以前の記事で、野球のソフトバンクの選手が糖質制限をしているときに、卵は白身だけを食べていました。しかし、最近の研究では、白身だけよりも全卵を食べた方が筋肉量は増加するようです。
平均年齢21歳の若年男性の運動回復時に、白身または全卵を消費した後の筋肉タンパク質代謝反応を比較しました。
下の図はグレーの部分で運動を行い、点線の部分で卵を食べています。タンパク質量として白身だけの卵も、全卵も18gです。グラフの白丸の方が白身だけ、黒丸が全卵です。
Aは筋肉の素となるアミノ酸のロイシン、Bはグルコース、Cはインスリン、Dは中性脂肪のそれぞれの血中濃度を表しています。(図は原文より)
当然、ロイシンは上昇しています。そして、白身も全卵も差はありません。インスリンは分泌され上昇していますが、グルコースの変化はありません。グルコースもインスリンも差はなく、中性脂肪だけ全卵で上昇し、白身との差が認められました。それは全卵には17gの脂肪を含んでおり、白身には脂肪はゼロだからです。
そして下の図は、筋原線維のタンパク質の合成速度を表しています。左端のグレーが絶食時のグラフで、右の白いのが白身、黒いのが全卵摂取後の合成速度です。
明らかに白身も全卵も絶食時よりも合成速度は上昇しています。白身と全卵を比較するとこれも明らかに全卵の方が上昇度が高くなっています。白身だけでは絶食時よりも1.9倍前後、全卵では絶食時の2.7倍前後です。
全卵を食べた方が効果が高いということがわかります。タンパク質の量はどちらも同じですが、結果は大きく違います。つまり、重要なのはタンパク質の量だけではないということです。黄身の部分に含まれる、脂肪やその他の栄養素が一緒になって初めて大きな効果を発揮するのです。白身だけではもったいないのです。
必要だと思われる成分を抽出すればするほど、実は効果が低下するように感じます。食材はそのもの全体で初めて栄養です。その食材に含まれる栄養素の○○が健康に良いからと、それだけを抽出したサプリメントは、実はほとんど体に効果がなかったなんてことはよくある話です。
卵も野菜も全部丸ごと食べましょう。
「Consumption of whole eggs promotes greater stimulation of postexercise muscle protein synthesis than consumption of isonitrogenous amounts of egg whites in young men」
「卵全体の消費は、若年男性の等窒素量の卵白の消費よりも、運動後の筋肉タンパク質合成のより大きな刺激を促進する」(原文はここ)
毎日,ブログ拝見させていただいております。先生の御著書も,発売前から予約して,熟読させていただきました。一応,糖質制限医療推進協会の認定医療機関です(笑)。
必要だと思われる成分を抽出すればするほど、実は効果が低下するように感じます。
新見先生の漢方セミナーを聞いたときにも思ったのですが,先生のこの言葉は,本質を突いていると思いました。最近,もやもやしていた気分がすっきりした感じです。
今後とも,よろしくお願いいたします。
毎日,拝読させて頂きます。
小田さん、コメントありがとうございます。
また、拙著のご購入ありがとうございます。
漢方は一つ一つの成分は非常に微量なのに、いろいろなものが合わさると非常に効果を表します。
エキス剤よりも生薬の方が良いと思いますし、栄養成分にも同じことが言えるのだと思っています。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。