LDLコレステロールが低下しても、リスクが低下したとは限らない

以前の記事「LDLコレステロールが高値だけでは何もわからない」でLDLコレステロール値ではなく、LDLの粒子の大きさが重要だということを書きましたが、今回は粒子の数についての記事です。

脂質の異常でLDLコレステロール値を目標に治療がされていますが、本当にLDLコレステロールがリスクと結びついているのでしょうか?

スタチンを使って、LDLが低下すれば、何となく安心してしまうのは患者本人だけではなく、医師も同様なのではないでしょうか?スタチンを使ったことで何も治療をしていないわけではなく責任を回避できます。スタチンを使っていても心血管イベントが起きた場合は、「不運」で済ませるか、さらに濃厚な治療が必要だと患者さんを簡単に説得できます。

しかし、実際のところは、LDLコレステロール値よりもLDLの粒子数の方がリスク評価には重要であり、LDLコレステロール値がいくら低下しても、LDLの粒子数が下がらなければ、リスク低下はないと考えられています。

「Clinical implications of discordance between low-density lipoprotein cholesterol and particle number」

「低密度リポタンパク質コレステロールと粒子数との不一致の臨床的意義」(原文はここ

 

下のグラフはどちらも原文からのもので、心血管イベントの累積発生率を示しています。追跡期間は5年です。

 

 

上のグラフでLDL-CはLDLコレステロール値、LDL-PはLDLの粒子数を示していて、赤のグラフはLDLの粒子数の方がLDLコレステロール値よりも高い場合、黒はLDLの粒子数とLDLコレステロール値が一致している場合、青がLDLの粒子数がLDLコレステロール値よりも少ない場合です。これを見ると、LDLコレステロール値よりもLDLの粒子数の低下の方がリスク低下には重要だとわかります。LDLコレステロール値だけを見ていると、赤いグラフが一番リスクが少なくないとおかしいですよね。LDLコレステロール値とLDLの粒子数に不一致があり、LDLの粒子数が多い場合、このような間違ったリスク評価をしてしまいます。しかし、患者も医師も不一致が起きているかどうかは知りません。

 

 

上のグラフは、LDLコレステロール値が100未満の場合をLowとして、100以上をNot Lowとしています。LDL粒子数が1000未満の場合をLowとして、1000以上をNot Lowとしています。そうすると、最もリスクが低いのはLDL粒子数がLowで、LDLコレステロール値がNot Lowの場合なんです。逆に最もリスクが高いのは、LDL粒子数がNot Lowで、LDLコレステロール値がLowの場合なんです。

これを見ても全くLDLコレステロール値なんて役に立たない指標だということがわかります。LDL粒子数が低ければ、LDL粒子数が高い場合に比べれば、LDLコレステロール値はそれほど関係がありません。

こんな結果が出ていても、実際の現場ではLDLコレステロール値を見て、治療の判断をしているのが現状です。当てにならない指標を使って、大して効果がない薬物を使用して、何となく不安を軽減しているような状態です。これで良いのでしょうか?心血管イベントの発生率を考えたら、スタチンの効果があるのかないのかなんて正直わかりません。そこで、LDLコレステロールが低下しているから、スタチンが効果があるように見えます。しかし、心血管疾患などが起こらないことがスタチンの効果であり、それは一生飲み続けてもわかるものではありません。おまじないレベルかもしれません。

LDLやHDL,中性脂肪などが食事で変化することを考えれば、薬は必要ないのではないでしょうか?HDLが上がり、中性脂肪が下がる糖質制限をすればスタチンの何百倍も安く、何百倍も効果があると私は考えます。

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