アメリカでは糖尿病の第1選択薬はメトホルミンです。
第2選択の糖尿病薬の開始による心血管イベントの発生はどのようになるのでしょうか?
DPP-4阻害薬(ジャヌビア、エクア、ネシーナなど)、GLP-1受容体作動薬(ビクトーザなど)、SGLT-2阻害薬(スーグラ、フォシーガなど)、チアゾリジン薬(TZDs)(アクトスなど)、基礎インスリン、およびスルホニルウレア(オイグルコン、ダオニール、アマリールなど)または速効型インスリン分泌促進薬(スターシスなど)(両方とも、以後スルホニルウレア(SFUs)と呼びます)について、DPP-4阻害薬と比較しています。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図は横軸が時間(年)であり、縦軸が心血管イベントの発生率を表しています。ダントツで基礎インスリン使用がイベント発生率が高いです。その次はスルホニルウレアです。それ以外は差はありません。
複合心血管イベント | うっ血性心不全 | 脳卒中 | 虚血性心疾患 | 末梢動脈疾患 | |
DPP-4 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
GLP-1 | 0.78 | 0.65 | 0.65 | 0.91 | 0.90 |
SGLT-2 | 0.81 | 0.54 | 0.56 | 1.18 | 1.11 |
TZDs | 0.92 | 0.93 | 0.73 | 0.95 | 1.67 |
基礎インスリン | 2.03 | 2.33 | 1.77 | 1.92 | 2.92 |
SFUs | 1.36 | 1.47 | 1.28 | 1.35 | 1.65 |
上の表はDPP-4阻害薬を1としたときのリスク比を表しています。GLP-1受容体作動薬は複合心血管イベントのリスクを低下させ、うっ血性心不全と脳卒中の発生を低下させましたが、SGLT-2阻害薬とTZDs に差はありませんでした。インスリンとスルホニルウレアは有意にリスクを増加させました。
上の表は調整後の心血管イベントの発生のリスク比です。やはりインスリンとスルホニルウレアは有意差がありました。
もちろん、インスリンを使わなければいけないほど状態が悪い可能性があるので、インスリンのリスク増加は仕方ないかもしれません。しかし、スルホニルウレアに関してはやはり無理矢理にインスリン分泌をさせることが問題なのでしょう。そう考えると基礎インスリン使用もインスリンそのものが心血管イベントの発生のリスクを増加させていると考えられます。
しかし、DPP-4阻害薬も結局はインスリン分泌を増加させる薬です。それと比較してSGLT-2阻害薬やチアゾリジン薬は違うメカニズムで血糖値をコントロール症とする薬なので有意差はないですが、DPP-4阻害薬よりもリスクが低い傾向があるのかもしれません。
以前の記事「血糖値スパイクは冠動脈のプラークを不安定にするかもしれない」で書いたように、血糖値スパイクは冠動脈疾患と関連しています。そして、冠動脈疾患だけでなく他の心血管疾患も血糖値スパイクと関連しているでしょう。
治療薬としてインスリンを使ったり、インスリン分泌を増加させる薬を使うことは、HbA1cなどのデータは改善するかもしれませんが、インスリンの全体量は増加してしまいます。そうではなくて、インスリンを少しでも減らすことの方が重要でしょう。それには糖質制限です。
いずれにしても、高血糖、高インスリン血症は心血管イベントの発生を増加させるのは間違いないでしょう。
「Association of Second-line Antidiabetic Medications With Cardiovascular Events Among Insured Adults With Type 2 Diabetes」
「2型糖尿病の成人における心血管イベントと第2選択の糖尿病薬との関連」(原文はここ)