オメガ3脂肪酸は炎症を抑え、様々な健康面での利益が考えられています。実際に日本からの報告で、魚をたくさん食べた方が冠動脈疾患のリスクを低下させるというものがあります。
「Intake of fish and n3 fatty acids and risk of coronary heart disease among Japanese: the Japan Public Health Center-Based (JPHC) Study Cohort I.」
「魚類およびn3脂肪酸の摂取と冠状動脈性心疾患のリスク」(原文はここ)
下の図はAが魚の消費量とリスクの関係、Bはオメガ3の摂取量を見た場合のリスクの関連性で、実線が冠動脈疾患で点線は非致死的な冠動脈イベントを表しています。
Q1は週に1回程度食べる、または20g/日程度の魚の消費であり、Q5は週に8回程度、または180g/日ほどの消費量となります。オメガ3(n3)脂肪酸で見ると、Q1は0.3g/日、Q5は2.1g/日となります。(図は原文より)
致死的な冠動脈イベントは低下させませんでしたが、明らかに非致死的な冠動脈イベントは半分以下になりました。
今回、オメガ3のサプリメントと心血管疾患のリスクの関連を調べた研究が発表されました。
魚の消費のように良い結果が出ることを期待したいですが、残念ながら全く良い結果は得られませんでした。
下の図はオメガ3と主要な心血管イベントとの関連です。1.0に近いとほとんどコントロールと差がないことを表していると思っていただければいいですが、実際にほとんどのグラフが1.0付近に集まっています。(図は原文より)
もし、心血管疾患のためにオメガ3のサプリメントを飲んでいるとしたら、それはお金の無駄のようです。健康のためにはサプリメントではなく、「魚」そのものを食べましょう。魚に含まれている有益な成分だけを抽出して、摂取しても有益ではない可能性が高くなります。食材そのもの全体を食べるから意味があるのです。
「Associations of Omega-3 Fatty Acid Supplement Use With Cardiovascular Disease Risks Meta-analysis of 10 Trials Involving 77 917 Individuals」
「心血管疾患リスクとオメガ3脂肪酸サプリメントの使用の関連 77,917人の10の試験のメタアナリシス」(原文はここ)
要約
重要性:現在のガイドラインでは、冠動脈性心疾患の予防および冠動脈性心疾患患者の主要な血管イベントのために、魚由来のオメガ3脂肪酸サプリメントの使用を主張していますが、オメガ3脂肪酸の大規模な試験では相反する結果が生じています。
目的:オメガ3脂肪酸サプリメントの致命的および非致死的冠状動脈性心疾患や全研究集団および事前に定められたサブグループにおける主要な血管イベントのリスクとの関連を評価する大規模臨床試験全般のメタアナリシスを実施する。
結果:10の試験に参加した77,917人の高リスクの人のうち、47,803人(61.4%)が男性であり、入院時の平均年齢は64.0歳であった。試験は平均して4.4年間続いた。治療とアウトカムとの関連付けは、6,273の冠動脈性心疾患イベント(2,695人の冠動脈性心疾患での死亡、および2,276の非致死的心筋梗塞)と、12,001の主要な血管イベントで評価した。オメガ3脂肪酸サプリメント(エイコサペンタエン酸としての摂取量、226-1,800mg / 日)に対する無作為化は、冠動脈性心疾患の死亡率、非致死的心筋梗塞またはどんな冠動脈性心疾患イベントとも有意な関連がなかった。オメガ3脂肪酸サプリメントの無作為化は、全体的にも以前の冠状動脈性心疾患を有する人、糖尿病、高い脂質レベル、またはスタチン使用などのサブグループでも、主要な心血管イベントと有意な関連はなかった。
結論:このメタアナリシスは、オメガ3脂肪酸が致死的または非致死的な冠動脈性心疾患または主要な血管イベントと有意な関連性を持たないことを示した。冠状動脈性心疾患の病歴を持つ人々にこのようなサプリメントを使用するための現在の推奨事項については、支持しない。