プロトンポンプ阻害薬(PPI)と膝関節置換術のリスク

変形性関節症では、痛みの緩和のために鎮痛薬のNSAIDsを飲んでいることが多く、その副作用予防のために、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を飲んでいる人は多いでしょう。また、変形性関節症も胃食道逆流(逆流性食道炎)はどちらも糖質過剰症候群ですので、変形性関節症ではそれでPPIを飲んでいることも多いでしょう。PPIはマグネシウムの低下を起こすので、変形性関節症の進行に影響を与える可能性があります。

ある研究では、血中のマグネシウム濃度が一番低い群と比較して一番高い群では、レントゲン上で膝の変形性関節症の可能性が0.72倍と低くなりました。(ここ参照)

今回の研究では、イギリスのHealth Improvement Networkデータベースに登録されている変形性膝関節症患者(50歳以上)を対象に、PPIまたはH2ブロッカー(制酸薬)を開始した患者で5年間の膝関節置換術のリスクを比較しました。(図は原文より)

 

 

上の図はPPIの5種類の薬とH2ブロッカーとの膝関節置換術の累積発生率を比較したものです。

オメプラゾール使用はH2ブロッカーと比較して、膝関節置換術リスクが1.21倍になりました。パントプラゾールは1.38倍でした。ランソプラゾールまたはラベプラゾール、エソメプラゾールは膝関節置換術リスクに明らかな差は認められませんでした。

動物実験上では、関節内硫酸マグネシウムが軟骨細胞のアポトーシスを減らすことで変形性関節症の発症を抑えることがわかっていますし、6か月間食事中のマグネシウムを制限すると、ラットの関節軟骨軟骨細胞密度と成長板軟骨細胞柱形成の両方が有意に減少することが示されています。

マグネシウムの十分な摂取は重要ですが、それよりもPPIを飲まないことの方がもっと大切です。

「Proton pump inhibitor therapy and risk of knee replacement surgery: a general population-based cohort study」

「プロトンポンプ阻害薬療法と膝関節置換術のリスク:一般人口ベースのコホート研究」(原文はここ

One thought on “プロトンポンプ阻害薬(PPI)と膝関節置換術のリスク

  1. 「変形性関節症」
    同様に糖質過剰症候群の
    胃食道逆流(逆流性食道炎)による
    プロトンポンプ阻害薬(PPI)処方で
    めでたく膝関節置換術へ移行、
    等と悪い想像してしまいました。

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