しただけのようです。心筋梗塞も心不全も全く違いがありませんね。
上の図はBMIカテゴリー別で、SGLT-2阻害薬とDPP-4阻害薬で、どっちが良いかを示しています。上の3つのカテゴリー、つまりBMI25未満の人の場合ではどちらの薬も違いがありません。25~29,9でやっと有意差が出ますが、違いはほんのわずかです。その後はBMIが増加するに従い、SGLT-2阻害薬の方が少し効果があるように見えます。
上の図は、BMIを22.5で分けたときのSGLT-2阻害薬とDPP-4阻害薬で、どっちが良いかを示しています。心筋梗塞は差がありませんが、死亡、脳卒中、心不全はややSGLT-2阻害薬が良いようです。
BMIを22.5で分けたときのSGLT-2阻害薬とDPP-4阻害薬で、どっちが良いかをもっと細かく分析したものです。60歳以上では差はなし、女性も差はなしです。
2型糖尿病患者におけるSGLT-2阻害薬の心血管イベントに対する保護効果は、BMIが低いほ人や正常のBMI の患者では有意ではないのです。
効果を針小棒大に言って、儲ける企業や業界。
この程度の効果であれば、ちょっと食事を改善するだけでも得られるかもしれません。もちろん食事改善はカロリー制限やバランスの良い食事ではなく、糖質制限です。
当然ですが、糖質制限とSGLT-2薬を比べた研究などありません。製薬会社がやるわけがありません。でも、SGLT-2薬の利点は全て糖質制限で得られる利点ですし、その効果の大きさは糖質制限の方がかなり高いでしょう。SGLT-2阻害薬では、1日あたり約60~100gの糖を尿に排泄するだけですし、HbA1cを1%前後下げるだけです。DPP-4阻害薬より少しHbA1cを下げる効果が高いと思われます。それでも体重が正常および痩せた人にはDPP-4阻害薬と心血管イベントに対する効果が変わらないのです。
以前の記事「インスリン投与量、HbA1c、体重の減少をもたらす実際の糖質制限の臨床使用」で書いたように、糖質制限は、すでにインスリンも投与され、他の糖尿病薬を飲んでいる2型糖尿病の人のHbA1cを1%以上下げます。2%を超える低下も少なくありません。糖質制限であれば血糖値スパイクも起きません。
以前の記事「GLP-1受容体作動薬にSGLT2阻害薬を加えたら1年後どうなる?」で書いたように、今流行りのGLP-1受容体作動薬にSGLT2阻害薬を加えても、HbA1cは0.68しか低下しませんでしたし、75gの炭水化物を摂取した後の2時間後の血糖値は、292.9が229.3mg/dLに低下したにすぎませんでした。血糖値スパイクのピークは下がりましたが、全く健康的なレベルにはなっていません。このようなレベルであれば、インスリン分泌能がある肥満糖尿病であれば大量のインスリンが分泌が少し減少し、死亡率がほんのわずか下がるほどの効果はあるかもしれませんが、正常体重以下であれば、インスリン分泌能が少なく、やはり効果はかなり少ないのではないかと思います。
多少SGLT-2阻害薬が効果があるように見えるのは、他の糖尿病薬があまりにもショボくて、効果が限定的で、そして糖尿病の治療ではほとんどが糖質過剰摂取を継続させているからでしょう。SGLT-2阻害薬は体内でのゆるゆる糖質制限です。でも決して、SGLT-2阻害薬で健康的な人と同程度に健康にはならないでしょう。糖質過剰摂取をさせて、過剰の一部をオシッコに捨てる治療をするくらいなら、最初から摂取しなければ良いのです。
まあ、そうは言ってもほとんどの人は糖質依存になっているので、糖質制限ができないでしょうから、薬に頼らざるを得ないのでしょうね。
薬に依存するか、食事を変えるか、決めるのは自分です。
「Sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors and cardiovascular events among patients with type 2 diabetes and low-to-normal body mass index: a nationwide cohort study」
「2 型糖尿病および低~正常 BMI 患者におけるSGLT-2阻害薬と心血管イベント: 全国コホート研究」(原文はここ)
清水先生、いつもありがとうございます。
糖質制限も12年目に入っています。心筋梗塞で入院時、A1c10.6%、空腹時の血糖値、300mg/dl超えでした。
退院直後からスーパー糖質制限を始めましたので、インスリン、ジャヌビアも数ヶ月で離脱です。
退院後から現在まで、2ヶ月に一度の血液検査の結果は全てファイルしてありますが、糖尿病薬離脱してから、A1cが1番高い時で5..8でしかも3回しかありません。空腹時血糖値は1番高い時で111で、100を超えたのも10回位しかありません。
2型糖尿病も病態は人それぞれでしょうが、私に限っては糖質制限を継続して行くだけで何の問題もありません。
SGLT-2阻害薬は私からすると膀胱をポリタンクと考えてるとしか思えません。無学ですが、長期間服用すると何かがあってもおかしくはないような気がします。
糖質制限しても美味しい食べ物は沢山ありますし、別に特効薬でもありませんので継続あるのみです。
太田さん、コメントありがとうございます。
糖質制限後の血液検査素晴らしいですね。
糖質制限をしていれば、SGLT-2阻害薬なんてほとんどの人が無用ですね。
コレは!と感じた健康情報、
読み進めるとカロリー制限のデメリツトを
糖質制限のデメリットと取り違えて
いたり、
食事の回数が少ないこと=
一回の食事で血糖値が上がって危険、
だとか、
意識してなのか、単に知識が足りないのか、読んでがっかりが、割と多いです。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
専門家は意識して、がっかりな情報を素晴らしい情報のように伝えます。