自己申告による食事アンケートの不正確性

食事に関する研究で最も問題になるのは自己申告による食事アンケートの不正確性です。

今回の研究では、客観的な食事のリカバリーバイオマーカー(詳細は省略)というものを使用して、いくつかの種類の自己申告の食事アンケートと比較しました。(図は原文より)

上の図は自己申告の食事評価ツールにおける栄養素摂取量の過少および過大申告の割合を示しています。左がエネルギー摂取量、右がタンパク質です。斜めの線が入った部分は過少申告です。食事アンケートでよく行われるFFQ(食物摂取頻度アンケート)が最も過少申告をしてしまう割合が高くなっていました。男性で40%前後、女性で35%前後が過少申告だったのです。

実際のエネルギー摂取量との違いは、ASA24という評価ツールの場合はー17%からー15%、4DFRの場合はー21%からー18%、FFQの場合はー34%からー29%です。FFQでは男性で約900kcal/日、女性で700kcal/日も過少申告していたのです。

 

上の図は、男性および女性におけるBMIによる栄養摂取の過少申告の割合です。上がエネルギー摂取、下がタンパク質摂取、左が男性、右が女性です。Z軸は手前(黒いバー)が標準体重、真ん中(薄いグレー)が過体重、一番奥(白いバー)が肥満の人です。男女ともに肥満になるほど過少申告が多いのがわかります。人間どうしても自分をよく見せたいと思うのでしょうか?「水しか飲んでいないのに太るんだよね」というのは肥満の人しか言わないセリフでしょう。少ない量しか食べていないのに…自分のせいではない…と言いたいのでしょうね。自己申告は全く当てになりません。

様々な研究が自己申告に頼っています。何とか正確な摂取量を得ようと工夫をしていると思いますが、やはりなかなか難しいと思います。エネルギー摂取量で700~900kcalも実際と違ってしまえば、正確なデータが得られるとは思えません。

まあ、自分の主張を正当化するためには便利な根拠とはなるのでしょう。糖質制限の研究でも同じことが言えるので、気を付けなければなりませんね。

 

「Comparison of self-reported dietary intakes from the Automated Self-Administered 24-h recall, 4-d food records, and food-frequency questionnaires against recovery biomarkers」

「自動自己管理24時間リコール、4日間の食品記録、および回復バイオマーカーに対する食品頻度アンケートからの自己申告による食事摂取量の比較」(原文はここ

4 thoughts on “自己申告による食事アンケートの不正確性

  1. 被験者を刑務所みたいな施設に閉じ込めて、24時間監視しながら、支給した食べ物と飲み物以外は一切口にできない実験でもしないと、なかなか正確なデータは得られないのでしょうね。
    実際の刑務所では、糖尿病の受刑者の数値がかなり良くなると何かで読んだ気がします。PFCバランス上ではたぶん糖質過剰になるでしょうが、暴飲暴食は無理でしょうし、お菓子もそんなに食べさせてもらえないでしょうから。かのホリエモンも出所した時はかなりスリムになってましたよね。
    個人差もありますし、結局、自分の身体で人体実験するしかないのでしょうか?

    1. 大阪高橋さん、コメントありがとうございます。

      刑務所こそ栄養に気を使って、オメガ3をいっぱい摂って、糖質制限をすれば攻撃性が低下するのではないかと思いますが。
      いずれにしてもアンケートで正確なデータは全くわからないでしょうね。

  2. 糖質制限を始めてから2年8ヶ月、毎食、カロリー、PFC、食前およびピーク血糖値(1時間値とかではなくリブレで本当のピークを記録)などを記録しています。
    自炊の場合は、食材をできる限りキッチンスケールで計り、調味料もできる限り記録しています。
    そして、食べる直前に写真に残し、食後にパソコンで記録して、自分自身の経年変化等の分析に利用しています。

    それくらい気を使っていても、記録し忘れていることに後で気づくことがあります。食後ピーク血糖値から耐糖能を計算した際に、異常に高かったりすることで気づきます。気づかずに見過ごしたものも多々ある事でしょう。
    記憶とは、その程度にあいまいなものだと思います。食前の記録であればもう少し精度は上がるかもしれません。
    そこに食材の量の見積もりの精度がプラスされます。初めて行く店での外食だとほとんど分からない場合もあります。もう、そうなると本当はどうなのかかなり怪しいとしか言えません。

    さらにカロリー表示は、±20%の誤差が認められています。表示が1000kcalだとすると800~1200kcalの範囲となり実に1.5倍の差が生じます。メニューにカロリーだけは表示がある場合もありますが、ここから逆算でPFC量を求めても精度は全く信用できません。

    通常のカーボカウントの精度でさえ、研究レベルの精度としては低すぎると感じています。要するに糖質がほんの少ししか含まれない食材はカウントしなかったりしますが、それでも量が多ければそれなりの糖質量になります。また、糖質摂取の絶対量が少ない場合には少量でも(耐糖能の計算値などへの)影響が大きくなります。

    そして、耐糖能が改善していると思いたい(摂取糖質量を多めに見積もる)、糖質制限がしっかりできていると思いたい(摂取糖質量を少なめに見積もる)などの心理的作用が働きます。誰に見せるでもなく、自分自身のために記録していてもこのような葛藤があります。私の場合、多めに見積もる、少なめに見積もるこの両方の心理的作用でかろうじて「うそ」の記録をしない歯止めにしています。

    私の結論としては、研究レベルで因果関係を調査する手段としての素人からのアンケートは、全く信用できない、ほとんど無意味と思っています。同じ条件でのアンケート調査同士の比較なら少しは意味があるかもしれません。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      毎日、毎食記録しているとは凄いですね。
      仰る通り、商品や外食のメニューの表示のカロリーや栄養成分は本当かどうかは疑わしいですね。

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