糖尿病の薬を飲んでも、ほとんど死亡率は低下しないかもしれない

糖尿病の薬はもちろん血糖値のコントロールに使用されますが、その重要なアウトカムである死亡率に関しては、あまり期待できないようです。

特にDPP4阻害薬と言われる薬は、プラセボと比較して死亡率を低下させないようです。SGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は死亡率を低下させるようですが非常に微妙です。

相対的なリスクを見るとコントロール群、つまり薬を投与されていない人と比較すると、SGLT-2阻害薬は、死亡リスクが20%低下し、GLP-1受容体作動薬は死亡リスクを18%減少させたという結果でした。DPP4阻害薬に関しては全く死亡率を低下させませんでした。

しかし、これを絶対リスクで見ると、プラセボのコントロール群と比較して、SGLT-2阻害薬は1%、GLP-1受容体作動薬では0.6%の低下に過ぎません。つまりNNTで見ればSGLT-2阻害薬はNNT=100、GLP-1受容体作動薬ではNNT=167ということになります。(NNTとは治療必要数で、一人の効果を得るのに、何人に治療をすればいいかという数字です。つまり、NNT=100というのは100人に薬を投与してやっと一人に効果が得られるということです。)

めちゃくちゃ微妙な数字です。というか効果があるとは思えません。

また、2型糖尿病は虚血性心疾患や脳卒中のリスクが高いと言われていますが、そのリスクは低下するかというと、これもまた微妙です。心血管疾患での死亡率はコントロールと比べると、相対的にはSGLT-2阻害薬は21%、GLP-1受容体作動薬では15%の低下ですが、絶対リスクはそれぞれ0.8%、0.5%の低下しかありません。ここでもDPP4阻害薬に関しては全く死亡率を低下させませんでした。

全ての心筋梗塞の発生は、SGLT-2阻害薬で相対リスクが14%低下、絶対リスクは0.6%の低下です。他の薬はリスク低下はありませんでした。不安定狭心症のリスクを低下させた薬もありませんでした。

また、コントロールと比べて脳卒中の減少に関連した薬もありませんでした。非致死的な脳卒中に関してはGLP-1受容体作動薬で相対リスクが13%低下、絶対リスクは0.3%の低下です。たったそれだけです。

つまり、糖尿病の方は0.5%~1%の死亡や心血管疾患のリスクを減らすために薬を飲んでいるのです。その効果の恩恵を受けるのは100人に1人以下です。

それでは、安全性はどうなのか?糖尿病の薬で最も起こる副作用は低血糖です。その低血糖は、DPP4阻害薬で相対リスクが29%増加、絶対リスクは4.9%の増加、GLP-1受容体作動薬で相対リスクが44%増加、絶対リスクは7.4%の増加、SGLT-2阻害薬で相対リスクが24%増加、絶対リスクは4.0%の増加、と随分思ったよりも低血糖の発生は多いのかもしれません。重度の低血糖のリスク増加はどの薬でもありませんでした。

その他ではSGLT-2阻害薬で生殖器感染症が絶対リスク6.0%の増加、DPP4阻害薬で急性膵炎の絶対リスクが0.1%の増加でした。急性膵炎は元々少ないので、これでも有意差が出ています。問題となったSGLT-2阻害薬での下肢切断率の増加は今回の分析では有意差はありませんでした。

いずれにしても、糖尿病の薬を飲むメリットは非常に少ないのかもしれません。もちろん糖質制限をして上記のリスクがどのようになるかはわかりません。しかし、患者さんは血糖値が良くなることを目的としているわけではなく、その薬による効果が得られ、その他の疾患や死亡するリスクが低下することを望んでいると思います。その点からいうと、ほとんど得られるメリットはないということになります。

わざわざ薬を飲まなくても、食事でコントロールできるはずです。糖質制限を避けるメリットはありません。

 

「Association Between Use of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors, Glucagon-like Peptide 1 Agonists, and Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitors With All-Cause Mortality in Patients With Type 2 Diabetes」

「2型糖尿病患者におけるSGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬およびDPP4阻害薬の使用と全原因死亡との関連」(原文はここ

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