睡眠時間が長いと死亡率が高くなる

以前の記事「睡眠時間と死亡率および認知症 久山町研究から」で書いたように、睡眠時間は短くても長くても死亡率が上がるようです。さらに、睡眠薬を使用している人でも死亡のリスクは上がるようです。睡眠というのはあまり意識していないかもしれませんが、重要な役割があると考えられます。

今回の研究では、2型糖尿病の人と糖尿病でない人で、睡眠時間と死亡率について分析しています。対象は糖尿病のない人248,817人と2型糖尿病のある人24,212人の成人です。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図は横軸が睡眠時間、縦軸が10,000人年あたりの死亡率です。青いバーが糖尿病でない人、赤いバーが糖尿病の人です。予想通り、睡眠の量に関係なく、2型糖尿病の人の死亡率は、糖尿病でない人よりも高くなりました。7時間睡眠が最も死亡率が低く、10時間が最も死亡率の高いJ字カーブを描いています。

上の図は、睡眠時間と全原因死亡のリスク比です。糖尿病でない人の7時間睡眠を1とした場合のリスクです。10時間以上の非常に長い睡眠時間と糖尿病のある人とない人の死亡リスクの増加と関連していました。糖尿病の10時間以上の睡眠では2.17倍です。5時間以下の極端に短い睡眠時間でも、糖尿病のある人とない人の死亡リスクの増加と関連していました。

上の図は、2型糖尿病の男性および女性における睡眠時間と(a)全原因死亡率、(b)心血管疾患死亡率、(c)がん死亡率の関連です。男性の方が死亡率が高くなっています。

死亡原因睡眠時間に応じた死亡リスク
5時間以下6時間7時間8時間9時間10時間以上
全死因死亡
合計1.24(1.09、1.40)1.13(1.01、1.28)11.17(1.06、1.30)1.33(0.98、1.50)1.83(1.61、2.08)
女性1.14(0.96、1.36)1.11(0.94、1.31)11.14(0.99、1.31)1.23(0.99、1.53)1.70(1.45、1.99)
男性1.33(1.10、1.61)1.21(0.83、1.76)11.18(1.02、1.38)1.43(1.15、1.78)1.93(1.60、2.34)
心血管疾患死亡率
合計1.20(0.90、1.61)1.14(0.89、1.46)11.16(0.93、1.46)1.36(0.95、1.93)1.74(1.33、2.28)
女性0.86(0.57、1.30)0.96(0.67、1.37)10.94(0.69、1.28)1.08(0.65、1.80)1.42(0.99、2.04)
男性1.57(1.03、2.40)1.33(0.93、1.90)11.36(0.96、1.93)1.64(0.99、2.73)2.05(1.39、3.02)
がん死亡率
合計1.41(1.07、1.86)1.14(0.88、1.48)11.26(1.02、1.56)1.23(0.87、1.71)1.59(1.19、2.21)
女性1.31(0.86、1.98)1.07(0.73、1.56)11.29(0.94、1.76)1.02(0.61、1.70)1.48(0.97、2.25)
男性1.51(1.04、2.19)1.21(0.83、1.76)11.22(0.91、1.62)1.41(0.88、2.27)1.77(1.17、2.69)
心臓病死亡率
合計1.13(0.81、1.58)1.03(0.77、1.38)11.10(0.85、1.43)1.29(0.88、1.90)1.51(1.11、2.07)
女性0.74(0.45、1.20)0.88(0.57、1.35)10.88(0.62、1.26)1.06(0.59、1.91)1.16(0.72、1.86)
男性1.48(0.94、2.33)1.17(0.78、1.74)11.25(0.86、1.83)1.46(0.85、2.49)1.79(1.18、2.73)
脳卒中死亡率
合計1.64(0.83、3.24)1.79(0.99、3.23)11.50(0.88、2.58)1.76(0.77、4.04)2.95(1.63、5.34)
女性1.37(0.60、3.11)1.20(0.60、2.42)11.16(0.60、2.25)1.06(0.59、1.91)2.21(1.06、4.59)
男性2.78(0.77、10.08)3.27(1.02、10.48)12.61(0.88、7.72)1.46(0.85、2.49)5.21(1.80、15.10)
インフルエンザと肺炎の死亡率
合計1.11(0.46、2.67)0.49(0.18、1.31)11.35(0.64、2.84)0.86(0.34、2.17)1.30(0.58、2.90)
女性1.95(0.52、5.20)1.05(0.30、3.67)12.08(0.78、5.58)1.80(0.52、6.22)1.75(0.66、4.63)
男性0.86(0.22、3.31)0.22(0.05、0.97)10.98(0.37、2.63)0.28(0.06、1.46)0.88(0.25、3.09)
腎臓病死亡率
合計2.20(1.00、4.84)1.57(0.59、4.19)11.17(0.59、2.33)3.15(1.26、7.85)5.18(2.18、12.28)
女性2.26(0.89、5.75)1.77(0.54、5.80)10.94(0.38、2.29)3.74(1.33、10.49)3.12(0.99、9.79)
男性2.40(0.73、7.83)1.20(0.44、3.28)11.44(0.62、3.37)2.25(0.53、9.50)8.16(2.93、22.87)
アルツハイマー病死亡率
合計0.90(0.34、2.42)0.79(0.34、1.86)10.87(0.40、1.91)1.34(0.47、3.85)2.64(1.14、6.08)
女性0.53(0.13、1.64)1.59(0.64、3.93)11.04(0.37、2.89)2.24(0.75、6.64)2.97(1.15、7.68)
男性0.86(0.26、2.80)0.15(0.01、1.96)10.59(0.16、2.22)0.45(0.05、3.99)1.80(0.45、7.25)
慢性下気道疾患死亡率
合計1.21(0.61、2.41)1.42(0.82、2.46)11.83(1.08、3.08)1.41(0.69、2.91)2.55(1.42、4.60)
女性0.63(0.24、1.46)1.18(0.58、2.38)11.77(0.88、3.55)1.10(0.39、3.14)2.55(1.42、4.60)
男性2.20(0.84、5.75)1.73(0.72、4.17)11.94(0.89、4.24)1.77(0.65、4.84)2.62(0.99、6.90)

上の表は原因別、男女別の死亡率です。すべての心血管疾患タイプのうち、最も顕著な睡眠と死亡の関連は脳卒中死亡で観察されました。睡眠時間10時間以上で男女合わせての死亡リスクが2.95倍で、男性だけ見ると5.21倍です。その他の死因については、睡眠時間と腎疾患、アルツハイマー病、慢性下気道疾による死亡リスクとの間に統計的に有意な関連が認められました。腎疾患も非常に高い死亡リスクで、男性では8倍以上です。アルツハイマー病は女性の方が高く3倍近いリスクです。

死亡原因睡眠時間に応じた死亡リスク
5時間以下6時間7時間8時間9時間10時間以上
全死因死亡
 経口血糖降下薬のみ1.22(1.03、1.44)1.08(0.92、1.27)11.14(1.00、1.29)1.26(1.03、1.55)1.70(1.44、2.02)
 インスリンのみ1.03(0.71、1.49)1.01(0.75、1.35)11.01(0.77、1.32)1.28(0.89、1.85)1.54(1.15、2.05)
 経口ブドウ糖低下薬とインスリンの両方1.55(1.09、2.20)1.20(0.87、1.66)1)1.28(0.96、1.71)1.56(1.07、2.26)1.80(1.32、2.45)
 薬なし1.08(0.72、1.63)1.34(0.93、1.92)11.26(0.94、1.70)1.22(0.72、2.08)2.24(1.49、3.36)
心血管疾患死亡率
 経口血糖降下薬のみ0.97(0.67、1.41)0.96(0.69、1.33)10.93(0.70、1.23)1.10(0.67、1.80)1.38(0.96、1.98)
 インスリンのみ1.04(0.44、2.43)1.67(0.88、3.18)11.08(0.09、1.96)1.68(0.79、3.58)1.99(1.01、3.91)
 経口ブドウ糖低下薬とインスリンの両方2.69(1.35、5.37)1.30(0.67、2.52)11.87(0.97、3.63)2.26(0.99、5.14)2.80(1.43、5.47)
 薬なし0.93(0.30、2.88)1.78(0.81、3.91)11.99(0.99、3.99)2.06(0.57、7.39)2.30(0.92、5.74)

上の表は2型糖尿病の人の使用している薬との関連です。経口ブドウ糖低下薬とインスリンの両方で治療された2型糖尿病の人では、より短い時間とより長い時間の睡眠時間の人の全死因死亡率の高いリスク比が認められました。また、経口ブドウ糖低下薬とインスリンの両方で治療された人は、心血管疾患死亡リスクが5時間以下で2.69倍、10時間以上で2.80倍と高くなりました。

さらに、45歳以前に診断された2型糖尿病の人では、45歳以降に診断された患者と比較して、最短および最長の睡眠時間で、1日7時間睡眠の人と比較して、全死因死亡のリスクが高く、また睡眠時間の死亡率への影響は、糖尿病を10年以上の人の方が、10年未満と比べてに顕著でした。

以前の記事「睡眠はあなたの脳を洗い流す」で書いたように、睡眠中に脳脊髄液の流れの増加と脳波の徐波(周波数の低い波)が、脳から有毒な物質を洗い流すのに役立つことが示唆されています。さらに、時間的であっても質的であっても、不十分な睡眠は交感神経を活性化してしまうかもしれません。そうすると血糖値の制御、コルチゾールやインスリンの分泌の制御が悪くなり、結果的に死亡率が増加する可能性があるのかもしれません。

睡眠時間が長くなると死亡率が増加するというのは、逆に考えると、睡眠中に体、特に脳がしなければならない機能、役割が慢性炎症などにより低下し、その分長い時間睡眠をとらないと、脳がその働きを果たせないのかもしれません。

糖質制限では睡眠の質が向上する人が多いように、糖質制限を行わない場合の2型糖尿病では睡眠の質は低下しているでしょう。血糖値コントロールが悪かったり、脳のインスリン抵抗性が高いと、睡眠の質が低下した分、脳がさらなる時間の睡眠を求めるのかもしれません。睡眠時間が長いから死亡リスクが高いのではなく、睡眠時間を長くしなければならない体の状態が死亡率を高めると思われます。

いずれにしても、まずは糖質制限をして、睡眠の質を高めましょう。

「Association between sleep duration and mortality risk among adults with type 2 diabetes: a prospective cohort study」

「2型糖尿病の成人における睡眠時間と死亡リスクの関連:前向きコホート研究」(原文はここ

コメント

  1. 鈴木 武彦 より:

    鶏と卵の話しみたいですが、

    睡眠時間が長い=活動性が低い=体力低下「ダルイ、寝ていたい」=睡眠時間が長い・・・

    そもそもの原因は分かりかねますが、この悪循環は確かに体に悪そうです。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      鶏と卵の話と同様だと思います。7時間で起きれば死亡率が低くなるわけではないと思います。