日本でも大豆ミートなど植物由来のタンパク質を使った「代替肉」が多く販売されてきています。(ここ参照)
そもそも肉に似せるのであれば、肉を食べれば良いのに、代替肉は肉よりもなぜか「健康的」と考えられています。ものすごく質の低い多くの研究により、肉、特に赤肉は健康に良くない、がんなど様々な疾患のリスクを増加させるという考えが広まってきてしまい、植物が健康的だという洗脳が続いています。脂肪やコレステロール悪玉説が広がった状況と非常に似ている気がします。
そして、さらにここでSDGsという非常に胡散臭い世界的な活動も広がり、肉は環境に良くない、植物は環境に良い、なんていう考えも広がってきています。(ここ参照)環境なんて全体をとらえないとわからないのに、近視眼的、短絡的に肉の方が環境に悪いことになってしまっています。低脂肪や減塩、低コレステロールなどの付加価値を付けて高く食品を売ってきた企業などは、次のターゲットが見つかり、積極的なのでしょうか?
代替肉が健康的なんて言うのは、明らかにウソだと思っています。(「植物由来の人工肉は健康に良い?」参照)肉に近づけるために加工度合いが非常に高く、様々なものが添加されていますし、そもそも表示されているものが吸収されるのでしょうか?
今回の研究では、赤肉と代替肉の代表「ビヨンドバーガー」を食べた後の血液を調べています。
対象は平均年齢28歳の29人の健康な男性が対象です。平均BMIは24.5です。4種類の肉を使った料理を食べます。肉以外の材料は全て同じです。肉の種類は、牧草で育てられた牛肉、穀物で育った牛肉、ラム肉、そして植物由来の肉のビヨンドバーガー(BB)です。(図は原文より、表は原文より改変)
栄養素 | 牧草牛 | 穀物牛 | ラム | BB |
---|---|---|---|---|
生の状態g | ||||
タンパク質 | 18.7 | 18.4 | 21.4 | 18.7 |
脂質 | 17.7 | 9.1 | 2.4 | 17.8 |
調理済みの食事 | ||||
タンパク質、g | 10.3 | 11.2 | 12.4 | 10.7 |
脂質、g | 11.1 | 6.7 | 4.3 | 10.1 |
炭水化物、g | 18.1 | 18.4 | 19.1 | 18.3 |
総食物繊維、g | 1.6 | 1.1 | 1.7 | 1.9 |
砂糖、g | 3.5 | 4.0 | 4.0 | 3.8 |
ナトリウム、g | 0.3 | 0.3 | 0.3 | 0.4 |
鉄、mg | <2.0 | <2.0 | <2.0 | 1.9 |
亜鉛、mg | 1.2 | 1.4 | 1.2 | 1.1 |
コレステロール、mg | 27.9 | 26.0 | 27.4 | <0.5 |
上の表は100g当たりのそれぞれの肉の栄養成分です。ラムが最も低脂質で、BBは意外と高脂質に仕上げています。特筆すべきはBBにはコレステロールがほとんど含まれていません。「健康的」を謳うためでしょうか?それ以外の成分はそれほど大きな違いがありません。
アミノ酸 | 牧草牛 | 穀物牛 | ラム | BB |
---|---|---|---|---|
EAA | ||||
イソロイシン | 0.40 | 0.42 | 0.49 | 0.40 |
ロイシン | 0.75 | 0.78 | 0.89 | 0.74 |
バリン | 0.49 | 0.50 | 0.58 | 0.51 |
ヒスチジン | 0.28 | 0.28 | 0.33 | 0.23 |
リジン | 0.66 | 0.72 | 0.80 | 0.53 |
メチオニン | 0.27 | 0.28 | 0.32 | 0.18 |
フェニルアラニン | 0.44 | 0.46 | 0.52 | 0.53 |
スレオニン | 0.39 | 0.40 | 0.47 | 0.33 |
NEAA | ||||
アラニン | 0.52 | 0.50 | 0.59 | 0.39 |
アルギニン | 0.57 | 0.57 | 0.65 | 0.65 |
アスパラギン酸 | 0.86 | 0.89 | 1.01 | 0.98 |
グルタミン酸 | 2.04 | 2.12 | 2.38 | 2.13 |
グリシン | 0.53 | 0.42 | 0.47 | 0.34 |
プロリン | 0.66 | 0.61 | 0.70 | 0.66 |
セリン | 0.37 | 0.38 | 0.41 | 0.41 |
チロシン | 0.34 | 0.35 | 0.40 | 0.38 |
BCAA | 1.64 | 1.70 | 1.96 | 1.65 |
EAA | 3.68 | 3.85 | 4.41 | 3.44 |
NEAA | 5.89 | 5.85 | 6.62 | 5.94 |
TAA | 9.57 | 9.70 | 11.03 | 9.38 |
上の表は調理した食事に含まれるアミノ酸です。肉の種類による違いはほとんどありませんし、BBもかなりアミノ酸含有量は肉に近くなっています。
では、食後の血中のアミノ酸の状態を見てみましょう。
TAA(総アミノ酸)、BCAA(分岐鎖アミノ酸)、EAA(必須アミノ酸)、NPAA(非タンパク新生アミノ酸、タンパク質を構成しないアミノ酸)は赤肉と比較してBBで有意に低くなっていました。
アミノ酸 | 牧草牛 | 穀物牛 | ラム | BB |
---|---|---|---|---|
EAA | ||||
イソロイシン | 120±9 | 163±12 | 180±10 | 87±7 |
ロイシン | 191±15 | 261±18 | 267±14 | 112±10 |
バリン | 209±16 | 277±19 | 306±15 | 137±12 |
ヒスチジン | 48±4 | 54±4 | 53±5 | 26±4 |
リジン | 237±16 | 286±16 | 291±12 | 115±11 |
メチオニン | 42±3 | 56±4 | 58±4 | −8±2 |
フェニルアラニン | 67±5 | 84±5 | 82±6 | 76±4 |
スレオニン | 126±10 | 151±13 | 157±12 | 54±8 |
トリプトファン | 118±8 | 148±10 | 152±11 | 64±10 |
NEAA | ||||
アラニン | 540±28 | 575±44 | 568±49 | 387±37 |
アルギニン | 95±7 | 107±8 | 118±7 | 92±7 |
アスパラギン | 53±5 | 65±6 | 60±5 | 67±5 |
アスパラギン酸 | 2±1 | 4±1 | 3±1 | 0.04±0.5 |
グルタミン酸 | 3±7 | 9±9 | 13±9 | 2±6 |
グルタミン | 244±33 | 285±29 | 256±28 | 230±38 |
グリシン | 155±12 | 132±17 | 123±14 | 68±13 |
プロリン | 378±16 | 384±17 | 389±16 | 290±16 |
セリン | 72±9 | 85±11 | 74±8 | 60±6 |
チロシン | 51±5 | 68±5 | 76±5 | 36±5 |
NPAA | ||||
シトルリン | –14±2 | -2±2 | 9±2 | –11±3 |
ヒドロキシプロリン | 29±1 | 14±1 | 11±1 | –2±1 |
オルニチン | 54±5 | 57±5 | 52±4 | 51±4 |
タウリン | 19±3 | 56±5 | 11±4 | –29±3 |
BCAA | 520±40 | 702±48 | 753±38 | 336±28 |
EAA | 1158±78 | 1481±88 | 1546±72 | 663±57 |
NEAA | 1601±97 | 1706±113 | 1700±101 | 1218±104 |
NPAA | 88±8 | 124±9 | 84±7 | 10±6 |
TAA | 2845±176 | 3299±195 | 3366±154 | 1899±157 |
上の表は食後4時間の血中のアミノ酸の曲線下面積です。いくつかのアミノ酸を除いて、BBでは他の赤肉と比較して、圧倒的に低値となっています。つまり、栄養成分として含まれているのに吸収されていないのでしょう。特に、必須アミノ酸はフェニルアラニン以外全て低値です。果たしてこんな食材を食べる意味があるのでしょうか?
上の図は食後の血糖値とインスリン値です。AとBは全体で、CとDはBMIによって分けています。AおよびBを見ると、どの食事も血糖値の上昇は認められず、1時間値のインスリンの上昇に合わせて、やや1時間血糖値が低下しているように見えます。CおよびDの図の赤い線はBMI25以上の過体重の人です。そうすると、有意ではありませんがBBではわずかに過体重の人で血糖値が上がっているように見えます。インスリンの推移は有意ではありませんが、過体重の人の方が高くなっているように見えます。
上の図は食欲の消化です。空腹感、満腹感、満足感、食欲の自己評価スコアは肉の種類のよる違いはありませんでした。
つまり、代替肉は食べた気にはなるけれど、肉よりも圧倒的にバイオアベイラビリティ(生体利用率)が低いのです。
赤肉の種類による違いはなく、代替肉は肉の代わりには成りえません。
人類は進化の過程で肉を食べてきました。もちろん植物も食べてきましたが、恐らく飢えを回避するための仕方がない食材であったでしょう。肉は非常に栄養価が高く、肉に合わせて人間の体は進化して、できる限りその肉の恩恵を受けるように吸収、代謝のメカニズムができたのでしょう。いくら栄養成分が同じでも、肉と植物は違います。
企業が食品に示している栄養成分は、もちろん全く役に立たないわけではないでしょう。しかし、栄養が含まれていることと、それを食べて吸収できることは違います。表示通りに吸収出来れば良いですが、そうはなりません。やはり肉、魚、卵など動物に勝る食材はないでしょう。
特に高齢者では影響は大きいかもしれません。植物由来の食事の方が健康的だと考えて、白米と野菜がメインの食事になり、あまり肉を食べない人もいるでしょう。食事の量も減ることを考えると、効率の良い肉や卵など動物を食べるべきでしょう。
糖質制限をして肉をたくさん食べましょう。
「Plasma Amino Acid Appearance and Status of Appetite Following a Single Meal of Red Meat or a Plant-Based Meat Analog: A Randomized Crossover Clinical Trial」
「赤身の肉または植物ベースの肉の類似物の単一の食事後の血漿アミノ酸の外観と食欲の状態:無作為化クロスオーバー臨床試験」(原文はここ)
高齢になると、何を食べるかよりも、どれだけ食べることができるかの方が健康に寄与すると思います。
同時に、どれだけ動けるか、どれだけ出せるか(排便)も大切です。
75歳で薬は一切服用せず健康な毎日、年金などあてにせず、いまだ現役で暮らす私はそう考えています。
生涯現役の爺さん、コメントありがとうございます。
どれだけ食べるか、どれだけ動くか、どれだけ出すか、大切ですね。
私も生涯薬なしで過ごしたいと思っています。
植物由来代替肉は、健康嗜好と思想的な(動物は人間の仲間)動機があると思われます。
気持ちについては他者が意見するべきではないのかもしれませんが、健康(栄養)面は今回先生が
客観的に示してくださったように、根拠の乏しい、イメージや「流行り」が先行しているのでしょうね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
人間だけでなく、動物は生きるために食べています。
その食べ物が吸収できず、体にとって栄養とならないのであれば、いくら栄養成分を含んでいても意味がないですからね。
「大豆ミート」だの、「代替肉」だの、こういう「人工物」を食べたがる人たちって、心の底では「肉が食べたい!」と思っているんではないでしょうか。彼らのやっていることは、「肉を食べたい」という思いの裏返しにしか見えません。だったら素直に肉や卵を食べれば良いのに。「動物性食品を食べてはならない」宗教って、怖いな~。
>はやり肉。魚、卵
↑清水先生、これは誤字でしょうか・・・?
植物由来の代替肉には例えばビタミンB12などの動物性由来の栄養素が含まれていないのではないでしょうか?
ビーガンはサプリメントなしでは栄養素が不足すると思いますが、全ての栄養素の機序が解明されていない現時点で全ての栄養バランスを人工的にコントロールする事は不可能でしょう。新たな体調不良を訴える患者が今後、増えてきそうです。
代替肉は超加工食品です。世界を牛耳る加工食品メーカーの影が見え隠れするのは私だけでしょうか。環境ビジネスと同様の闇を感じます。
西村 典彦さん、コメントありがとうございます。
代替肉は仰るように超加工食品ですから、ビタミンB12を加えることは容易でしょう。
添加さえすればどんな栄養素も自由自在です。しかし、それが健康的な食事なのかどうかは別問題です。