前回の記事で予告した通り、フリースタイルリブレから得られたデータを使って、今回の洞爺湖フルマラソンの分析をします。フリースタイルリブレから得られる値はグルコース値ですが、わかりやすいように文章の中では血糖値という表現も併記します。
まずは、レースのペースとグルコース値(血糖値)を見てみましょう。
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青い線がペースです。真ん中あたりでペースが落ちているのは、上り坂の部分ですが、最後の方の急なペースの低下は完全に足が止まったときです。上り坂でベスパプロを1個注入しています。
赤い線がグルコース値(血糖値)の値です。17キロあたりをピークに徐々に低下しています。実はスタート前からすでに血糖値が上がっているのですがこれについては別に考察します。
足が止まった後の35キロ付近でもグルコース値(血糖値)はまだ106あります。つまり、血糖値が下がったから足が止まったのではなく、完全に止まった後にもさらに血糖値が下がり続けたことになります。そして最低値は74です。
このようにペースとグルコース値(血糖値)のグラフを重ねると確かに、ペースとグルコース値(血糖値)が連動しているようにも見えます。
そこで、次に前回の記事に書いた心拍数とグルコース値(血糖値)を見てみましょう。
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グレーの線が心拍数で、黄色がグルコース値(血糖値)です。グルコース値(血糖値)の最大値は17キロ付近であり、その前後辺りで心拍数は170を超え、その後徐々に増加しています。心拍数の増加に伴い、グルコース値(血糖値)が低下しているように見えます。
ケトン体ランニング「ケトラン」ではかなり運動強度が高くても、メインのエネルギーは脂肪です。最大酸素消費量の70%の強度の運動でほぼピークになります。ちなみに通常の食事だとピークは50%あたりです。ケトランで運動強度が80%となってもかなりの割合脂肪をエネルギーにしていると考えられますが、やはり90%の強度ではかなり割合が低くなり、糖質メインのエネルギーになってしまいます。
そうすると今回のペースはゾーン5に入るようなオーバーペースなので、当然脂肪よりも糖質がメインのエネルギーであった可能性が高くなります。カーボローディングはしていませんが、実際にはカーボローディングをしていない糖質制限アスリートは、通常の食事をしているアスリートと何ら変わらないグリコーゲン量を有しているという研究があります。
グルコース値(血糖値)が低下したことに関して、途中で摂る糖質がなかったことは今回に影響している可能性はありますが、やはり最も大きいのは脂肪をエネルギーにできないほどのオーバーペースにあると考えます。
37キロ付近以降ではグルコース値(血糖値)は80台からさらに70台になっています。その37キロ以前から少しふらついたような感覚と眠気を感じました。恐らく低血糖です。しかし、普段の生活で糖質制限をしているので、70台の血糖値は全く平気です。
恐らくは脳が危険という判断をしたのでしょう。実際には70台の血糖値はまだ大丈夫ですし、脳には十分すぎるほどのケトン体が体には豊富にあります。(このことについては別の記事で取り上げます。)しかし、どんどん低下する血糖値を感じ、その低下速度により危険を感じ、脳が「待った!」をかけたのだと思います。普段の生活なら体はそこまで糖質を使っていませんから、糖新生で作る糖で十分ですが、フルマラソンでしかもオーバーペースの走りに必要な糖を賄うことは、グリコーゲンの分解と会わせて、私の糖新生能力を超えていたのだと思います。グラフを見ていただけるとわかりますが、38キロ付近を最低値として徐々にまたグルコース値(血糖値)はじわじわ上昇してきています。ここではもう歩いているので、糖新生が間に合い始めたのでしょう。
以前、自分でも言っていたように脳を騙すために糖質摂取が必要であることを改めて感じました。決して、筋肉を動かすためではありません。脳が危険と感じてしまったり、異常な疲れを感じてしまうとやはり体の動きを止めてしまうのです。そうなる前に脳に少しだけ糖質を感じさせてあげれば十分だと思います。
ただ、糖質をメインのエネルギーにして走らない程度のペースでは、全く途中の糖質摂取は必要ではありません。つまり、記録を狙って、スピードを上げ、心拍数がいつもよりも上がるのなら、糖質を途中で摂取するのは必要です。しかし、心拍数を見ながら、適切なペースで走るのなら必要ありません。
それにしても、どのように糖質を摂取するのが効果的かはよくわかりません。スポーツドリンクを飲むと異常なのどの渇きを感じてしまいます。ここぞというタイミングで「ここでジョミ」のようなもの、またはその他のジェル、またはキャラメルやチョコレート(溶けそうですが)を単発で摂るのが良いのかなと思っています。
次回のウルトラマラソンで何らかの情報が得られると良いのですが。
シミズ先生、はじめまして。
いつもブログ拝見しております。
私は糖質制限歴2年4か月になり、趣味でランニングをやっています。
ランニング中の血糖値測定、実に興味深いです。
糖質制限を始めてから、ランニング中も糖質摂取は不要と考え、レース中もすべて無補給、水のみで通してきました。
フルマラソンぐらいまではだいたい問題はないのですが、ウルトラマラソンやロングトレイルで概ね5~6時間を超えると、極端にパフォーマンスが落ちてしまいます。
あきらかに糖質制限前とは異なります。
おそらく低血糖、いわゆるハンガーノックだと思われます。
糖新生が間に合わなくなって、最低限の血糖値を維持できなくなってくるのではないかと思います。
そこで、次のレースからは無補給にこだわらず、糖質を補給しようと考えています。
ウルトラマラソンでの血糖値測定を楽しみにしております。
(たがしゅう先生もフリースタイルリブレで運動中の血糖値測定をされていて、そちらにも同じようなコメントをしました。ご了承ください。)
リュウさん、コメントありがとうございます。
これまで糖質制限でフルマラソンを走っても、いわゆるハンガーノックはありませんでした。しかし、今回やはり飛ばし過ぎました。
どのくらいで走るかにもよると思います。最大酸素摂取量の80%と90%では脂肪をエネルギーにできるのが3分1に減ってしまうのです。
今回、最大心拍数の90%以上で走ったので、最大酸素摂取量と割合を同じと仮定すると、80%で走るときと比べると3分の1程度しか脂肪を
燃料にできないので、糖質が途中で絶対に必要になるということです。しかし、前半は全く苦しくなかったのは糖質制限によるものと思ってはいます。
最大心拍数の90%越えはやはり中高年には危険です。これからは80%、高くても85%までに抑えようと思っています。
ただ、通常の食事をしているランナーではどんどん糖質が使われる体なので、どんどん糖質を補給しなければなりません。
ちなみに私もウルトラのときは無補給でとまでは考えていません。
今回、実際には足が止まったときまだ血糖値は100以上ありました。そして、次の記事を読んでいただくとわかりますが、ケトン体値は
恐らくたくさんありました。それでも、軽い低血糖症状を示したのは、恐らく脳は血糖値そのものよりも、その下がり方、下がる傾きで
危険と判断しているのではと思います。本当に危険になってから症状が出るわけではない気がします。
たがしゅう先生もフリースタイルリブレを使っているんですね。ブログを見てみました。ただ、あのデータは恐らく初日ですね。
私も初日は訳も分からず、低血糖を示していました。最初は不安定なようです。センサーを付けてから半日ぐらいしてから使い始めるのが
良いかもしれません。でも、このように皆さんが色々試すと、今まで見えなかったことがわかって面白いですよね。机上の空論ではなくなりますから。
リュウさんが、どの程度のペースなのかはわかりませんが、参考にしていただけると幸いです。
ご返事ありがとうございます。
これまで糖質制限していれば、長時間ランニング中も糖質摂取は不要だと思い込んでいました。
後半落ち込むのは前半のペースが速すぎると考え、鼻呼吸できる範囲で極力ペースを抑えるようにもしてみましたが、やはりだめでした。
今後はレース中は最低限の糖質は補給するようにしようと思います。
そうなると、長時間ランニングでは糖質摂取が必要だとすると、人類は走るために生まれたとか、追跡狩猟をしていたというのはどこまで本当なのかなと思えてきました。
リュウさん
速すぎると思ったのは実際には、心拍数は計っていますか?もし計っていたら、ご自身の最大心拍数と、その時の心拍数を教えていただけますか?
鼻呼吸できる範囲のときの心拍数はいかがでしょう?
私は、今回でも鼻呼吸できる程度でしたが、心拍数がかなり上がっていました。重要なのははやりペースだと思っています。
糖質がどれほど必要か、どの程度脂肪を使えるかはかなり個人差はあると思いますので、糖質を摂らないことにこだわる必要はないと思います。
追跡狩猟は推測にすぎない部分があります。私は否定的ではありませんが、恐らくフルマラソンよりもペースは遅く、距離も短いのではと思っています。
今回のマラソンの分析はまだ途中のものもあるので、また記事にします。
初めまして。私は緩徐進行一型糖質病です。ドクターシミズさんの糖質制限の考え方に賛同します。糖質を抑えてマラソンも走っています。さて、リブレを使用したいと思い、アボットに問い合わせしたら、大量の汗をかくと、数値が正しく測定できないとか、センサーがはずれるとか言われました。そんなことはあるのでしょうか?実際に使用されている経験から運動および生活する上にで注意すべき点があればご教示下さい。よろしくお願いします。
ライオンさん、コメントありがとうございます。
アボットとしては適応外の使用になると思うので、このように大袈裟な回答になると思います。
何かあってから文句を言われても困りますので。
ただ、自己判断でマラソンに使う分には全く問題が無いと思います。
私はブログで書いているように、これまでフルマラソンとウルトラマラソンにフリースタイルリブレを付けて走っています。
正しく測定できているかどうかは、実際のところわかりません。「正しい」かどうか判断するのは不可能だからです。
普段の値でも、簡易式の自己血糖測定器の値とは違いがあるので、「正しい」かどうかはわかりません。
逆に言えば血糖測定器の血糖値も誤差があるので、「正しい」と言えるかどうかは何とも言えません。連続して3回ぐらい測ると毎回違う値ですから。
そのようなことを念頭において、自己判断で使用するなら十分使えるものですし、大量の汗をかいてもこれまでは外れる気配すらありません。
水泳はやったことがないので、もしかしたら長時間の水泳はどうかはわかりませんが、お風呂や温泉でも問題ありません。
運動はウルトラマラソン12時間に耐えたほどなので、問題ありません。
生活上の注意点は慣れてくるとリブレを付けていることを忘れてしまって、着替えのときや身体を拭いたりするときに
引っ掛けてしまうことがあります。ちょっとぐらいで取れるものではないですが、思いっきり引っ掛けてしまうと外れる可能性はあります。
一部でも外れると、そこからはがれやすくなると思うので、注意が必要でしょう。
その他の注意点は、やはりちょっとしたことで痛いことがあります。腕の位置であったり、不意にリブレに触ったりして、
痛みが走ることはありますが、ずっと続くものではないので、放置しています。
最も注意しなければならないことは、最も重要なことで、血糖値とリブレのグルコース値は異なるということです。
センサーのロットによるものなのかどうかはわかりませんが、血糖値よりも低めのもの、高めのもの両方存在していました。
また、食後血糖値の上りの幅よりもグルコース値の上りの幅の方が大きいことがほとんどでした。
最初の内何回かは血糖値も同時に測り、そのリブレの値の癖を探ることが必要でしょう。
さらに、装着してすぐの場合は、グルコース値がかなり不安定です。私は装着して1日経ってから、センサーを起動させています。
そうすると大体初日から安定しています。
参考になりましたでしょうか?
長文のご回答、ありがとうございます。とても参考になりました。偶然てすが、質問したあとの同窓会で2型の友人が1か月間、リブレを使用していたことを知り、体験談を聞きました。先生がブログで書かれていた通り、粘着力は強そうでね。次回受診時に使用を申し込みます。主治医は糖質制限に否定的です。低血糖を回避しながら数値をコントロールすれば、とやかくいわれないでしょう☺️12月の青島太平洋マラソンが楽しみです。あとは、さらに高額化する治療費との闘いだけですけど・・・・
これからも情報発信をお願いします。
ライオンさん、糖尿病専門医にしてみれば、糖質制限を認めることは
今までやってきたことの自己否定のようなものですから。なかなか難しいのかもしれません。
青島太平洋マラソンで何か面白いデータが出たら教えてください。
お疲れさまです。詰問風に問診されておざなりに処方する専門医よりコミュニケーションがとれる内科医のほうがましかなと思いますリブレとうまく付き合いうことができれば、糖質管理を理解しない医師との関係も考えるざるをえませんねね。青島太平洋マラソンも
人気があって、30分強で締め切ってしまうんですよ。実業団旭化成の地元に住んでいるので、刺激はあります。青島太平洋マラソンの情報を連絡しますね。