当たり前ですが肥満は様々な疾患のリスクを増加させます。肥満というよりは肥満の原因の糖質過剰摂取が様々な疾患のリスクを増加させているのが本当のところです。
今回の研究では日本で健康診断を受診した65歳の10,852人を対象に、肥満と三大合併症である糖尿病、高血圧、脂質異常症との関係を調べました。
低体重、標準体重、および肥満 (クラス I ~ III)に分けると、様々なパラメータはLDLコレステロール以外は有意に異なっており、腹囲、血圧、クレアチニン濃度、AST、ALT、γ-GTP、中性脂肪、空腹時血糖値、 HbA1cは、肥満とともに増加しましたが、HDLコレステロールは肥満とともに減少しました。逆に考えれば、LDLコレステロールは関係していないということですね。今回の研究では脂質異常症について2つの定義が採用されています。中性脂肪が150mg/dL以上、またはHDLコレステロールが40mg/dL未満、またはLDL-C濃度が140mg/dL以上の場合(脂質異常症(TG/HDL/LDL))と、中性脂肪が150 mg/dL以上またはHDLコレステロールが40 mg/dL未満の場合 (脂質異常症 (TG/HDL)) です。(図は原文より)
上の図はそれぞれの肥満度の有病率です。左から糖尿病、高血圧、脂質異常症(LDLコレステロールあり)、脂質異常症(LDLコレステロールなし)です。明らかに、肥満が進むにつれてそれぞれの有病率が増加しています。点線の数値は全体の有病率です。
上の図は男女別です。閉経後では女性のLDLコレステロールは上昇するので、どうしてもLDLコレステロールを含めた脂質異常症の有病率は女性で高くなります。しかし、LDLコレステロールなしの脂質異常症は女性の方が男性の半分以下です。閉経後の女性は無駄にスタチンが投与されていそうですね。
上の図は肥満のカテゴリー別のそれぞれの疾患が起こる可能性です。当然BMI35以上の重度の肥満(肥満クラス III) が最も高く、糖尿病でおよそ13倍、高血圧は19倍、脂質異常症(LDLあり)では2.6倍、脂質異常症(LDLなし)では3.7倍です。
上の図は男女別です。全体とほとんど同じですが、女性の脂質異常症がLDLコレステロールありだと、肥満クラス IIIでは有意差が無くなってしまいます。LDLコレステロールは脂質異常症に含めない方が良いですね。
肥満は様々な疾患のリスクを増加させますが、最初に書いたように、肥満そのものがリスク増加の原因というより、肥満を起こす食事、つまり糖質過剰摂取が様々な疾患の原因です。だから、食事を変えない限り疾患のリスクは高くなります。
肥満、そして糖尿病、高血圧、中性脂肪増加とHDLコレステロール減少を示す脂質異常症は糖質過剰症候群です。糖質制限により予防できると考えます。
「Obesity and risk for its comorbidities diabetes, hypertension, and dyslipidemia in Japanese individuals aged 65 years」
「65歳の日本人における肥満とその合併症である糖尿病、高血圧、脂質異常症のリスク」(原文はここ)