チック、トゥレット症候群に対する食事

先日、偶然にもテレビでチックやトゥレット症候群で非常に大変な思いをされている方の番組を見ました。

これがわが子ならと思うと非常に胸が痛みます。

チックやトゥレット症候群の原因はまだはっきり解明されていませんが、脳の何らかの機能異常であることは確かでしょう。勝手に体の一部が動いたり、声が出たりするわけですから。脳のどこかの神経が異常に興奮することにより、症状が現れると考えられます。今年に入り、京都大学がサルの実験で「音声チック」を再現することができました。これは脳の「側坐核」という部分を刺激して興奮させることによって起こるということです。てんかん発作も脳の過剰な興奮で起こるのですが、チックは意識すれば症状を一時的には抑えられますが、てんかんは抑えられません。この違いは何かはわかりませんが、神経の伝達の不具合が関係して起きている共通点はあると思います。

また、脳の神経伝達物質のドパミンを抑える薬であるハロペリドール(セレネース)がチックに効果があることを考えると、側坐核からドーパミンが異常に出て、それによってチックの症状が出ると推測されます。

ドーパミンが少なくなると、パーキンソン病のように身体がすくんでしまったり、運動そのものがうまくできなくなってきます。また、物覚えが悪くなったり、集中力や注意力も無くなったり、反応が鈍くなり、無気力になったりします。しかし、ドーパミンが過剰になると、統合失調症のように幻覚や幻聴が起こったり、発話や運動をコントロールできなくなって、変な恥ずかしいことを思わずやったり口走ったりします(これがトゥレット症候群です)。また強いこだわりや同じ行動を反復する強迫神経症になったりします。また、ドーパミンは依存症を引き起こします。

コカインやタバコのニコチン、アルコールなどの物質を体内に取り入れると脳では、いわゆる報酬系の反応である側坐核からドーパミンが大量に放出され、幸福感を感じます。脳はこれらの物質の影響を長時間浴びると、ドーパミンを制御することができなくなってしまいます。

糖質もコカイン同様またはそれ以上に側坐核に作用してドーパミンを放出させることがわかっています。糖質や甘味の中毒性はコカイン以上です。現在の食事では小さな子どもの頃から糖質まみれです。子供でありながら、血糖値が急上昇するようなこともあるでしょう。それが引き金になって、側坐核からドーパミンが大量に出ることがチックの一つの原因と考えても間違っていないと思います。

ケトン食がてんかんの治療に非常に有効だとわかっています。なぜ有効なのかはまだ分かっていないこともありますが、ケトン体はそれ自体が抗けいれん作用を持っていることや神経保護作用があること、グルタミン酸神経伝達をケトン体が阻害することにより神経の興奮を抑えることなどによると考えられます。

そうすると、そのままチックやトゥレット症候群に当てはめても十分有効なのではないでしょうか?ケトン食のケトン体が有効なのか、原因物質と考えられる糖質の除去が有効なのかはわかりませんが、小児への長期間使用の安全性がわからない強い向精神薬を使用するよりも安全です。本来元気な子供が薬の副作用でほとんど活動性を失って、寝てばかりいるよりも安全です。

同じようなものを食べても、何も起こらない子供もいますし、反応する子供もいます。これは個人差ですが、何が違いを生んでいるのかはわかりません。しかし、発達段階の脳は何かに異常な反応をしているのです。それが私は大量の糖質だと考えています。「ブドウ糖が脳の唯一のエネルギー源」ということを未だに信じている人には理解できないでしょうが、人類の進化の過程でこれほど糖質を摂取することはなかったはずです。これまでの進化では、血糖値が低くなることの方が問題で、高くなることはほとんど想定していませんでした。だから、異常なまでの糖質が体に入ることに全く適応できない脳を持っている子供がいても不思議ではありません。

番組の最後では手術で脳に電極を埋め込んでトゥレット症候群のコントロールをしていました。15歳の子です。一生電気刺激で症状をコントロールすることになるかもしれません。その彼が非常に肥満体型であったことも気になります。完全に糖質まみれの食事による体型です。手術は最終手段としては理解できます。薬によって症状を抑えることも仕方ない場合もあるでしょう。しかし、その前にできることがあります。食事を変えましょう。オメガ3の油はリスパダール(統合失調症の薬、チックにも用いられることがあるが、本当に子供に長期投与していいのか私には疑問)と同程度の効果があるという研究もあります。糖質制限と良質の油で変化が起きる可能性が十分あります。

 

 

2 thoughts on “チック、トゥレット症候群に対する食事

  1. 重いトゥレット症候群と診断されている10歳の息子がおります。現在、セレネースとエビリファイを服薬中ですが、次々に症状が増え、不安な毎日を過ごしております。

    そこで、オメガ3、糖質制限をしてみたいと思っております。
    しかし、いざ子供に糖質制限をするとなると、不安なこともあります。

    2つ質問させてください。

    ●甘いお菓子やジュースだけでなく、ご飯、パン、麺類、いも類も制限した方がいいのでしょうか?
    ●有酸素運動をすると、開始15分辺りまでは、血中の糖質がエネルギーになり、その後脂肪がエネルギーとなるようですが、糖質をとりすぎてしまった場合、有酸素運動もチック症状を減らすことに繋がるのでしょうか。

    1. コメントありがとうございます。
      ●甘いお菓子やジュースだけでなく、ご飯、パン、麺類、いも類も制限した方がいいのでしょうか?
      糖質制限なので、糖質はすべて制限するのがいいと思います。ごはんもパンも糖質たっぷりですよ。できればケトン食をまずは目指せるといいですね。

      ●有酸素運動をすると、開始15分辺りまでは、血中の糖質がエネルギーになり、その後脂肪がエネルギーとなるようですが、糖質をとりすぎてしまった場合、有酸素運動もチック症状を減らすことに繋がるのでしょうか。
      運動開始15分まで糖質エネルギーでそのあと脂肪に切り替わるというのはうそです。
      糖質制限をしている場合普段も有酸素運動でも8~9割脂肪がエネルギーです。逆に通常の食事をしていても有酸素運動時最初から4割ぐらいは脂肪エネルギーです。
      また、「有酸素」「無酸素」というのも実はあいまいな分け方です。
      運動はチックに非常に有効と思います。糖質制限をして、運動して、たっぷりケトン体を作っていくのが良いのではと思います。

      子供に糖質制限をするのに戸惑う気持ちはわかります。
      「糖質制限」が子供を救う
      糖質制限で子どもが変わる! 三島塾レシピ ― 成績&集中力アップ! もう「勉強しなさい! 」は言わなくてOK
      などの書籍も出ているので参考にされてはいかがでしょうか?
      また、オメガ3:オメガ6はできれば1:1~1:2を目指せると良いですね。
      質問が公開なのが躊躇されるのであれば、非公開もOKです。

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