江部先生の新しい著書「内臓脂肪がストンと落ちる食事術」が発売されました。相変わらず非常にわかりやすく、説得力があります。
アマゾンの紹介文にも書かれていますが、江部先生は69歳なんですね。びっくりしました。非常に若々しく見えます。
私は医師の江部康二と申します。1950年生まれの69歳です。
身長167㎝・体重57㎏は、20代の頃とほぼ変わりありません。
◎身長は年をとっても縮んでいません
◎歯は全部残っていて虫歯も歯周病もありません
◎視力もよく『広辞苑』の小さな文字も裸眼で読めます
◎聴力の低下もありません
◎毎日7時間睡眠で夜中に尿意で目覚めることもありません
◎定期的に飲んでいる薬もなければサプリメントとも無縁です
◎コレステロール値も中性脂肪値も基準値内です
◎いまも朝勃ち(夜間陰茎勃起現象)します
朝勃ちについても触れられていますが、70歳前後どれだけの人が朝勃ちをするでしょうか?血管が若い証拠だと思います。もちろん私はまだ50代なので朝勃ちしています。(競ってどうする?)
さて、内臓脂肪でも、肝臓の脂肪は非常に重要です。以前の記事「脂肪肝はただの肥満の症状ではない」で書いたように、脂肪肝という言葉には、多くの方が危機感を持っていません。しかし、肝臓がんなどにも結び付いていきます。
ただ、多くの人は脂肪を減らすには摂取する脂質を減らすことを考えてしまいます。しかし、減らすのは脂質ではなく糖質です。詳しくは江部先生の新しい著書を読んでみてください。
今回の記事で紹介する研究は、地中海食+糖質制限と低脂肪食の比較です。対象者は腹部肥満(男性が102㎝、女性が88㎝以上の腹囲)の278人です。
地中海糖質制限食では最初の2ヶ月間で炭水化物の摂取を40 g /日未満に制限し、その後70g/日まで徐々に増加させました。さらに1日28gのクルミが与えられました。
低脂肪食は総脂質摂取量を摂取カロリーの30%に制限し、最大10%の飽和脂肪、最大300mg/日のコレステロールで、食物繊維を増やしました。
また、それぞれ運動をする群としない群にも分けられました。(図は原文より)
上の図は参加者全体の様々な違いによる、肝臓脂肪の減少を表しています。黒いバーがベースラインで、白いバーが18か月後です。
最も左は運動の有無の差ですが、どちらも肝臓の脂肪減少は違いがありません。つまり運動は肝臓脂肪と関連していないと考えられます。次が年齢ですが50歳以上でも、50歳未満でも減少割合に違いはありません。その次が性別です。女性は31%減、男性は40%減で、男性の方が有意に脂肪が減少しました。次がベースラインでのBMIです。BMI30以上では35%減、30未満では21%減でした。一番右が内臓脂肪です。内臓脂肪30%以上では33%減、内臓脂肪30%未満では22%減でした。
上の図はベースラインからのそれぞれの変化の割合です。白いバーが低脂肪群、黒いバーが地中海糖質制限食群です。残念なのはどちらも摂取エネルギーが減少してしまっています。つまりカロリー制限になっています。一番左が摂取エネルギーで、どちらの群も20数%の摂取エネルギー減です。次がタンパク質で、15%前後の減です。次が炭水化物で低脂肪食群で20%程度の減、地中海糖質制限食群では約40%減です。次が脂質です。低脂肪食群では20数%減、地中海群は10数%減です。その次が一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロールです。トランス脂肪酸は地中海食の方が減少していますが、それ以外は当然低脂肪食群の方が減少しています。
上の図は様々なパラメーターの変化です。左上から右に血糖値、拡張期血圧、収縮期血圧、HDLコレステロール、中性脂肪、中性脂肪/HDLコレステロール比、下の3つが心血管疾患のリスクスコアです。血糖値と収縮期血圧は差がありません。拡張期血圧は低脂肪食と比較して地中海糖質制限食で低下、HDLコレステロールは増加、中性脂肪は低下、中性脂肪/HDLコレステロール比は低下、そして各心血管疾患のリスクスコアは低下しています。
全体として18カ月の食事の変更で、肝臓の脂肪は地中海糖質制限では27%から5%に大きく減少し、心血管疾患のリスクも大きく低下しています。低脂肪食でも肝臓脂肪、心血管疾患のリスクは減少していますが、地中海糖質制限ほどではありません。
ただ、地中海食を取り入れなくても、またカロリー制限をしなくても、糖質制限をすれば「ストンと」内臓脂肪も肝臓脂肪も低下します。
「The Beneficial effects of Mediterranean diet over low-fat diet may be mediated by decreasing hepatic fat content」
「低脂肪食に対する地中海食事の有益な効果は肝脂肪含有量の減少によって仲介される可能性がある」(原文はここ)