神戸大学の研究で面白いことがわかりました。糖尿病の薬のなかでメトホルミンという薬があります。この薬は何とうんこに糖を排出していたのです。以前のPET検査を使った研究ではメトホルミンが血中からブドウ糖を腸に取り込んでいることがわかっていたのですが、それは腸の壁に取り込んでいたのでは、と考えられていました。(この論文参照)
神戸大学のチームはPETとMRIを統合した装置PET-MRIを使って、糖尿病でメトホルミンを服用している人と服用していない人の体内のブドウ糖の動きを調べました。そうしたところメトホルミンを服用している人では腸内、つまりうんこに多くのブドウ糖が排出されていることがわかったのです。(図はこのサイトより)
上の図で黒く見えるのがブドウ糖がたまっているところです。がんの場合ではがん細胞があるところが黒く写ります。右の図はメトホルミンを飲んでいる人のもので、腸がかなり黒く写っています。尿糖ならぬ便糖ですね。
上の図の右側のグラフは腸内のブドウ糖を示しています。SIは小腸、LIは大腸で、左から空腸、回腸、右の結腸、左の結腸です。メトホルミンを服用すると、小腸の肛門側にある回腸内以降に大量の糖が蓄積されているのがわかります。ただ、どれだけの糖がうんこに捨てられるのかはわかりません。
素晴らしい発見ですね。メトホルミンはインスリン抵抗性を改善することや糖新生を抑制することにより血糖値を下げているだけだと思っていました。まさかうんこに捨てているとは。
メトホルミンは腸内細菌叢と免疫系に良い影響を与えることが明らかになっています。(この論文参照)しかし、そのメカニズムは完全にはわかっていないと思います。もしかしたら、このうんこの中のブドウ糖が腸内細菌の変化を引き起こしているかもしれませんね。
「Enhanced Release of Glucose Into the Intraluminal Space of the Intestine Associated With Metformin Treatment as Revealed by [18F]Fluorodeoxyglucose PET-MRI」
「フルオロデオキシグルコースPET-MRI によって明らかにされた、メトホルミン治療に関連する腸管腔内への増強されたグルコースの放出」(原文はここ)
感動!なんと、従来メトホルミンは「糖新生抑制」する作用と思っていましたが、(それだけでなく)便に糖を排出するとは!!
SGLT2が尿に糖を排出。メトホルミンは便に排出。大変、勉強になりました。
三世敏彦さん、コメントありがとうございます。
私もびっくりです。うんこに糖を出していたとは思いませんでした。SGLT2など糖を捨てる薬剤が注目されていますが、
捨てるくらいなら最初から摂取しなければもっと良いと思います。