以前の記事「HDLコレステロールは高ければ良いってもんじゃない? その4」などで書いたように、HDLの質がアテロームからの保護の重要な因子であると考えられています。その質を左右する一つがこれまでも何度も登場しているapoCⅢです。
非常に若いころに心筋梗塞を起こす方は、どのような特徴があるのでしょうか?通常若いころに心筋梗塞を起こすのは家族性高コレステロール血症(FH)の場合が多いのですが、今回の研究では、FHに限定していません。35歳以下で心筋梗塞を経験した人のHDLの特徴を研究しています。
心筋梗塞の患者のHDLは、apoAIを減少させ、apoCIIIを有意に上昇させ、apoAI / apoCIII比は、心筋梗塞群で0.24であり、対照群では4.88でした。
また対照群と比較して心筋梗塞群のHDLの酸化電位は2.5倍も上昇していました。つまり、抗酸化作用がその分低下していると考えられます。
apoCⅢを含むHDLは、HDLでありながら機能不全を起こし、心血管疾患のリスクを上げてしまうと思われます。apoAIはHDLを構成しているアポリポタンパク質です。HDLがもし増加していても、それを上回って、apoCⅢが増加していると役に立たないHDLばかりが増加している可能性があります。
apoAI / apoCIII比がいくつ以上あると良いのかはわかりませんが、今回の研究での対照群の4.88は一つの目安かもしれません。
糖質過剰摂取はapoCIIIを増加させてしまいます。若いころから糖質を制限することは重要なことだと思います。
「Qualitative characteristics of HDL in young patients of an acute myocardial infarction」
「急性心筋梗塞の若年患者におけるHDLの定性的特性」(原文はここ)