以前、糖質過剰摂取をしていた頃には、頻繁に空腹感に襲われていた気がします。しかし、糖質制限をしている現在では、もちろん空腹感がないわけではないのですが、昔のような醜い空腹感はなく、非常に穏やかな空腹感です。
その空腹感はどのようなタイミングで起きるのでしょうか?
今回の研究では、GI(グリセミックインデックス)の高いものと低いものを摂取して、その後の空腹感について調べています。GIに関してはちょっと疑問もありますが、今回はそのことは考えずに置いときます。
参加者は20~35歳(平均29.1歳)の男性で、BMIは25以上の過体重または肥満(平均32.9)の人です。
●が高GI食、○が低GI食です。それらの組成は次のようです。(図は原文より、表は原文より改変)
高GI | 低GI | |
材料 | ||
コーンスターチ(g) | – | 57.2 |
ライトコーンシロップ(g) | 79.0 | – |
バニラエキス(g) | 7.3 | 7.3 |
牛乳、1%脂肪(g) | – | 260.0 |
ラクトースフリーミルク、1%脂肪(g) | 254.8 | – |
卵白、乾燥(g) | 13.0 | 11.4 |
人工甘味料(g) | 2.1 | 3.1 |
オリーブオイル(g) | 11.1 | 10.9 |
栄養成分 | ||
エネルギー(kcal) | 500 | 500 |
炭水化物(g) | 68.9 | 68.7 |
脂肪(g) | 13.7 | 13.5 |
タンパク質(g) | 18.1 | 17.9 |
計算されたGI | 84 | 37 |
炭水化物はどちらも70g弱なので、決して糖質制限ではありません。
上の図でAは食後血糖値、Bは食後のインスリン値、Cは空腹感の図です。空腹感は「お腹がすいていますか」という質問をして、「全くお腹がすいていない」を0㎝として「非常にお腹がすいている」を10㎝として0~10㎝までの範囲で評価されました。血糖値の単位は日本のものに変換するには18をかけてください。つまり、5mmol/Lは約90mg/dLです。
そうすると、高GI食で食後30分に明らかに血糖値スパイクが大きく起きています。その後急降下をしていますが、ベースラインに戻ったのが3時間後です。インスリン値に関してはやや遅れて4時間後にベースラインに戻っています。低GI食では非常になだらかな推移を示しています。しかも、高GI食では3時間以降の血糖値がベースラインを下回っています。インスリン値が、血糖値がベースラインに戻ったにもかかわらず、まだ分泌しているのが原因でしょう。
そして、空腹感は高GIでは食後2時間30分でベースラインに戻りましたが、低GIがベースラインに戻ったのが4時間後です。高GI食では3時間後までの血糖値の急降下、3時間後以降の低血糖により、空腹感が増加したと思われます。そして不思議なことに、食後30分の空腹感は低GIの方が少ないのです。つまり、高GI食の方が低GI食よりも満腹感が得られないとも考えられるのです。
上の図は高GI食の4時間後の脳のMRIです。低GI食よりも高GI食で上の図のオレンジの領域で、脳の血流が増加しています。この領域は側坐核という部位です。側坐核はドパミンが働く、いわゆる報酬系の中心的な部分です。さらに、報酬や欲求を超えて、側坐核は薬物乱用と依存に決定的に関わっています。
つまり、高GI食はこの脳の部位を刺激して、中毒性や依存性をもたらす可能性があるのです。糖質依存症は薬物依存と同じだと考えられるのです。
食後高血糖後の血糖値の急降下とその後の低血糖は、強烈な脳の飢餓感をもたらし、血糖値を上げるための糖質を探し求めます。薬物中毒の人で薬が切れたように。
糖質依存からなかなか抜け出れないのは脳が関連しているのでしょう。パン屋さんやスイーツの店に行列ができるわけです。早く抜け出ないと…
「Effects of dietary glycemic index on brain regions related to reward and craving in men」
「男性における報酬と欲求に関連した脳領域に対する食事のGIの影響」(原文はここ)