糖尿病での塩分制限は心血管疾患による死亡率を高くするかもしれない

以前の記事「塩分を制限することによる血圧の低下は、たった1!」「心不全に塩分制限は必要か?」などに書いたように、塩分制限は高血圧にも心不全にも有益であるとは思えません。

糖尿病で塩分制限をすることで心血管疾患による死亡率が高くなるという研究もあります。(もちろんそうではない研究もあります)

今回の研究では、2型糖尿病の人を対象に、食事からのナトリウム摂取量を推定するために24時間尿中ナトリウム排泄量を測定しています。(図は原文より)

上の図は24時間尿中ナトリウム排泄のパーセンタイル(5、25、75、95)で分けた累積の全原因死亡率です。パーセンタイルはデータを大きさ順に100に分けて、小さいほうからのどの位置にあるかを示すものです。5パーセンタイルは全体の中でナトリウム排泄が少ない方から5%の人たちを表しています。95パーセンタイルは少ない方から95%ですから、逆に言えば多い方から5%の人たちです。そうすると、5パーセンタイルが最も死亡率が高く、24時間の尿中ナトリウム排泄が増加するにつれ死亡率が低下しています。つまり、塩分摂取量が多い方が死亡率が低下しているということです。

上の図はそれぞれのパーセンタイルでの心血管疾患での累積死亡率です。実線は男性、破線は女性です。男性の方が死亡率が高いことがわかります。さらに、全原因死亡と同様に心血管疾患でもナトリウム排泄が多い方が死亡率が低くなっています。

糖質制限ではインスリン分泌が低下するので、腎臓でのナトリウムの再吸収が減り、ナトリウムと水分が一緒におしっこに出ます。そのため塩分制限は必要ないと思います。糖質過剰摂取では高インスリン血症となるので、ナトリウムの再吸収は増加しますが、糖尿病でインスリン分泌が低下していれば、ナトリウムの再吸収は低下するかもしれません。また、塩分制限は、交感神経系やレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を活性化し、心血管疾患のリスクを増加させるかもしれません。

いずれにしても、糖質制限では塩分制限は必要ないでしょう。次回以降では糖尿病での塩分制限が心血管疾患の増加を起こす他のメカニズムについて書きたいと思います。

 

「Dietary Salt Intake and Mortality in Patients With Type 2 Diabetes」

「2型糖尿病患者における食事の塩分摂取量と死亡率」(原文はここ

 

2 thoughts on “糖尿病での塩分制限は心血管疾患による死亡率を高くするかもしれない

  1. 塩分制限、健康の常識です!! こればっかりは誰にも否定できない潮流ですね。

    私は現在夕食のみの一日一食ですが、水分(ミネラス炭酸水、無糖茶、バターMCTブラックコーヒー 等)
    は多量に摂取しています。
    ランニングなどの運動も行うため、低ナトリウムにならないようちまちま塩も舐めています。
    結果的に多量の塩分摂取となっていると思います。

    ただ、気を付けているのは塩の質、精製されたものではなく岩塩を摂ります。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      塩分制限は本当に常識に思われていますね。塩分、コレステロールなど一度洗脳された脳を変えることは非常に難しいです。
      私はぬちまーすです。

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