高齢者の「食育」は誰の仕事か?

最近、医療の世界では「加齢による筋肉量減少」であるサルコペニアという言葉が使われるようになってきましたが、定義は少し混乱していますが、一般の人にはあまり伝わっていないように感じます。そして、あまりにも高齢者の食事が乱れています。

先日もある患者さんが、体調不良を訴えてきました。食事内容を聞くと、「朝食パンにジャムを塗って1枚食べて、昼はあまり食べない、夜はごはん1膳と野菜、ときどき肉や魚を少し食べることもある」と言っていました。タンパク質も脂質もほとんど摂っていないことに唖然としてしまいました。糖質制限をするかどうかは別としても、人間の体のために絶対に必要なタンパク質と脂質をほとんど摂っていないのです。それで健康でいられると思っているのでしょうか?ちゃんとした食育は誰も受けていません。医師も「3食、規則正しく、バランス良く」などとあいまいな説明がほとんどです。体調不良の患者さんに食事内容を聞くことさえしない医師もいるかもしれません。栄養指導は栄養士の仕事だと思っているので、自分ではしませんし、多くの医師は教育を受けていないのでできません。

栄養士も数十年前から変わっていない、古い教育のままで、適切な指導ができているとは思えません。

テレビや雑誌はスポンサーに配慮した内容しか提供しません。

では、誰が食育を担えばいいのでしょうか?非常に難しい問題です。

 

厚労省が示す食事バランスガイドを見ると、やはり最初に主食が来ています。このように示してしまうと最も重要な栄養が主食、つまり糖質(炭水化物)だと思っても無理はありません。しかし、糖質は人間の体を構成するものの材料にはなりません。ただのエネルギーです。車を作り上げるのにガソリンばかり持って来ても、いつまでたっても車は完成しません。

部品が必要なのは当たり前です。その部品を供給する栄養素はタンパク質と脂質なのですから、まずはそれを必要十分に摂ることを、最も重要なメッセージとして示すべきです。

高齢になると食が細くなる人も多い中で、まず食べるべきものはタンパク質と脂質であり、それに野菜が加わり、お腹が空いていれば、そこにご飯を加える程度で良いと思います。(ご飯はもちろん無くて良いのですが)

そのようにすれば、自ずと糖質が制限されますし、たまにしかタンパク質を摂取しないということがなくなります。変に「バランス」や「主食」ということを言っていることで、逆に必要なものが摂れていないと、いうことをまずは回避すべきでしょう。

具体的に優先順位として

1.タンパク質と脂質

2.野菜

3.その他

さらに具体的にタンパク質と言ってもわからないので、最低限1日に肉200g、魚一切れ(1匹)、卵3個。それらを調理するときにバターかココナッツオイル、オリーブオイルをたっぷり使うこと。野菜にもオリーブオイルをかけたり、調理にも積極的にオイルを使うこと。これを実践するだけで十分でしょう。後はお腹に余裕があれば他のものを食べるということを意識すれば良いのです。本当はもっと細かいことを考えなければならないかもしれませんが、まずは優先すべきことはタンパク質と脂質を減らさないことです。

このようなことをメッセージとして、テレビや雑誌などや地域の会合、いたるところで伝えることが必要です。「バランスの良い」食事というのは誰にもわからないメッセージです。「主食」という言葉も廃止すべきです。

まずは高齢者では、必要な栄養素であるタンパク質と脂質を必ず十分に摂る。これを実践しないと益々動けない高齢者が増えてしまいます。私はこのようなメッセージを常に患者さんに伝えていますが体調が悪くなってからでは遅すぎます。高齢者が目にするすべての媒体を通じて「食育」をすべきです。医療機関に頼る前に、元気なうちからやらなければなりません。医師や栄養士の仕事ではなく、やはり、高齢者への食育は厚労省が積極的にすべき仕事です。農家や食品産業への配慮はもう止めて、真実を伝えるべきです。

しかし、それよりも自分が学ぶことが本当は必要です。そう考えると、親世代が勉強して、子供の食育をする、学校でも食育をする。時代遅れの給食も止める。これを続ければ、年をとってからも継続される知識になるはずです。やはり「食育」は親の仕事です。

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