糖質制限はできる限り早く始めるべきである

2型糖尿病を逆転できるか、寛解できるかは、すい臓のβ細胞の回復能力に依存していると考えられます。カロリー制限で体重減少して、糖尿病から寛解した人と、寛解できずに糖尿病のままの人を比較した研究があります。

糖尿病寛解臨床試験(DiRECT)では、4か月間のカロリー制限の減量ダイエットが、かなりの数の人の糖尿病を回復させる可能性があることを実証し、最長6年の2型糖尿病患者の46%で正常の血糖コントロールの回復と持続性が報告されました。糖尿病が寛解した人(応答者:レスポンダー)と、減量後も糖尿病のままであった人(非応答者:ノンレスポンダー)を比較しました。(図は原文より、表は原文より改変)

減量中、体重維持中、およびベースラインから12か月までの応答者と非応答者の代謝変化
△変化 ベースライン~減量後 減量後~12か月 ベースライン~12か月
応答者 非応答者 応答者 非応答者 応答者 非応答者
体重(kg) −16.2 −13.4 3.3 4.9 −14.1 −9.4
空腹時血糖値(mg/dL) −46.6 −8.9 1.6 −3.6 −47.9 −21.3
HbA1c(%) −1.5 0.2 -0.1 -0.4 −1.6 -0.4
肝脂肪(%) −13.4 −11.9 0.6 3.6 −13.5 -9.7
VLDL1-TG生産(mg/kg日) −147.2 −59.2 43.1 155.8 −119.2 72.2
血漿VLDL1-TG(mmol/L) −0.26 -0.19 0.10 0.16 −0.21 -0.04
VLDL1-TGプール(mg) -1,187.5 −909.0 391.5 659.1 −993.7 −313.5
総血漿TG(mmol/L) -0.54 −0.67 0.08 0.13 -0.58 −0.57
空腹時インスリン(pmol/L) −69.7 −41.7 7.2 10.7 −65.3 −32.7
膵臓脂肪(%) −0.90 −0.78 -0.14 0.17 −1.31 −0.74
第一相インスリン(nmol/min/m 2 0.08 -0.002 0.02 −0.01 0.08 -0.004
最大インスリン分泌(nmol/min/m 2 0.08 −0.03 0.09 0.02 0.17 0.06
グルコース酸化速度(mg/kg/min) 0.17 −0.29 0.82 0.06 0.75 -0.11
脂質酸化速度(mg/kg/min) −0.09 0.05 0.31 -0.02 −0.32 -0.05
上の図は体重、空腹時血糖値、HbA1cの推移です。実線が応答者、点線が非応答者、薄い点線がコントロールです。そうすると、応答者も非応答者も4か月の減量期後には体重が低下し、体重い時期を経た12か月後でも、ベースラインより体重減少を保っています。ただ、非応答者ではややリバウンドが大きくなっています。
空腹時血糖は応答者が148.9から102.2mg/dLに低下し、非応答者では体重が大きく減少したにも関わらず有意な効果はありませんでした(167.8から158.9mg/dL)。12ヶ月までに、どちらのグループにも有意な更なる変化はありませんでした(応答者:102.4mg/dL、非応答者:152.0mg/dL)
HbA1cも同様で、応答者は大きく減少し、非応答者では変化は認められませんでした。
上の図はA:肝臓脂肪、B:総中性脂肪、C:VLDL1-中性脂肪の産生率、Dすい臓脂肪、E:VLDL1-中性脂肪、F:空腹時インスリンの推移です。そうすると両群とも体重減少後に肝臓脂肪量が減少しました。体重維持段階での肝脂肪の増加は、体重増加の程度に関連していました。応答者の平均体重増加(3.3kg)未満の人は、肝臓脂肪に変化がありませんでした。対照的に、3.3 kgを超えて体重が増加した人では、結果として肝臓脂肪が増加しました。
すい臓の脂肪も両群で減少し、12か月でも減少したままでした。
応答者では、体重減少後にVLDL1-中性脂肪の産生、血中のVLDL1-中性脂肪が減少しましたが、非応答者では変化がありませんでした。ただ総中性脂肪は両群で減少しました。
空腹時インスリンは、体重減少中に両群で減少しました。
上の図は第1相インスリン分泌と最大インスリン分泌です。第一相インスリン分泌は、応答者で体重減少後に増加しましたが、非応答者では変化は認められませんでした。さらに応答者では体重維持期と12か月後に第1相インスリン分泌の増加が維持されました。
最大インスリン分泌は体重減少後、応答者で徐々に増加し、12ヶ月で有意になりました。しかし、非応答者に変化はありませんでした。

体重は両群で同様に減少し、肝臓脂肪やすい臓脂肪は劇的に減少しましたにも関わらず、空腹時血糖やHbA1c、インスリン分泌では応答者と非応答者で大きな違いが出ました。空腹時インスリンは両群で減少しましたが、第一相のインスリン反応、つまり血糖値が上昇した直後にすい臓から分泌されるインスリンの量は、応答者で健康レベルに増加しましたが、非応答者では変化しませんでした。

ベースラインで見てみると、応答者は非応答者よりも空腹時血糖が有意に低く(148.9対167.8mg/dL)、HbA1cは7.4%対7.9%でした。さらに注目すべきは非応答者は、糖尿病の持続期間が長かった(2.7対3.8年)のです。空腹時インスリンが低下し(108.3対77.2pmol/L)、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が低下していました。(34.1対26.3pmol/L)。ALTが非応答者で低下していたのはなぜかわかりませんが、非応答者では、糖尿病期間が長く、β細胞のダメージが大きく、すい臓の脂肪が除去された後も正常なレベルの機能に戻ることができないのです。そのために食事(糖質)に対するインスリン反応は抑制されたままで、血糖値とHbA1cレベルは上昇したままであり、糖尿病は減量しても持続します。

つまり、できる限り早期にすい臓のβ細胞の脂肪を除去し、β細胞を休ませ、回復を図る必要があると考えられます。今回はカロリー制限でしたが、カロリー制限は一生続けられるものではありません。そして、通常の糖質過剰摂取よりは糖質量は少なくても、十分な糖質負荷になっています。

だから、早期に糖質制限を開始し、β細胞の負担を大きく軽減することが重要だと考えます。

糖尿病は糖質過剰症候群の典型的な疾患です。できる限り早く糖質制限を始めるべきだと思います。

 

「Remission of Human Type 2 Diabetes Requires Decrease in Liver and Pancreas Fat Content but Is Dependent upon Capacity for β Cell Recovery」

「2型糖尿病の寛解には、肝臓および膵臓の脂肪含有量の減少が必要だが、β細胞の回復能力に依存している」(原文はここ

4 thoughts on “糖質制限はできる限り早く始めるべきである

  1. 見当違い、認識不足が明らかな糖質制限否定説は気になりません。

    石原信一郎医師の『脳神経外科医が教える糖質制限ホントの話』を読みました。
    誠実なお人柄が感じることのできる、説得力のある内容でした。

    基本的に糖質制限肯定の本ですが、これまでの私の知識と異なるというか、知らなかったのは、ミネラルやビタミンなどの必須栄養素の不足によって十分に糖質制限効果をあげることができない人が多い、との記述でした。

    サプリメントに関しては清水先生の仰る通り、安全性やそもそもサプリの形で栄養素を補充する事はどうなのだろう? と、私も考えています。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      この本は読んでいません。しかし、江部先生の唱える糖質制限をしているのであれば、
      ミネラルやビタミンが不足するようなことは通常では起こらないのではないでしょうか?
      糖質過剰摂取で不足している栄養素があった場合には、徐々に糖質制限で是正されるのではないでしょうか?
      実際にはミネラルやビタミンの過不足を測定もできないものがありますし、測定できても血中濃度のみでは何とも言えないものも多いです。
      人類がサプリメントを必要としてきた時代は進化の中ではありません。
      もちろん、含有する栄養素が低下していることは否めませんが、昔の時代よりはいつでも豊富に手に入ります。
      冬であっても困ることはありません。その点などを考慮すれば、栄養素が不足するようなことはないと思います。
      サプリはそもそもちゃんと吸収されるのか、もっと言えばちゃんと有効な栄養素が入っているのかもわかりませんからね。

  2. 言葉足らずでした。
    (石原先生は、サプリメントでの栄養素補充も肯定していらっしゃるようです。)

  3. 仰る通り、自分に足りない栄養素を特定して、サプリメントにせよ普通の食品にせよ、
    狙い通りに摂取する事は、言う程簡単では無い(ほぼ、不可能な)事ですね。

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