糖質制限で倦怠感やエネルギー切れを感じる場合

糖質制限をすると、全身倦怠、筋力低下、無気力、エネルギー切れのような状態になることがあると言われています。それを根拠に糖質制限反対派は糖質制限を「危険だ!」と言います。「糖質を摂らないから低血糖を起こすんだ!」という方もいます。

さてこのような症状はどのようにして起きるのでしょうか?

これまでも、このような症状に江部先生のブログでは何度もお答えになってきました。そのほとんどは間違った糖質制限であり、「糖質制限+カロリー制限」をしてしまって、エネルギー不足になっているものです。糖質過剰摂取の食事ではエネルギーの60%を糖質で得てきたわけですから、そのまま糖質をカットしてしまうと、エネルギー摂取量が60%も低下することになってしまいます。当然、通常の生活だけでも足りないエネルギー摂取量となってしまいます。

これまでほとんどの人が「脂肪摂取=不健康、肥満」などと間違った洗脳をされているので、糖質制限をしても積極的に脂質を摂取しないことがあります。糖質制限をする場合は、これまでの糖質の分を脂質とタンパク質、特に良質な脂質で補わなければなりません。

それ以外の不調をきたす原因は、ごく初期に発生する場合であれば、急な糖質制限で体が慣れないことがあるかもしれません。薬物中毒の人が、薬を抜くときに禁断症状が現れるというのを聞いたことがあるかもしれませんが、糖質は非常に強い依存性を持っていると考えられていますので、糖質中毒の人は最初非常につらく感じ、倦怠感やエネルギー不足を感じるかもしれません。しかし、これは1~2週間で抜け出せることが多いと思います。

このような原因がほとんどだと思いますが、糖質制限をしていて、最初は非常に調子が良かったのに、しばらくしたら倦怠感やエネルギー切れのような感じが出てきたという方もいます。聞いてみると上に書いたようなカロリー制限はしておらず、しっかりと1日のエネルギー量は確保しています。このような場合どのようなことが考えられるのでしょう?

私はこの原因を塩分制限だと考えています。脂質も悪玉と考えられていたように、塩分も悪玉と考えている方も多くいます。しかし、私は糖質過剰摂取状態での塩分の過剰摂取は問題になることもあると思っていますが、糖質制限をしている場合は積極的に塩分を摂るべきでだと考えています。(仮説ですので、科学的なエビデンスはまだありません。)

塩分の成分の一つはナトリウムですが、ナトリウムは人間の体に必須のもので、非常に重要なミネラルです。一部の人は塩分の摂り過ぎに反応して高血圧を示すことがありますが、ほとんどの人は高血圧には関係していないと考えられています。(「塩分を制限することによる血圧の低下は、たった1!」など参照)

糖質過剰摂取をしていると、インスリンも過剰に分泌されます。このインスリンは腎臓にナトリウムを再吸収するように働きかけるので、糖質過剰摂取の場合はナトリウムとともに、水分も体に保持されます。糖質制限をしてインスリンが低下すると、腎臓でのナトリウムの再吸収が減り、ナトリウムと水分が一緒におしっこに出ます。糖質制限を始めたばかりのときに、人によって急激に体重減少が起きることがありますが、その初期の体重減少の多くの部分を占めているのがこの水分の排出だと考えられています。

血中のナトリウムの濃度は見事なまでに狭い範囲に維持されています。(「ほんのわずかな低ナトリウム血症でも問題があるかもしれない」参照)それを行っているのが腎臓と副腎です。

塩分を過剰に摂取しても、多すぎれば腎臓はナトリウムをおしっこに排出するだけです。腎臓は十分な余裕を持っているので、ちょっとやそっとの過剰な塩分は排出できる能力を持っています。逆に自然に排出した方が再吸収するよりも腎臓の負担が少ないとも考えられます。塩分制限でナトリウムが少なくなると、副腎はアルドステロンというホルモンをはじめ、ストレスホルモンと言われているコルチゾールやアドレナリン、ノルアドレナリンを出して、ナトリウムを再吸収しようとします。

つまり、糖質制限でインスリンの作用が低下し、ナトリウムが排出されやすくなったうえに、さらに食事でのナトリウム摂取量が減ってしまうと、副腎が忙しく働かなければならなくなります。ケトン食での研究で、ケトン食を始めるとコルチゾールの分泌が大きく増加したというものがあります。

糖質制限をはじめてそのまま塩分も制限していると、副腎の負担が増し、副腎機能の障害(すなわち、コルチゾールやアドレナリンなどのホルモン産生の低下)、いわゆる副腎疲労の状態を起こす可能性があるのです。

糖質制限を始めた時にはまだ副腎が元気であり、非常に調子が良くなりますが、その裏で塩分制限が行われていると、段々副腎が疲れてきて体の調子が低下してきます。

以前の記事でも書いたように、最近の研究ではナトリウムの排泄量(摂取量)と心血管疾患や死亡率の間の関連はU字のカーブを描いています。(図は原文より)

上の図は24時間の尿中のナトリウム排泄量と心血管疾患による死亡、脳卒中、心筋梗塞、うっ血性心不全での入院のリスクを表しています。横軸が1日の尿中のナトリウム排泄量ですが、ナトリウムは摂取量と排泄量がほぼ同じ量と考えられるています。そうすると5g前後が最低のリスクです。5gのナトリウムは、ナトリウム量(g)× 2.54  = 食塩相当量(g)ですので12.7gの塩分です。通常の食事でもこれぐらいの塩分が最も心血管疾患のリスクが低いのですから、糖質制限でナトリウムの排出が増えているのであれば、もっと多く摂取しても良いことになります。

我々生物は海の中から進化してきました。ナトリウムに対処する術は十分持っているはずです。「減塩」「塩分控えめ」というキーワードは「カロリー控えめ」「低脂肪」などと同様に、食品業界が「ヘルシー」に見えるような偽装をして、様々なものを売りつける手段でしかありません。

人間の生理学的な機能を考えれば、糖質制限で塩分制限はしてはいけないと思います。糖質制限をはじめて、倦怠感やエネルギー切れを感じた時には、一度塩分の摂取量を見直して見てください。

ただ、一部の人は塩分に反応して血圧が上がる人もいるようなので、既に高血圧がある方は血圧を見ながら、少しずつ塩分を増やした方がいいと思います。

「Urinary sodium and potassium excretion and risk of cardiovascular events」

「尿中のナトリウムとカリウム排泄と心血管イベントのリスク」(原文はここ

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コメント

  1. ねけ より:

    うーむ。
    これもビンゴかも知れないです^^;

    エネルギー的には足りているはずなのに、空腹と言うよりもガス欠のような状態を感じることがあります。もちろんグリコーゲンが枯渇するような状況ではなくて、です。

    長らく習慣として減塩というより薄味好きなので、その影響が出てきたのかも知れませんね。数値的にはナトリウム不足と言うことは無いはずですが。
    ちょっと意識的に「ぬちまーす」増やしてしばらく確認してみたいと思います。

    • Dr.Shimizu より:

      ねけさん、コメントありがとうございます。

      塩分を制限しても通常は血液検査でナトリウムが低下することはありません。

      意外と摂取エネルギー不足と片付けられていることの多くが、塩分不足ではないかと思っています。

  2. ねけ より:

    甲状腺機能低下についての疑い(続報)なんですが^^;

    私は昔、海藻の日常的食べ過ぎ(だったらしい)によって甲状腺を痛めた前科があります。
    その時は海藻摂取を控えることで症状も検査値も改善しました。

    糖質制限を始めて1年半経過しておりますが、最初の3ヶ月間には頭痛やひどい便秘、1年経過あたりまでは色素性痒疹と思われる症状やエネルギー不足を感じるなど一通り(?)経験してきました。

    ここ数ヶ月ほど、改善されていた便通がまた便秘気味となり、睡眠の質が以前のように悪化し浅く短くなり、さらに先生にもご相談しましたが、ひどい声がれや起立性貧血のようなの立ちくらみが改善されません。

    で、やはり食生活であろうと思い、ちょっと調べてみました。

    私は一日二食で、この1年はほぼ毎日確実に、午前中に

    ・さば水煮缶(190g)
    ・200g前後のキャベツを中心としたサラダ
    ・少量のすりごま
    ・クルミ(30g)
    ・オリーブオイル(20-25g)
    ・たまにアーモンド一握り
    ・塩(2gぐらい?)

    と、決まっています。

    夜は不定ですが、比較的頻回だと思われるのが

    ・ブロッコリーなどやはりアブラナ科の野菜
    ・いわし(めざし)
    ・卵
    ・納豆(一パック。現在はほぼ毎日)
    ・おからパウダーを使ったパン的なもの(これもほぼ毎日)
    ・当然、肉(笑)

    です。食材のレパートリーは結構限られていると自覚しています。

    で、甲状腺機能低下症に良くなさそうな情報のある、アブラナ科の野菜、大豆製品の摂取は極めて日常的で、ほとんど主力食材です。

    調べた限りでは各々の食材はいわゆる許容範囲のはずですが、さばや鰯、卵のヨウ素累積と、アブラナ科野菜のゴイトロゲン、グルコシノレートなど、あるいは大豆サポニン等のマイナス作用、それからとどめにあまり強くなさそうな私の甲状腺の三位一体となった結果かも知れないとの考えに至りました。

    とりあえず大豆を減らしてみるとか、キャベツを止めてみるとか、一つずつ抜き差しして様子を見てみようかと思っています。

    同様の方がいらっしゃるかどうか分かりませんが、症例として今後何らかのご参考になれば嬉しいです。

    • Dr.Shimizu より:

      ねけさん、コメントありがとうございます。

      現在のところ、明確な答えが出せるだけの知識は私にはありません。申し訳ありません。
      ただ、アブラナや大豆は甲状腺機能低下に良くない、というのははっきりしませんが、
      アブラナ科野菜を非常に多く摂取すると、動物は甲状腺機能低下を起こすことがわかってるそうです。
      また、数ヶ月にわたって推定で1~1.5kg/日のチンゲン菜を食べた中国の88歳の女性が、重篤な甲状腺機能低下症を発症し昏睡状態になったという報告があります。
      これくらい大量に食べれば、問題は起きそうですが、通常は問題ないでしょう。
      しかし、個人差がある可能性も否定できません。
      アブラナ科を止めるのは一つの考えですね。

  3. えび より:

    もしかしたら超低糖質にした結果の甲状腺機能の低下や腸内環境の悪化が原因なのかもしれません。

    詳しくは、糖質は必要な栄養素なのか、それともただの毒なのか? その2
         https://yuchrszk.blogspot.com/2014/09/blog-post_13.html

    「糖質過剰」症候群の著書も読ませていただき、各症状と糖質の関係を知るほどに、糖質制限は間違いないモノなんだなと思ったのですが、母乳中の糖質の話が出て来たところで疑問が生まれ、昔見ていたサイトを思い出したタイミングでお困りのコメントがありましたので、役に立てるかもしれないと思い紹介させていただきました。

    さらに、結局、糖質は1日にどれだけ食べるのがベストなのか?
        https://yuchrszk.blogspot.com/2014/09/blog-post_83.html

        人類の頭と体は「糖質」のおかげで発達してきたんだから、ちゃんと炭水化物を食べようねという話
        https://yuchrszk.blogspot.com/2015/08/blog-post_46.html

    等も興味深く、清水先生の見解もお聞かせ願えればなと。

    • Dr.Shimizu より:

      えびさん、コメントありがとうございます。

      拙著を読んでいただきありがとうございました。

      このサイトは同意できる部分と、私と考えが違う部分があります。
      私の現在の考えは「糖質過剰」症候群に書いた通りです。