以前、「サインバルタ慢性腰痛症に適応拡大」を記事にしましたが、今回はさらに適応拡大のニュースです。
今回も厚労省から早速お達しが来ました。サインバルタに「自殺念慮、自殺企図、敵意、攻撃性等の精神神経系の重篤な副作用が発現するリスク」があるためです。今度は変形性関節症です。
前回のように添付文書を見てみましょう。
表13は14週時の変化量です。
投与群 | BPI-疼痛重症度 (平均の痛み)スコア ベース ライン注1 | BPI-疼痛重症度 (平均の痛み)スコア 投与14週時注1 | 変化量 ベースラインからの変化量注2 | 変化量 プラセボ群との対比較 群間差(95%信頼区間) | 変化量 プラセボ群との対比較 p値 |
プラセボ群 | 5.06 ±0.98 (176) | 3.14 ±1.70 (161) | -1.80 ±0.12 | – | – |
60mg群 | 5.03 ±0.96 (177) | 2.44 ±1.54 (160) | -2.57 ±0.12 | -0.77 (-1.11,-0.43) | <0.0001* |
注 1:平均値 ± 標準偏差 (評価例数)
注 2:混合効果モデルに基づく調整平均値 ± 標準誤差 投与群,観測時点,投与群と観測時点の交互作用を固定効果,ベースラインの BPI-疼痛重症度(平均の痛み)を共変量とした。
p:有意確率,*:有意差あり(p<0.05)
評価時期 | n | BPI-疼痛重症度(平均の痛み)スコア | 変化量 |
ベースライン | 93 | 3.04±1.76 | – |
8週時 | 91 | 1.80±1.33 | -1.25±1.35 |
16週時 | 88 | 1.59±1.34 | -1.44±1.38 |
28週時 | 87 | 1.43±1.24 | -1.63±1.42 |
50週時 | 81 | 1.52±1.54 | -1.53±1.41 |
(mean±S.D.)
慢性腰痛症のときも同じ疑問を持ちました。まず、表13ではプラセボで変化量-1.80、サインバルタで-2.57、その差-0.77です。でも統計的には有意差ありになります。そして表14を見ます。14週が無いので16週時で見ても、変化量は-1.44です。表13のプラセボより変化量が少ないですね。そこでベースラインを見てみると表13では5.03、表14では3.04となっています。もともとのベースラインが違うので変化量の差があってもおかしくはないのですが、そもそも何でこんなにベースラインが違うんでしょうか?スコアがもともと2も違うのです。なんか変ですね。都合のいいデータを持ってきた可能性が十分考えられます。集めたデータを全部使っているのでしょうか?
そして、慢性腰痛症のデータのときとまるっきり同じ傾向です。プラセボと比較するときは疼痛スコアがちょっと高めの集団で、プラセボとの変化量の差はわずかではあるが有意差あり。長期投与のデータではもともとの疼痛スコアが低めの集団を集めています。なぜ、慢性腰痛症と変形性関節症という違う疾患に対するデータを集め直したのに、こんなにコピペでもしたかのように同じような傾向になるのでしょうか?
14週のプラセボとの比較の集団と50週の長期投与の集団の集め方に意図を感じてなりません。
関節の痛みが出る前にやはり食事を変えて、AGE(終末糖化産物)が関節に蓄積しない糖質制限食を推奨する方が、医療費も抑制できるので良いと思いますが、なぜか予防医療は全く普及しません。病気になるまで待って治療する方が、全体の経済的な効果が見込めるからでしょうか?これを読んでいるみなさんは20代から糖質を制限し始めれば恐らく、変形性関節症になる確率はぐっと減るはずです。