厚労省や各学会が推奨するPFCバランスは2型糖尿病ではどうなっているの?

厚労省が推奨する3大栄養素のPFCバランスはタンパク質13~20%、脂質20~30%、炭水化物50~65%です。そして、医療で使うほぼすべての学会のガイドラインでは、この比率を重要視しています。本当にこれが健康的なバランスなのでしょうか?

このPFCバランスが本当に重要なのであれば、病気の人のPFCバランスは大きく異なっている可能性があります。

では、糖質過剰症候群の一番の代表疾患、糖尿病のPFCバランスはどうなっているでしょうか?

今回の研究では、日本高齢者糖尿病介入試験(J-EDIT)に登録された、HbA1c値が7.4%以上の65歳以上の糖尿病患者1173人が対象です。もちろん、食事のデータは食事アンケートのものなのでデータの質は低いです。でも、そもそも厚労省の推奨の元のデータもこのような質の低いデータの寄せ集めですので、このまま見ていきましょう。

まずは、日本人の2型糖尿病患者の様々なパラメータについて、総エネルギー摂取量に対する炭水化物の割合に応じて、4つのグループに分けたときのデータを示します。炭水化物は最も低い群が55%未満、次が55~60%、60~65%、最も高いのが65%を超える群です。(表は原文より改変)

男性女性
C1C2C3C4C1C2C3C4
(〜55)(55〜60)(60〜65)(65〜)(〜55)(55〜60)(60〜65)(65〜)
n  = 90)n  = 143)n  = 113)n  = 71)n  = 126)n  = 179)n  = 131)n  = 59)
年齢(歳)71.5±4.571.8±4.871.1±4.571.2±4.571.8±4.372.4±4.972.2±5.273.0±4.7
体重(kg)61.9±8.362.7±9.262.2±9.761.6±8.054.8±9.453.4±8.653.9±9.553.4±8.2
BMI (kg/m2)23.2±3.223.5±3.223.8±3.223.5±2.524.0±3.723.8±3.724.1±4.024.3±3.2
糖尿病の治療(食事/経口糖尿病治療薬/インスリン) (%)8.9/61.1/30.012.9/69.2/18.215.0/53.1/31.812.6/56.3/31.07.9/54.8/37.35.0/64.8/30.210.7/64.1/25.28.5/59.3/32.2
HbA1c (%)8.40±0.728.50±1.018.41±0.768.36±0.878.51±1.078.47±0.928.35±0.778.52±0.97
空腹時血糖値 (mg/dL)165.4±44.2175.2±52.7169.2±51.7160.2±47.5161.4±48.4172.1±52.9163.0±44.5165.9±59.6
総コレステロール (mg/dL)194.9±33.3190.9±30.3193.6±34.8192.2±32.4211.9±35.2212.0±33.6208.4±38.2214.1±34.9
中性脂肪 (mg/dL)121.7±64.7127.1±73.5128.1±66.8176.7±215.0128.3±65.5135.6±74.4127.3±60.3150.4±79.0
LDLコレステロール(mg/dL)117.1±27.5112.5±25.9118.8±34.8113.1±25.3124.9±29.1124.8±32.4121.8±34.0129.9±33.6
HDL コレステロール (mg/dL)53.1±17.653.3±17.849.1±14.649.2±13.561.7±16.760.1±19.562.1±20.454.7±15.9
アルブミン (g/dL)4.16±0.284.24±0.314.18±0.414.16±0.334.19±0.314.21±0.314.29±0.434.22±0.49
収縮期血圧 (mmHg)137.1±19.2135.7±14.4133.6±15.7136.7±12.3138.4±15.3137.7±16.1135.4±15.3137.0±19.2
拡張期血圧 (mmHg)76.7±11.075.4±9.574.0±9.876.0±8.374.8±9.074.6±9.373.6±9.774.6±11.4
エネルギー (kcal/日)2007 ± 4701854±3051695±3621610±3681902 ± 3291678±2891547±2811343±202
タンパク質 (%E)17.0±1.915.6±1.614.7±1.812.8±1.517.5±1.915.8±1.715.0±1.412.9±1.4
脂質(%E)31.4±3.326.9±2.123.1±1.818.2±2.731.0±2.726.6±1.822.7±1.718.8±2.4
炭水化物 (%E)51.6±3.657.6±1.462.2±1.469.0±3.251.5±3.057.7±1.562.3±1.568.3±2.9
タンパク質 (g/日)85.1±22.872.0±13.262.1±14.651.2±12.183.3±17.066.1±12.757.7±10.843.5±8.7
脂質 (g/日)70.9±22.355.4±10.643.6±10.332.7±9.365.7±13.849.7±10.039.3±8.628.2±6.3
炭水化物 (g/日)247.0±53.3253.3±42.3247.0±51.7250.4±56.5239.7±42.4238.3±41.2237.4±43.4224.5±31.7

炭水化物が最も高い65%を超える群では、中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低くなっています。その群は脂質摂取量、脂質割合が非常に低いために、中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低くなっている可能性があります。PFCバランスで見れば、最も炭水化物の多い群は厚労省推奨のPFCバランスと比較して、炭水化物が高く、脂質とタンパク質がしくくなっています。逆に最も炭水化物が低い群は、脂質が高くなっています。ただし、炭水化物の摂取量はどの群も違いはありませんし、HbA1cや空腹時血糖値も違いがありません。

 では、次に2型糖尿病患者をHbA1cで4つのグループに分けたものを見てみましょう。HbA1cは最も低い群より順に、7.9未満、7.9~8.3、8.3~8.8、8.8を超えるものでです。
男性女性
Q1Q2Q3Q4Q1Q2Q3Q4
(〜7.90)(7.90〜8.30)(8.30〜8.80)(8.80∼)(〜7.90)(7.90〜8.30)(8.30〜8.80)(8.80∼)
n  = 89)n  = 128)n  = 93)n  = 107)n  = 117)n  = 141)n  = 110)n  = 127)
年齢(歳)71.7±4.870.9±4.372.0±4.571.5±4.873.0±4.572.0±4.971.3±4.572.7±5.1
体重(kg)62.3±8.361.8±9.261.9±8.262.9±9.854.8±9.553.1±8.554.8±9.753.1±8.3
BMI (kg/m2)23.6±3.023.5±2.923.3±3.023.6±3.424.3±4.023.6±3.524.3±4.023.7±3.2
糖尿病の治療(食事/経口糖尿病治療薬/インスリン) (%)19.1/66.3/14.616.4/56.3/27.39.7/62.4/28.04.7/60.7/34.610.3/64.1/25.67.1/60.3/32.67.3/59.1/33.66.3/62.2/31.5
HbA1c (%)7.59±0.138.04±0.108.47±0.149.56±0.917.62±0.148.03±0.118.48±0.149.67±0.99
空腹時血糖値 (mg/dL)155.1±36.0167.1±48.3171.6±50.6180.7±58.3154.5±40.3158.9±45.4169.2±48.1181.5±60.9
総コレステロール (mg/dL)193.6±31.0187.1±29.8192.0±36.9199.5±31.9211.5±33.5208.0±32.1213.1±39.5213.0±36.8
中性脂肪 (mg/dL)146.1±90.8123.3±65.0131.2±86.1141.7±169.6135.4±71.4136.5±69.2131.9±67.7129.1±69.9
LDLコレステロール(mg/dL)112.5±28.2113.3±30.1115.1±31.1120.1±25.6122.4±32.1122.1±30.0125.8±34.5128.5±32.5
HDL コレステロール (mg/dL)53.1±20.949.0±13.651.7±16.852.8±14.362.1±20.860.3±19.760.9±17.958.6±16.3
アルブミン (g/dL)4.16±0.364.20±0.304.20±0.384.22±0.334.22±0.314.26±0.404.20±0.444.21±0.32
収縮期血圧 (mmHg)139.8±14.8135.7±15.6134.2±16.4133.2±15.0140.6±17.3134.9±14.7135.7±16.2138.0±15.9
拡張期血圧 (mmHg)76.4±9.575.0±9.975.6±9.974.9±9.774.1±11.174.1±9.974.3±8.675.1±8.5
エネルギー (kcal/日)1756±3291750±3721899±3821820±4681645±3301659±3311721±3571625±329
タンパク質 (%E)15.2±2.415.0±1.915.4±2.315.2±2.215.6±2.115.8±2.215.5±1.815.7±2.3
脂質(%E)24.7±4.425.1±5.126.0±5.025.7±5.125.3±4.225.9±4.526.1±4.425.6±4.7
炭水化物 (%E)60.1±5.859.9±6.058.6±6.259.2±6.659.0±5.758.3±5.658.4±5.358.7±6.3
タンパク質 (g/日)66.9±16.865.6±17.273.4±19.069.5±23.665.1±19.065.7±16.867.0±17.564.6±19.0
脂質 (g/日)48.7±15.049.7±17.455.9±19.453.0±21.747.2±15.148.8±16.150.7±16.447.3±16.2
炭水化物 (g/日)245.6±41.5245.9±46.6260.6±49.8248.3±58.5236.2±39.7235.6±41.3244.9±45.7231.6±38.0

HbA1cの値によってグループ分けしているので、HbA1cが悪いほど、推奨PFCバランスから何らかの逸脱が認められていいはずですが、見事にどのグループも厚労省や学会が推奨するPFCバランスの範囲に収まっています。

つまり、この推奨されているPFCバランスは全く健康的なバランスとは言えません。このPFCバランスには科学的根拠がありません。日本人で通常の食事をしていれば、ほとんどがこのPFCバランスに当てはまる割合になるのです。それは健康な人であっても病気の人であっても同様です。

食事療法としてこのPFCバランスが推奨されるのは間違っています。このバランスでずっと食事をしていて様々な疾患が起きているのであれば、このバランスこそ間違っているとまず考えるべきです。ほとんどすべての病気は代謝の異常で起きている代謝疾患なのですから。

多くの専門家は科学的に証明されているかのように、あるいはロボットかのように、「バランスの良い食事」を勧め、このタンパク質13~20%、脂質20~30%、炭水化物50~65%という間違ったバランスの食事を推してきます。血糖値を上げるのは、そしてインスリンを過剰分泌させるのは、糖質過剰摂取以外にありません。糖質過剰症候群の糖尿病になぜこれほどの糖質摂取が必要なのでしょうか?

専門医の治療を受けていて、専門医の言う食事をしているのに、なぜこれほど多くの人が血糖値コントロールが悪くなっているのでしょうか?どんどん薬は増え、データは悪化することが珍しくありません。

血糖値を爆上げする食事を摂るように勧めながら、血糖値を下げる薬を飲ませるのが、本当に治療でしょうか?誰が得をして、誰が害を被るか、よく考えましょう。

糖尿病は糖質過剰症候群です。

「Optimal energy distribution of carbohydrate intake for Japanese elderly patients with type 2 diabetes: The Japanese Elderly Intervention Trial」

「日本の高齢2型糖尿病患者における炭水化物摂取の最適なエネルギー配分:日本高齢者介入試験」(原文はここ

2 thoughts on “厚労省や各学会が推奨するPFCバランスは2型糖尿病ではどうなっているの?

  1. 成田悠輔さん動画で見ました。

    権力者は貧乏人をいかに
    経済的に、文化的に、そして政治的に
    「無力化」
    するかを考えている。

    との事。
    推奨されていふPFCバランスも
    権力者の為のプロパガンダ
    なのでしょうか。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      >推奨されていふPFCバランスも権力者の為のプロパガンダなのでしょうか。
      当然そうだと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です