マラソンなどの持久力の必要なスポーツでは、後半に胃腸障害を起こすことがあります。フルマラソンでも後半、道端で吐いている方もときどき見かけます。先日の東京マラソン2019でMGC出場を何とか決めた神野大地選手もフルマラソンのレースで毎回腹痛に悩まされているそうです。
毎回となると、メンタルの問題もあるかもしれません。胃腸症状のすべてが胃腸に問題が起きているわけではなく、メンタルは非常に大きく関係するでしょう。
しかし、本当に胃腸症状が毎回のように出てしまう方もいるかもしれません。そのような方は食事が悪い可能性があります。糖質制限はこのような運動時の胃腸症状を大きく緩和する可能性があります。私は100km走っても胃腸の問題は経験していません。しかし、決して胃腸が強くはありません。糖質制限をしない場合、胃腸症状をできる限り回避するにはどうすればいいのでしょうか?
FODMAPという言葉を聞いたことがある方も多いと思います。FODMAPというのは、
F(fermentable:発酵性)、O(oligosaccharides:オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フルクタン)豆類、小麦、玉ねぎなど、D(disaccharides:二糖類(乳糖))牛乳、ヨーグルトなど、M(monosaccharides:単糖類(果糖))果物、蜂蜜など、A(and)、P(polyols:ポリオール(ソルビトール、キシリトール))マッシュルーム、人工甘味料など
の略で、この頭文字を取ってFODMAPです。過敏性腸症候群の食事療法などに行われています。これらのものは小腸での消化吸収が悪いため、摂取量が多くなると小腸に水分が移動して、お腹の張りや下痢を起こすことがあります。私もフルーツや納豆などの発酵性の大豆、その他のものが重なったと思われるとき(実際には何で起きているかよくわかりません)に物凄いお腹の張りを感じてしまいます。普段糖質制限をしていても、野菜や豆類、少量の果物を摂取しますので、私の軟な腸にとっては吸収できないのでしょう。
そして、小腸で吸収されなかったものは大腸に移動して、腸内細菌により大量の発酵が行われ、ガスを発生させます。これによってもお腹が非常に張ってしまいます。
今回の研究では、ランナーがレース時などに経験する胃腸障害が過敏性腸症候群の症状と似ていることから、低FODMAP食が胃腸障害の症状を軽減できるのでは、ということで行われました。FODMAPの量が多いものと少ないものを摂って、運動時の症状の違いを比較しています。
1週間の間、低FODMAP食はFODMAPを1日に16.06±1.79 g、高FODMAP食は38.65±6.66 g摂取します。過敏性腸症候群重症度スコアリングシステム(IBS-SSS)というものを使用して評価しました。結果は次のようです。(図は原文より、表は原文より改変)
|
変数 |
カテゴリー |
通常食 |
低FODMAP食 |
高FODMAP食 |
|---|---|---|---|---|
|
総エネルギー摂取量 |
(kcal/日) |
2355.86 |
1999.23 |
2269.14 |
|
(kcal/kg/日 ) |
34.12 |
29.04 |
32.53 |
|
|
炭水化物 |
(g/日) |
245.77 |
193.53 |
272.28 |
|
(g/kg/日 ) |
3.55 |
2.79 |
3.91 |
|
|
FODMAP |
(g/日) |
28.04 |
15.75 |
38.59 |
|
(g/kg/日 ) |
0.42 |
0.23 |
0.56 |
|
|
タンパク質 |
(g/日) |
92.13 |
94.34 |
94.64 |
|
(g/kg/日 ) |
1.34 |
1.35 |
1.36 |
|
|
脂質 |
(g/日) |
101.95 |
88.48 |
83.92 |
|
(g/kg/日 ) |
1.48 |
1.29 |
1.21 |
上の表はいつもの通常食と低FODMAP食、高FODMAP食の栄養素などの比較です。低FODMAP食は当然FODMAPは少ないのですが、その影響で炭水化物量としても少なくなってしまっています。それ以外のタンパク質や脂質の量は食事によって違いはありません。

上の図はIBS-SSSの食事による変化です。左が低FODMAP食、右が高FODMAP食です。食事を変更する前と1週間後の変化は低FODMAP食ではほとんどの人がスコアが低下していますが、高FODMAP食ではややばらけていますが、スコアが上昇している人の方が多いです。

上の表は全体としてのIBS-SSSの変化量です。低FODMAP食は低下し、高FODMAP食では上昇しています。
|
低FODMAP食 |
高FODMAP食 |
|||
|---|---|---|---|---|
|
症状 |
前 |
後 |
前 |
後 |
|
吐き気 |
4.75 |
0.88 |
1.56 |
4.94 |
|
痛み |
19.75 |
4.13 |
7.63 |
22.50 |
|
げっぷ |
3.38 |
2.25 |
3.56 |
7.50 |
|
鼓腸(ガスが溜まる) |
14.7 |
8.50 |
17.38 |
13.81 |
|
便秘 |
3.75 |
4.00 |
0.56 |
4.19 |
|
下痢 |
12.19 |
3.06 |
3.75 |
13.13 |
|
排便 |
2.50 |
2.88 |
0.37 |
8.75 |
|
排便刺激 |
12.19 |
5.13 |
7.69 |
17.06 |
|
膨満感 |
7.88 |
1.25 |
8.94 |
12.69 |
上の表はそれぞれの症状の違いを表しています。痛みは有意差が出ましたが、高FODMAP食の膨満感以外は有意差はありませんでした。しかし、傾向としては低FODMAP食ではほとんどの症状が低下し、高FODMAP食ではほとんど症状が悪化していました。
そして、自己申告ではありますが低FODMAP食では、運動の頻度や強度が高くなりました。
運動により消化機能は低下しますので、運動していないときの食事よりもさらにFODMAPの影響は大きくなる可能性があります。
では、実際にどのような食材が高FODMAPで、どのような食材が低FODMAPなのでしょう。
まずは穀物類ですが、簡単に言えば小麦は高FODMAPなので、パンや麺類、ピザやたこ焼、ケーキ類、シリアルなどはほとんどがダメです。あとはトウモロコシです。
逆に低FODMAPは米、10割のそば、オート麦、グルテンフリーの食品、ビーフン、などです。
野菜、イモ類では、高FODMAPはアスパラガス、タマネギ、にんにく、ニラ、サツマイモ、ごぼう、豆類(大豆、さやえんどう、あずきなど)、納豆、セロリ、キムチ、マッシュルームなど
低FODMAPはナス、ピーマン、トマト、ニンジン、ブロッコリー、きゅうり、ホウレン草、たけのこ、白菜、もやし、キャベツ、レタスなどです。
乳製品では高FODMAPは牛乳、乳糖を含む乳製品、ヨーグルト、アイスクリーム、プロセスチーズ、クリームチーズ、プリンなどです。
低FODMAPはバター、乳糖の入っていない乳製品、モッツァレラチーズ、チェダーチーズなどの硬めのチーズです。
もちろん私のお勧めは糖質制限ですが、糖質を摂るのであれば、FODMAPを意識してみてはいかがでしょうか?
「Effect of a short-term low fermentable oligosaccharide, disaccharide, monosaccharide and polyol (FODMAP) diet on exercise-related gastrointestinal symptoms」
「運動関連胃腸症状に対する短期間の低FODMAP食の影響」(原文はここ)