先日の記事「ラカント(エリスリトール)と心血管疾患リスク」で取り上げた、ラカントの主成分であるエリスリトールについてコメントをいただきました。
「エリスリトール30グラムで甘みをつけた飲み物を飲んだ後で血漿中の濃度を測定したところ、全員のエリスリトールレベルが、血栓形成リスクが増加するとされる閾値濃度以上に上昇し、2〜3日間持続することがわかった。」との事ですが、ほとんど代謝されないエリスリトールでなぜこのような影響が出るのでしょうか。代謝されないと言う事は吸収されない、または腸で吸収してもそのまま排泄されると言う事だと思いますが、まず、この場合は後者と言う事で良いのでしょうか。①腸で吸収されるが代謝されないのであれば腸管から門脈経由で肝臓に運ばれて直ちに排泄されないのでしょうか。
②代謝されないと言う事はエリスリトールがそのままの形で血中にあるだけでこのような影響があると言う研究結果なのでしょうか。
③しかも一旦吸収されると排泄するのに数日間を要すると言う事でしょうか。
どれも私の理解の範疇を超えていて理解できません。簡単に解説していただけるとありがたいです。
全てにお答えすることはできないかもしれませんが、エリスリトールの吸収、排泄、代謝について書きたいと思います。(図はここ、ここより)
まずエリスリトールはどれほど吸収されるのか?エリスリトールは摂取しても血糖値に影響は与えませんが、吸収はされます。(ちなみにエリスリトールのGI(グリセミック指数)はゼロです。)ある研究では、摂取したエリスリトールの量に比例して、血中と尿のエリスリトールレベルが2時間以内に増加し、24時間後に総尿中排泄量が摂取エリスリトールの 78% に達した、としています。ということは少なくとも80%以上は吸収されると思われます。
下の図は体重1kgあたり1gのエリスリトールを摂取したときの血糖値の変動です。全く変化していません。
下の図のようにインスリン値も変動しません。
しかし、下の図のように確かに血中濃度は増加します。
尿中排泄は24時間後でもベースラインよりは多いので、24時間以上体内に留まっていると思われます。エリスリトールの腎クリアランスはクレアチニンの約半分であり、腎臓によるエリスリトールの尿細管再吸収を示しています。ということはもしかしたら、人体はエリスリトールを悪いものではなく有用なものだと判断しているのかもしれません。わかりません。
エリスリトールは消化管によって最大90%まで急速に吸収され、残りの10%が結腸で発酵されるか、または便を介して変化せずに排泄されるかどうかは、ヒトではまだ不明です。動物では腸内細菌が代謝するようです。
下の図は摂取量の違いによる血中濃度を示しています。
ほとんど用量依存的に血中濃度も高まります。50gも一気に摂取すると、ピークが遅れるようですが、それでも1時間以内にピークとなり、一時的には通常の血中濃度の100倍以上になるようです。
では吸収されたエリスリトールの代謝はどうなのでしょうか?エリスリトールは体内で全く代謝を受けないのではないと考えられています。血中のエリスリトールの5~10%が酸化されてエリスロースになり、さらにエリスロン酸になる可能性があるのです。下の図はエリスリトール摂取後のエリスロン酸の血中濃度です。
エリスリトール摂取量の用量依存的にエリスロン酸が増加しています。しかし、この研究ではエリスロン酸はエリスリトールの1%以下です。代謝されることは間違いないと思われますが、その割合はまだはっきりしていません。エリスロン酸がさらに代謝されるか、尿中に直接排泄されるかは不明です。
人体におけるエリスロン酸の役割についてはほとんどわかっていません。エリスロン酸は酸化ストレス生成物である可能性もありますが、酸化ストレスを増加させる状態でエリスロン酸が多いのかもしれません。それは前回にも書いたように、エリスリトールは体内でペントースリン酸経路から生成されているからです。
エリスリトールそのものは体内で活性が無いと思われますが、エリスロン酸は活性があるかもしれません。まだわかりません。
いずれにしても大量に摂取しなければ、大きな問題は無いと考えています。答えになったでしょうか?
解説ありがとうございます。
私の理解をまとめると
①8割程度吸収されるが血糖値には影響しない。
②尿細管で再吸収される為、長時間体内にとどまる。
③吸収された量の数%がエリスロース→エリスロン酸に代謝されるが人体での役割は不明。
となりますが
①についてはブドウ糖に代謝されない為ブドウ糖の濃度を測定している血糖値に影響しないのは当然と言えば当然です。果糖が血糖値に直接影響しないのと同じですね。
②については再吸収されると言う事は人体に必要な希少物質と言う判断がされたものと思われますが、今さら気づいたのですが、糖も再吸収されると言う事実は人類の歴史的に糖は希少物質であったと言う事を表していると言えるのでしょう。
③が関与しているかどうかも含め、エリスリトールが血栓形成にどのようなメカニズムで関与しているのか今後の研究に委ねるしかなさそうですね。
私はラカントを使ったとしても年に1、2回程度なので問題なさそうです。ありがとうございました。
糖質制限続けていると、今回の
ラカントのように様々な気になる
付帯事項もでてきますが、
きっと
「1日3食バランスの良い食事」
の方々に比して、
糖質制限者はラカント摂取
程度では揺るがない
健康アドバンテージが有ると
信じております。
清水先生、面白い論文を知りました。
→ https://www.youtube.com/watch?v=8E493U8sMRY
糖質が多くても、脂質エネルギー比が高ければ血糖値上昇が抑制されるというものです。
これって、糖質制限者には有難い研究ではないでしょうか?
但し、被験者の数が極端に少ないのがネックですが・・・。
ぺーすけさん、コメントありがとうございます。
糖質量で血糖値が決まっているようにしか見えませんし、そもそも糖質制限者はこのようなものを食べません。