新しい神経障害性疼痛の薬タリージェ(ミロガバリン)の効果も怪しい

以前の記事「やっぱりリリカは効かない 副作用たっぷりの科学的根拠のない適応症」でも書きましたが、神経障害性疼痛という病名は非常に怪しい病名です。にもかかわらず新しい「末梢性神経障害性疼痛」に適応のある薬が発売されました。ミロガバリン(商品名:タリージェ)というものです。これはリリカ(プレガバリン)とほとんど同じものです。

さて、タリージェの効果はどれほどでしょうか?

プラセボとタリージェ15mg/日、20mg/日、30mg/日の4つのグループに分けました。(図は原文より)

上の図は、Aは痛みの推移です。タリージェ30mgグループはプラセボと比較して有意に痛みのスコアが低下しています。ちょっとは効果があるのかな?

Bはベースラインと比較して痛みがどれほど改善したかを表しています。左は30%以上の改善、右は50%以上の改善です。50%以上の改善ではタリージェ30mgグループが有意に多いことがわかります。30%以上です。しかし、プラセボという何も効果のない偽薬で見てみると、30%以上の改善は35%以上であり、50%以上の改善も20%近くあります。30mgグループとの差は10%程度です。つまり10人に1人程度はプラセボと比較して効果を認める可能性があるという程度です。

実際の添付文書にある数値を見てみましょう。下の表は添付文書に書かれているものです。

糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者824例(日本人597例を含む)を対象とした14週間(漸増期1〜2週間及び用量維持期12〜13週間)投与のアジア第III相二重盲検試験の14週時の疼痛スコア(ミロガバリン30mg/日群でプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善が認められた、としています。)

投与群疼痛スコア14週時のベースラインからの変化量プラセボとの差
[95%信頼区間]
プラセボベースライン5.59±1.012−1.31±0.095
14週4.22±1.820
20mg/日群ベースライン5.57±0.899−1.47±0.135−0.15
[−0.48,0.17]
14週4.14±1.685
30mg/日群ベースライン5.55±0.967−1.81±0.136−0.50[−0.82,−0.17]
14週3.73±1.845

帯状疱疹後神経痛患者763例(日本人611例を含む)を対象とした14週間(漸増期1〜2週間及び用量維持期12〜13週間)投与のアジア第III相二重盲検試験の14週時の疼痛スコア(ミロガバリン15mg/日群、20mg/日群、30mg/日群でプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善が認められた、としています。)

投与群疼痛スコア14週時のベースラインからの変化量プラセボとの差
[95%信頼区間]
プラセボベースライン5.75±1.130−1.20±0.099
14週4.40±2.115
20mg/日群ベースライン5.70±1.015−1.68±0.141−0.47
[−0.81,−0.14]
14週3.99±1.839
30mg/日群ベースライン5.65±1.025−1.97±0.137−0.77
[−1.10,−0.44]
14週3.71±1.797

上の糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者の表はその前のグラフと同じものです。疼痛スコアがプラセボと30mgグループで有意に差があったということですが、数値を見ると0.5の差です。さて疼痛スコアというものを考えてみましょう。

患者は、0(「痛みなし」)から10(「これ以上ない最悪な痛み」)の範囲の11段階で過去24時間の間の痛みを評価します。この評価法は痛みの評価では非常に一般的ではありますが、非常に主観的です。

患者さんにこの評価法で痛みを尋ねると、実にいい加減な数値だということがわかります。私の患者さんで、初診時痛みのスコアが「10」だという人もいます。しかし、表情は苦痛に満ちていません。本当にこれ以上にない最悪な痛みというのは、のた打ち回り、苦痛表情に満ちています。じっと座って普通に話すなんてことはできません。しかし平然と「10」という評価をします。

また、ある患者さんは治療前の痛みが「8」と評価し、その後治療ですごく楽になったという人に痛みを尋ねたとき「5」という評価でした。すごく楽になったのに「5」です。その次に聞いたときに、さらに楽になったというので評価してもらうと、また「5」と言うのです。前回の痛みの評価で自分が何と言ったかは覚えていないので、数値で評価したものと自覚症状が一致していないのです。

痛みが「0」という評価は非常に簡単です。しかし、経験したことのない「10」は想像できるはずがありません。また、「5」と「6」の違いは説明できません。また、時折「7から8ぐらい」という表現をする人もいます。もっともな評価です。それほど曖昧な評価法です。7~8と数値の違いは差は「1」あります。この1の差をある医師は「7」と記載するか、「8」と記載するかで、結果の違いは大きくなります。

プラセボと効果があるとされた30mgグループの差は「0.5」なのです。ちょっとした患者の表現の差でこの「0.5」という違いは簡単に生まれるのです。それを有意な差と言っているのです。つまり効果はほとんどないということです。

統計的な有意差があることと、臨床的に効果があることは全く違います。

副作用

プラセボ(%)

ミロガバリン15 mg /日(%)ミロガバリン20 mg /日(%) ミロガバリン30 mg /日(%)
鼻咽頭炎42(12.7)22人(13.4)24(14.5)27(16.4)
眠気13(3.9)14(8.5)20人(12.1)24(14.5
めまい7(2.1)8(4.9)14(8.5)18(10.9
浮腫4(1.2)8(4.9)4(2.4)14(8.5
体重増加2(0.6)4(2.4)5(3.0)11(6.7
挫傷6(1.8)2(1.2)3(1.8)9(5.5

(上の表は原文より改変)

上の表は副作用です。リリカと同じように、眠気、めまい、浮腫、体重増加がかなりの割合で認められます。高齢者、運転をする人は要注意です。

そして、タリージェにより効果のあったとされるプラセボとの疼痛スコアの差の本体はこの「眠気」、「めまい」が説明しています。つまり、以前の記事「リリカの安易な使用は止めるべし!」で書いたように、リリカと同様にタリージェは脳に作用し、脳を抑制しているのです。痛みを抑えているというより、脳の機能を下げて、痛みに反応しづらくしているだけだと考えられるのです。

処方されてしまった場合には注意が必要です。

「Mirogabalin for the treatment of diabetic peripheral neuropathic pain: A randomized, double-blind, placebo-controlled phase III study in Asian patients.」

「糖尿病性末梢神経因性疼痛治療​​のためのミロガバリン:アジア人患者における無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験」(原文はここ

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