以前の記事「赤肉には発がん性があるのか? その1」などでも書いたように、赤肉の摂取量が増加すると大腸がんのリスクが増加すると考えている人がいます。私は否定的ですが。
通常の考えでは赤肉を食べれば、飽和脂肪酸の摂取量も増加します。飽和脂肪酸をたくさん摂るとコレステロールが増加すると考えている人もいます。これも私は否定的ですが。
では、コレステロールと大腸がんの関係はどうなのでしょうか?
ヨーロッパの10カ国から520,000人以上を集めた研究があります。それを見ると、意外(?)なことがわかります。(図は原文より改変)
上の図の青いバーは総コレステロール、赤いバーはHDLコレステロール、緑のバーはLDLコレステロールです。横軸はそれぞれの値を5つに分けて、少ない順に並べています。縦軸は大腸直腸がんのリスクを表し、最もコレステロールの少ない群を1としています。
最も少ない群から最も多い群までのそれぞれのコレステロール値の境界となる値は次のようです。
総コレステロール:211.5, 237.8, 259.5, 287.7 mg/dl
HDLコレステロール:43.3, 51.0, 58.8, 70.4 mg/dl
LDLコレステロール:131.9, 155.1,175.2, 201.5 mg/d
日本の基準で考えると、総コレステロールの基準値は150~219です。LDLコレステロールは70~139です。そうするとHDLコレステロールは別として、この基準値に当てはまる群は最もコレステロール値の低い第1/5分位だけであり、第2/5分位の一部も当てはまりますが、それ以上ではすべて基準値以上のコレステロール値です。HDLコレステロール値は増加するほど健康的であると考えられていますが、総コレステロールやLDLコレステロールは増加すると不健康だと考えられています。しかし、大腸直腸がんのリスクは全てのコレステロール値の増加に伴い、右肩下がりになり、リスクが低下しています。
つまり、コレステロールの低下は決して健康的ではなく、大腸がんに関しては危険である可能性があります。コレステロール値が高いほど長生きであるという結果と合致していますね。(「コレステロール値に一喜一憂しないために」など参照)
がんは非常に様々な因子が関連している可能性が高いので、赤肉を食べたことだけを悪者にして、「赤肉を避けましょう!」というのは問題です。特に高齢になるにつれ、タンパク質の摂取量が低下していくときに、他の栄養素とも含めて考えると、非常に赤肉は重要は栄養源です。赤肉を避けるよりも糖質を避ける方が重要です。
「Blood lipid and lipoprotein concentrations and colorectal cancer risk in the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition」
「欧州のがんと栄養への前向き研究における血中脂質とリポタンパク質の濃度と結腸直腸癌のリスク」(原文はここ)