ばね指は日本整形外科学会のホームページには以下のように書かれています。
「・・・この靱帯性腱鞘は指に部分にありますが、それが終わる指の付け根付近に力がかかり炎症を生じやすいところがあります。 その部分の腱や腱鞘が炎症を起こし、“腱鞘炎”になり、さらに進行すると引っ掛かりが生じばね現象が起こります。 これを“ばね指”と呼んでいます。
・・・
症状
指の付け根で屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると、“腱鞘炎”になり腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、指の付け根に痛み、腫れ、熱感が生じます。 朝方に症状が強く、日中は使っていると症状が軽減することも少なくありません。 進行するとばね現象が生じて“ばね指”となり、さらに悪化すると指が動かない状態になります。
原因
更年期の女性に多く、妊娠出産期の女性にも多く生じます。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのも特徴です。糖尿病、リウマチ、透析患者にもよく発生します。母指(親指)、中指に多く、環指、小指、示指にもよくみられます。
病態
指の使いすぎによる負荷のため、動かすたびに摩擦のために炎症が進み、腱鞘が肥厚したり、腱が肥大し、通過障害を起こすために一層症状が悪化します。
診断
指の付け根に腫脹や圧痛があり、ばね現象があれば診断は容易です。糖尿病、リウマチ、透析患者では、多発性に生じます。・・・」
なぜ女性に多いかわかりません。指の使い過ぎというのは、職業的なもの以外では、過度の使い過ぎというのはちょっと疑問です。
今回の研究では、1型および2型糖尿病の患者を対象に血糖のコントロールとばね指になる可能性の関連性を分析しています。(図は原文より)
上の図は1型および2型の糖尿病別、男女別の血糖コントロールによるばね指になる可能性を示しています。HbA1cでOptimal glycemic control(最適)は6.6%以下、Acceptable glycemic control(許容できる)は6.6~8.1 %、Poor glycemic control(コントロール不良)は8.1%を超えるものに分けています。HbA1c6.6以下の最適グループと比較すると、許容できるグループでは1型で1.88倍、2型で1.38倍、コントロール不良グループでは1型で2.36倍、2型で1.39倍でした。男性では許容できるグループでは1型で3.26倍、2型で1.29倍、コントロール不良グループでは1型で5.56倍、2型で1.39倍でした。2型は思ったほどではない気がしますね。
私は糖質過剰摂取によって炎症、酸化ストレスの増加、ポリオール経路を介してソルビトールの増加による腱の腫脹(浮腫)、AGEsの蓄積などが起こり、ばね指になると考えています。
糖尿病だけでなく糖質過剰摂取で起こるのであれば、糖尿病の有無ではそれほど差が出ないのだと思います。
職業などで酷使するのでない場合、ばね指も糖質過剰症候群と考えます。普段から糖質制限をすればばね指は防げると思います。
「High HbA1c Levels Are Associated With Development of Trigger Finger in Type 1 and Type 2 Diabetes: An Observational Register-Based Study From Sweden」
「高いHbA1cレベルは、1型および2型糖尿病におけるばね指の発生と関連している: スウェーデンからの観察記録に基づく研究」(原文はここ)
最近は糖質たっぷりのお菓子やラーメン、ピザ、等のジャンクフードを他人が食べているのを見ると
「ああ、たしかに旨いけど炎症起こして体内は痛めつけられているんだな、、、」
と想像力を働かせてしまいます。
清水先生、おはようございます。
ばね指も糖質過剰症なのですね。よく言われていますが、酸化ストレスというのは高血糖や高インスリン血症で起こるという理解であっていますか?同じ栄養素でも、脂質は酸化ストレスにはならないのででしょうか?この辺りがいつもモヤモヤしています。
じょんさん、コメントありがとうございます。
酸化ストレスは高血糖だけでなく、運動などでも増加します。適度な酸化ストレスは必要なものです。
酸化ストレスにより脂質は過酸化脂質になります。これは酸化ストレスのマーカーでもあります。
できた過酸化脂質は恐らく有害なものです。何も起きていない脂質は酸化ストレスにはならないでしょう。
1型糖尿病むーです
発症して9年目ですがHbA1cを6.2前後で経過していますが昨年ドケルバンになってしまいました
糖尿病における酸化ストレスかなと思いながら過ごしています
糖質制限しながらもコントロールに日々悩みながら自問自答している毎日です
本日も良い学びができました
これからもよろしくお願いします
ありがとうございます。
高血糖の場合は、そのこと自体が血管内で活性酸素などの生成の原因になるのかもしれないですね。
昨日、先生のご著書、肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか 「糖質過剰」症候群II を読み直しました。栄養基質として、糖質はその代謝過程の解糖系やTCAサイクルで活性酸素が生じるため酸化ストレスにつながると理解しました。
じょんさん、コメントありがとうございます。
拙著をお読みいただきありがとうございます。
糖質はエネルギー源として使うものではないことがわかっていただけると思います。