やっぱりリリカは効かない 副作用たっぷりの科学的根拠のない適応症

ガバペンチノイドという薬があり、日本ではガバペンとリリカという薬が発売されています。神経伝達経路の電位依存性カルシウムチャンネルであるα2δサブユニットに結合してその神経伝達経路を抑制する、α2δリガンドと呼ばれる薬のグループです。難しいのでこれ以上作用機序の説明は省略します。

ガバペンは「てんかん」の薬、抗てんかん薬です。ガバペンと非常に類似したリリカは抗てんかん薬ではなく、当初の適応は「帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後疼痛、糖尿病性神経痛、線維筋痛症」に対する鎮痛です。しかし、非常に不明瞭な経過で何の追加試験も無く、適応症が拡大承認されたです。(恐らくお偉い先生が関係しているのでしょう。)その適応病名は「神経障害性疼痛」というものです。つまり、「帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後疼痛、糖尿病性神経痛、線維筋痛症」は臨床試験が行われていますが、それ以外の病気、病態に対しては全く試験が行われておらず、科学的根拠がありません。

「神経障害性疼痛」とは何でしょうか?私はペインクリニックをしていますが、実はピンときません。イメージとしては絞扼性神経障害や神経の切断です。絞扼性というのは「締め付ける」という意味です。ラットの実験で糸などで神経を縛って、無理やり神経を障害させることをします。実際にもリリカの動物実験では神経を縛ったラットで有効性の実験を行っています。このようにラットで無理やり神経を縛り付けると最初に書いたα2δサブユニットが強く発現するそうですが、人間の神経ではどのようになるのかはわかりません。さらに、人間の体の中でそんなに強い力で神経が障害されることが頻繁にあるのでしょうか?難しい言葉でわかりにくいメカニズムを示して煙に巻くように考えているのかもしれませんが、とにかく「神経障害性疼痛」は実際にはよくわからない病気なのです。というよりも、都合よく作り出した病気と言っても良いでしょう。それは薬を売るためです。

ファイザーのホームページでは「神経障害性疼痛」について次のように書きています。

神経障害性疼痛とは
「痛み」には、その原因がはっきりわかるものと、わかりづらいものがあります。傷は治ったのに痛みだけが残る、病気をきっかけに痛みが長く続いているなどの場合は、何らかの原因で神経が障害されて痛みが生じていることがあります。このような痛みを「神経障害性疼痛」といいます。神経障害性疼痛は、市販の鎮痛薬ではほとんど効果が得られない痛みです。

「神経障害性疼痛」の原因には、次のようなものがあります。

帯状疱疹ヘルペスやHIVなどのウイルスの感染によって、神経が障害された
糖尿病などの代謝障害によって、神経が障害された
脊柱管狭窄やヘルニアによって神経が圧迫/障害された
抗がん剤の副作用によって、神経が障害された
事故やケガなどで神経が切断/障害された
がんの腫瘍によって神経が圧迫された
がんの腫瘍が神経に広がった     など

当初の痛み以外に脊柱管狭窄症やヘルニア、事故やケガなどが加わっています。そして、実際の医療現場ではさらに拡大解釈し、腰痛、坐骨神経痛、膝などの関節症の痛みにまで使われていることもあります。しかし、以前の記事「坐骨神経痛にリリカは効かない」に書いたように坐骨神経痛に効果は認められていません。

慢性腰痛においてもリリカとガバペンの両方のランダム化比較試験で効果は認めませんでした。(「日本もリリカを野放しにしたままで良いのか?」参照)

つまり、坐骨神経痛にも腰痛にもリリカは処方すべき薬ではないのです。

今回、外傷後の神経障害性疼痛と思われるものに対するリリカの効果を調べた研究が発表されました。

18歳以上で、自動車事故、転倒、スポーツ傷害、膝または股関節置換手術、ヘルニア修復手術、開胸術、乳房切除術、局所の火傷、挫滅外傷などの外科的または非外科的な外傷後6か月以上の外傷後の神経障害性疼痛の患者が対象です。

患者は、0(「痛みなし」)から10(「これ以上ない最悪な痛み」)の範囲の11段階で過去24時間の間の痛みを評価します。この評価法は痛みの評価では非常に一般的ではありますが、非常に主観的です。結果は次のようです。(図は原文より、表は原文を改変)

Fig. 2

リリカ群

プラセボ群

ベースラインでの平均の痛み

6.41

6.54

15週間後の平均の痛みの変化

−  2.12

− 1.90

上の図で、○破線はリリカ群で、●実線はプラセボ群です。表にあるようにベースラインから第15週までの変化においてリリカ群とプラセボ群との間に統計的に有意な差はありませんでした。つまり、外傷後や手術後の痛みにもやはりリリカは効果がないのです。

今回の記事は川口浩先生の記事も参考にさせていただきました。医療関係者のサイトなので登録していないと全文を読むことはできません。(その記事はここです。)

川口先生は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の専門委員をやっている先生です。リリカのPMDA新薬担当部署での承認のプロセス、それに次ぐ製薬メーカーのプロモーションのやり方が、PMDA内でも問題視されているそうです。整形外科やペインクリニックで適応外処方が蔓延していることは非常に問題です。川口先生は日本臨床整形外科学会(JCOA)に、当局宛にリリカの適応症の再審査・適正化について要望書を書いてほしいと要請したそうですが、全く動こうとしないということです。

私自身も時折、適応外処方をしてしまっています。しかし、できる限り最低量、できる限り短期間を意識しています。受診の度にリリカの減量や中止ができないか検討しています。処方量は恐らくかなり少ない方だと思います。

他の病院にかかっている患者さんでリリカを処方されてしまっている患者さんは実に多いです。痛みで受診する方が多いので当然なのかもしれませんが、非常に漫然と飲み続けています。そして、なんで飲んでいるの?と思ってしまう場合も少なくありません。患者さんに「リリカは効いてる?」と聞くと「よくわからない」という答えが実に多いのです。実際にリリカを中止しても痛みが変化しない人はかなりの割合になります。

もちろん、すべての適応外処方が効果がないわけではありません。痛みの治療に困っているときにリリカが効果を示してくれることもあります。しかし、効果があるかないかはすぐに判明します。無ければすぐに中止です。効果があっても、できるのであれば原因の治療を行い、できる限り早めに減量や中止を考えます。様子を見て何か月も何年も処方すべき薬ではありません。そんなに便利な薬でもありません。

もともとの適応症の「帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後疼痛、糖尿病性神経痛、線維筋痛症」でさえ、その効果の判定は微妙です。臨床試験のデータを見るとわかります。この薬はプラセボなのか本当の薬なのかすぐに判別がつきます。副作用が非常に多く認められるからです。そうすると、データの操作は簡単です。しかし、その後の勝手な拡大解釈の多くのなんちゃって「神経障害性疼痛」の研究はことごとく効果を認めていません。

神経障害性疼痛という病名は非常に便利であり、痛みがあればすべて何らかの神経が障害されていると考えることは可能です。何とでも解釈できる病名を作り出し、どんどん売るのが製薬会社の作戦でしょう。実にこの作戦はうまく行きました。しかし、副作用で困っている人も多くいるのも事実です。

この続きは次回に。

「Efficacy of pregabalin in post-traumatic peripheral neuropathic pain: a randomized, double-blind, placebo-controlled phase 3 trial」

「外傷後末梢神経障害性疼痛におけるプレガバリンの有効性:無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験」(原文はここ

(こんな記事書いて私の身は大丈夫なのでしょうか?生きたまま切断されはしないと思いますが…)

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