コクランが今年の初め頃に出したレビューでは、インフルエンザワクチンの効果を次のように発表しています。
健康な成人に対するインフルエンザワクチンの効果(原文はここ)
「1名のインフルエンザ症例を予防するために71名がワクチン接種する必要があり、1名のインフルエンザ様疾患症例を予防するために29名がワクチン接種する必要がある。インフルエンザワクチンの注射製剤にはおそらくインフルエンザや
インフルエンザ様疾患 に対する小さな防御効果がある(エビデンスの確実性は”中等度”)。ワクチン接種の、入院(エビデンスの確実性は”低”)あるいは労働時間の減少に対しての明らかな効果は殆ど無いか全くないかもしれない。
不活化インフルエンザワクチンによる妊婦のインフルエンザ様疾患やインフルエンザに対する予防効果は不確実、あるいは少なくとも非常に限定的である。」
健康な小児におけるインフルエンザワクチンの予防効果(原文はここ)
「プラセボもしくはなにも投与しない場合と比較して、弱毒生ワクチンを投与した場合、インフルエンザと確定診断された小児の割合は18%から4%に減少し(中等度のエビデンス)、インフルエンザ様疾患は17%から12%に減少した(不確実なエビデンス)。インフルエンザの発症を1例予防するには、7人の小児にワクチン接種が必要であり、インフルエンザ様疾患 の発症を1例予防するには、20人の小児にワクチン接種が必要となる。」
「プラセボ投与もしくはワクチンを投与しない場合と比較して、不活化ワクチンを投与した場合、インフルエンザのリスクは30%から11%に減少し(高い確実性のエビデンス)、インフルエンザ様疾患 はおそらく28%から20%に減少する(中等度の確実性のエビデンス)。インフルエンザの発症を1例予防するには、5人の小児にワクチン接種が必要であり、インフルエンザ様疾患の発症を1例予防するには、12人の小児にワクチン接種が必要となる。中耳炎のリスクは、ワクチンを接種した群とワクチン接種していない群でおそらく同程度である(31%と27%、中等度の確実性のエビデンス)。」
「1価パンデミックワクチンのうちの一つの商品が、小児において、激しい感情が引き金となる突然の筋緊張消失(カタプレキシー)、睡眠障害(ナルコレプシー)と関連していた。」
65歳以上の人における季節性インフルエンザワクチンの効果(原文はここ)
「単一のシーズンを通じて、ワクチンを受けた高齢者のインフルエンザ発症は2.4~6%減少する。これは1例のインフルエンザ発症を予防するために30人の予防接種が必要であることを意味する。高齢者のインフルエンザ様疾患の発症もおそらく3.5~6%減少する。これは1例のインフルエンザ様疾患を予防するために42人の予防接種が必要であることを意味する。肺炎と死亡率についての情報量は限定的であった。ワクチンのインフルエンザによる死亡に対する予防効果のデータは十分ではなかった。」
まとめると
・小児では1例のインフルエンザ発症予防に5人のワクチン接種が必要
・小児では1例のインフルエンザ様疾患予防に5人のワクチン接種が必要
・パンデミックワクチン(新型のときのようなワクチン)では小児で非常に重篤な副作用を認めた
・成人では1例のインフルエンザ発症予防に71人のワクチン接種が必要
・成人では1例のインフルエンザ様疾患予防に29人のワクチン接種が必要
・65歳以上の高齢者では1例のインフルエンザ発症予防に30人のワクチン接種が必要
・65歳以上の高齢者では1例のインフルエンザ様疾患予防に42人のワクチン接種が必要
このような数字が効果があるというのか、無いというのかはそれぞれの考えでしょう。71人に1人しか効果がないワクチンを接種する気になれるかどうかです。子供にはある程度効果が認められると思われますが、その裏に隠れている有害性を考えると躊躇します。医療行為はリスクアンドベネフィットなので、ワクチンのリスクは知っておいた方が良いでしょう。それは次からの記事で。