糖質制限食 対 ちょっと糖質控えめ 12か月の戦い

2型糖尿病または前糖尿病の人を対象に、ちゃんと糖質制限をした場合とちょっとだけ糖質を控えた場合でどのような違いがあるかを調べた研究があります。

糖質制限群は1日糖質を20~50gに抑えるように指導されました。(最終的には12か月後には少し増えてしまいましたが)

ちょっとだけ糖質控えめの食事(中等度糖質摂取群)は摂取カロリーの45~50%を糖質で摂るようにしました。

そして12カ月に及ぶ研究を始めました。

その結果は次のようです。

まずは摂取エネルギーですが、若干のカロリー制限になってしまっているのは、ツッコミが入りそうですが、両群で差はありません。

低糖質食(糖質制限群)の栄養バランスです。6か月では糖質がしっかり制限されていますが、12か月ではだらけてしまったのか、70g以上になってしまっています。脂質をもう少し増やせば、エネルギー量も適切になったでしょう。

中等度糖質摂取群での栄養バランスです。逆に45%の糖質を摂るなら、もう少し糖質量が多くても良かったのではないでしょうか?

しかし、両群とも本当にベースラインの糖質量はこんなに少ないのでしょうか?糖質200g以下というのはちょっと少ない気がします。しかし、対象となっている人たちはすでに糖尿病か予備軍なので、栄養指導が入っていて、全体のエネルギー量を制限している状態で始めたのかもしれません。摂取エネルギーが両群とも2000kcal前後なので、普通のアメリカ人のエネルギーよりもかなり少なめです。

BMIと体重です。両群とも低下していますが、糖質制限の方が有意に低下しています。

HbA1cも糖質制限の方が低下が大きいです。

空腹時インスリンやインスリン抵抗性の指標となるHOMA-IRはそれほど大きな変化はありません。

収縮期血圧は有意差はありませんが、若干糖質制限群の方が上がっているようにも見えます。CRPは両群とも低下しています。

LDLコレステロールは糖質制限群では糖質摂取量に逆相関しているようです。糖質制限ではときおり認められるLDLコレステロール値の上昇がこの研究でも認められました。ただ、全く慌てる必要はありません。HDLコレステロールは両群とも徐々に増加。糖質制限群では理想的に50を超えてきています。中等度糖質摂取群は50以下です。

中性脂肪は糖質制限群では、LDLコレステロール値と同じように、糖質摂取量を反映しているような動きです。これも理想的に100以下です。中等度糖質摂取群では12か月後ではベースラインよりも高くなっています。

そして、一番心血管疾患のリスクを反映する、中性脂肪/HDLコレステロール比は糖質制限群で低下し、2以下と非常に良い値となっています。一方、中等度糖質摂取群では6か月で少し低下しましたが、最終的には3.6と非常に良くない値です。

さらに、良いことに、糖質制限群では、糖尿病の薬物使用の大幅な減少を認めました。ベースラインでスルホニル尿素またはDPP-4阻害剤を服用していた参加者のうち、糖質制限群の10人中6人がこれらの薬物療法を中止したのです。中等度糖質摂取群では中止できたのは6人中ゼロでした。逆に中等度糖質摂取群の2人の参加者がこれらの薬物療法を開始してしまいました。

ベースラインでメトホルミンを使用していた22人の参加者のうち、糖質制限群の10人中3人が使用を中止したのですが、中等度糖質摂取群で中止したのは12人中ゼロでした。ただ、糖質制限群の1人がメトホルミンの用量を増加させ、中等度糖質摂取群では2人がメトホルミンの用量を減少させました。

体重面でも、HbA1cでも、心血管疾患のリスクの上でも、薬物療法の薬の中止の面でも、糖質制限の方がかなり有効だということがわかりました。当然の結果ですが。

 

「Twelve-month outcomes of a randomized trial of a moderate-carbohydrate versus very low-carbohydrate diet in overweight adults with type 2 diabetes mellitus or prediabetes」

「2型糖尿病または前糖尿病の過体重の成人における中程度の炭水化物の食事対非常に低炭水化物の食事の無作為化試験の12ヶ月の結果」(原文はここ

 

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