糖尿病予備軍と2型糖尿病では体温などの概日リズムが崩れている

概日リズム(サーカディアンリズム)、いわゆる体内時計は視床下部の視交叉上核に存在しています。地球の自転による24時間周期に同調し、約24時間(若干24時間より長いそうです)の周期で体内環境を積極的に変化させます。体温やホルモン分泌なども約24時間の周期的なリズムがあることがわかっています。

この概日リズムが崩れると、睡眠のリズムに障害が出ることもあります。

今回の研究では糖尿病予備軍と2型糖尿病の人の体温の概日リズムについてです。40~69歳の過体重の糖尿病予備軍または糖尿病の人で分析しました。(図は原文より)

上の図は24時間空腹時血糖値の変動です。緑がコントロール、青が糖尿病予備軍、赤が2型糖尿病です。コントロールと比較して糖尿病予備軍では起きている時間帯の血糖値が高いことがわかります。2型糖尿病ではさらに血糖値が高いことがわかります。そして糖尿病では睡眠中でもコントロールや予備軍と比較して血糖値が高くなっています。

上の図は体温の変動です。体温の夜中(3時)の値はコントロールと比較して予備軍で高くなりました。そして、通常は夜中に最低の体温を示しますが、予備軍では朝の8時に最低体温を記録しています。2型糖尿病では20時以外ではコントロールや予備軍よりも1日中体温が高く、変動も非常に少なくなっています。夜中に通常は体温が低下するのに、糖尿病では低下しません。

上の図は心拍数の変動です。コントロールと比較して、ほとんどすべての時間帯で予備軍で心拍数は高く、夜中に最低値をとるはずですが、下がり方も少なくなっています。2型糖尿病ではさらに心拍数は高く、夜中でも高いまま持続しています。

2型糖尿病は概日リズムの混乱に関連している考えられますが、この概日リズムの変化が病気によって引き起こされるのか、病気が概日リズムの混乱によって引き起こされるのかはわかりません。体内時計が脳にあることを考えると、脳のインスリン抵抗性が体内時計を狂わし、それによってリズムが混乱しているのではないかと考えます。

これほど糖尿病で体温変化が少なければ、睡眠障害も起きるのではないでしょうか?良好な睡眠は夜間の体温低下が重要だと考えられています。睡眠障害がインスリン抵抗性を起こすのとも考えられています。恐らく、これも脳のインスリン抵抗性が起こり、概日リズムが狂い、体温やホルモン分泌が混乱し、睡眠の質が悪くなり、睡眠障害が起こり、それがさらなるインスリン抵抗性などを引き起こすという負のスパイラルが起きると考えた方が妥当ではないでしょうか。

いずれにしても、インスリン抵抗性を低下させることは重要だと考えられます。良く眠れないことは薬で解決するのではなく、食事で解決すべきでしょう。糖質制限で良眠が得られるようになるのは、このような体内時計、概日リズムを正常化することにも関係しているのかもしれません。(「糖質制限は睡眠を改善する」参照)

 

「Disrupted circadian rhythms of body temperature,heart rate and fasting blood glucose in prediabetes and type 2 diabetes mellitus 」

「糖尿病前症および2型糖尿病における体温、心拍数および空腹時血糖の概日リズムの混乱」(原文はここ

2 thoughts on “糖尿病予備軍と2型糖尿病では体温などの概日リズムが崩れている

  1. あくまで個人の感想ではありますが、5〜6年前の糖質制限開始以来頭の働き、
    理解力や判断力、記憶力などの脳の情報処理脳力がアップしている実感があります。

    加齢に伴って多少ボンヤリする事が増えるのも自然の流れなのか、と思ったこともありますが、少なくとも糖質制限開始後は、加齢による脳力の衰えは感じません。
    むしろ活力が上がっているような(ちょっと躁病的な)高揚感を感じることも多くなりました。

    インスリン抵抗性が低下して、脳の代謝が良好になったのでしょうかね。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      本当ですね。私も糖質制限以降脳の能力がアップしているように感じます。

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