病気を治すのは薬ではなく自分自身である

ちょっと古いものですが、面白い研究があります。スタチンとは違うメカニズムによる脂質異常症の薬のフィブラートの有効性と安全性を評価したプロジェクトです。

冠動脈疾患の患者でクロフィブラートという薬を投与された1,103人の5年死亡率は20.9%でした。その中で、5年間の間処方された薬をちゃんと飲んでいた人(80%以上服用した人)の5年死亡率は15.0%でした。ちゃんと飲まなかった人では死亡率は24.6%でした。やはりちゃんと薬は飲まないと行けません…?

本当でしょうか?

ではプラセボ群ではどうであったでしょうか?全く効果がないプラセボを投与された2,789人の5年死亡率は20.0%でした。その中で、5年間の間処方されたプラセボをちゃんと飲んでいた人(80%以上服用した人)の5年死亡率は15.1%でした。ちゃんと飲まなかった人では死亡率は28.3%でした。あれ?

薬であってもプラセボであっても効果は同じであり、ちゃんと薬でもプラセボでも飲めば死亡率は低下します。ということはこの薬は実際には効果がないということです。

死亡率を低下させたのは、薬ではなく、病気を治そうとする自分自身です。自分自身の日頃の生活や行動が重要なのです。ちゃんと薬(プラセボ)を飲もうと努力した人は生活習慣でも恐らく健康を意識しています。しかし、いい加減に薬を飲もうとする人は、恐らく健康に無頓着な人です。

病気をもたらすのは毎日の生活習慣であり、最も大きな影響があるのは食習慣です。何も考えず、好きなものを好きなだけ食べていれば、そのうち体は悲鳴をあげるのは当然でしょう。何が体に必要なのか?何が有害なのか?ちゃんと考え、ちゃんと行動することが最も大切なことです。

病院で薬をもらっても、それだけで病気が良くなるのではありません。薬は対症療法です。症状を和らげるのは、一時的な回避でしかありません。

あなたに害を与える糖質を制限することは非常に大事なことです。

「Influence of Adherence to Treatment and Response of Cholesterol on Mortality in the Coronary Drug Project」

「冠動脈薬剤プロジェクトにおける死亡率に対するコレステロールの治療と反応への順守の影響」(原文はここ

2 thoughts on “病気を治すのは薬ではなく自分自身である

  1. 清水先生。

    「薬であってもプラセボであっても効果は同じであり、ちゃんと薬でもプラセボでも飲めば死亡率は低下します。ということはこの薬は実際には効果がないということです。」
    とのことですが、見方を変えると、放置する(薬もプラセボも飲まない)のに比べれば、効果があると言うことを示しているのだはないでしょうか。

    副作用が大きかったり、習慣性があったり、高価な薬でなければ、薬は効果(少なくともプラセボ効果)があるので、役に立っていると思います。

    1. げっしーさん、コメントありがとうございます。

      見方によってはおっしゃる通りだと思います。
      しかし、今回の記事の薬のようにプラセボと大して違いがない薬は実は多いと思います。
      プラセボと変わらないのであれば、薬そのものの効果ではありません。薬を飲むことで、プラセボ効果や、その人の何かが変わったことにより改善したのです。
      そして、医療や薬だけに頼って、自分自身で何も変わらなければ、対症療法の裏で病気はどんどん進行します。
      もっとも大切なのは自分自身で考えを変えて、生活や行動を変えることです。
      もちろん薬は全く効果がないとは思いません。しかし、医療や薬に頼り切っている人が非常に多いのは事実だと思います。

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