最近行われた心臓病アップデート会議(Cardiology Update meeting)でSalim Yusuf氏
という世界的な心臓病の権威(私はこの方が権威かどうかは知りませんが)が興味深く、非常に重要な講演をされました。この先生は、カナダのオンタリオ州ハミルトンにあるMcMaster大学医学部の心血管疾患のMarion W. Burke議長(どんな役職かよくわかりません)であり、現在の世界心臓連盟(the World Heart Federation)のトップでもあるそうです。
彼は講演で、さまざまな栄養素の摂取と心血管疾患(CVD)のリスクとの関係に関するPURE研究(Prospective Urban and Rural Epidemiological Study)のデータを発表しました。そしてその内容は、アメリカ心臓協会(AHA)や世界保健機関(WHO)などが推奨する現在の食事ガイドラインや勧告に対して非常に重要な問題提起をしています。
youtubeでその講演を見ることが可能です。(追記:2017.3.17現在、動画が削除されてしまいました。何らかの妨害でしょうか?ただの著作権の問題でしょうか?残念です。)
その主な内容を書きたいと思います。
まず、PURE研究というのはProspective Urban and Rural Epidemiological Studyの略(サイトはここ)で、肥満や心臓病、糖尿病、がんなどの慢性的な健康状態に対する環境、社会および生物学的影響を調べた世界最大の疫学的調査です。 PURE研究は、世界の低、中、高所得地域の都市部および農村部から、2003年から2009年の間に17カ国から15万人以上の参加者から構成されています。疫学的研究は直接因果関係を証明できるわけではありませんが、非常に大きな指標とはなるはずです。
講演では様々な栄養素と心血管疾患(CVD)について次のような発表がありました。まずは炭水化物と脂肪について、
- PUREのデータはWHOおよびAHAガイドラインに反して、炭水化物の摂取量が増加するにつれて、CVDのリスクが増加すること。
- これまでのガイドラインでは、脂肪を減らす代わりに炭水化物を補うと述べていた。西洋諸国では炭水化物摂取量が増加しており、これはおそらく有害である。
- すべての脂肪を増やすことはCVDのリスクを減らすこと。
- 摂取エネルギーの55%の炭水化物摂取量を超えると、炭水化物摂取量が増えれば増えるほどCVDのリスクが急激に増加すること。(動画の1分57秒あたりからのスライドを見てください。ただ、このスライドはアップにならないので詳細はよくわかりませんが、リスクが本当に急激に増加しているグラフの雰囲気はわかるでしょう)
- WHOのガイドラインによると、最大約75%の炭水化物がOKと言っているが、それは間違っていること。
- 脂肪は良いものもあれば、良くも悪くもなく中立のものもあるが、それはより悪いのが炭水化物であること。
- 脂肪摂取量を増やすことは、AHAなどが勧告していることに反して、我々を守ってくれて、害を及ぼさないこと。
- 飽和脂肪は有害ではなく、有益かもしれないこと。
- 多価不飽和脂肪(オメガ6の植物油)に利益は無いこと。
- 低脂肪乳が良いという証拠はないこと。チーズなどの脂肪は有益であること。
- 飽和脂肪のもととなる赤身の肉は害にはならないし、鶏肉や魚など白身の肉はやや利益があること。
- 膨大な量の飽和脂肪を消費してもLDLの増加はたった約0.1mmol / L(3.9mg / dL)であること。
- 飽和脂肪の摂取が多い程、心臓病の割合が低くなること。
- 炭水化物の摂取量が多い程、CVDのリスクの予測に最も敏感なマーカーのApoB / ApoAの比(これは以前取り上げたTG / HDL-C比の代用の一つです)は悪化すること。
- ApoB / ApoAの比は飽和脂肪摂取量が多くなると低下傾向であり、単価不飽和脂肪では大きく改善を見ること。多価不飽和脂肪はあまり変化しないこと。
そして、ナトリウム(塩分)摂取量(ナトリウムと塩分の量は違います。ナトリウム(g)×2.54=塩分量(g)です。)に関しては
- WHOとAHAはナトリウムを2〜3グラム/日に減らすことを推奨しているが、それは完全に間違っている。もっと増やす必要があるということ。
- ナトリウムは必須栄養素だということ。
- 皮膚において感染症に対する防御の第一線はナトリウムであり、これが体内のナトリウムの大部分が皮膚の下の脂肪に貯蔵される理由だということ。
- ヤノマミインディアンのデータはナトリウム摂取が低いほど血圧が低いことを示しているが、ヤノマミインディアンの寿命は32年であるということ。そして、感染によって圧倒的に死ぬということ。
- ナトリウムに関する結論は、すべての推奨量は低すぎるということ。3グラム/日以下は良くなく、最適な食塩摂取量は1日当たり約3〜5グラム(塩分換算で7.62~12.7g)であるということ。(ちなみに日本の食塩摂取量の目標値は男性8g未満、女性7g未満です。)
- 高血圧がなければナトリウム摂取量は放置してよいこと。高血圧がありナトリウムを5mg以上摂取しているなら塩分制限をすること。
果物と野菜の摂取については、
- 1日2回の果物が心臓病に予防的効果があり、有害ではないこと。
- すべての野菜はCVDに何の影響もないこと。つまり野菜を食べても害もなければ利益もないということ。野菜が好きならどうぞ1日3食野菜を食べてください。野菜を5食分食べるというのはどこから来たのでしょうか?
- マメ科の野菜(legumes)はかなり強いCVDの保護効果があるということ。
- 世界では、ほとんどの低所得国の人々がお金に余裕がないので、多くの果物や野菜を食べないこと。アメリカでは果物や野菜は肉に比べて安いので、低所得国の人々は高所得国の人々よりも多くの果物や野菜を食べるといつも考えてたが、違っていた。低所得国の人々は米や他の穀物を多く食べていると思われる。
- 低所得国では、フルーツ2食分と野菜3食分で1日あたりの収入の30〜60%を占めていること。
結論
- 一般的な考え方とは対照的に、飽和脂肪を減らすための現在の勧告は科学的根拠がないこと。
- 栄養の分野が歪んでいる。
- 一価不飽和脂肪はCVDに対して予防的であること。地中海食は低脂肪食でもなければ、低塩分食でもない。
- 炭水化物はおそらくあなたの最大の犯人なので、ハンバーガーを食べるときは、パンを捨てて肉を食べること。
- エネルギーの50%以上の炭水化物摂取は有害であること。
- 果物とマメ科植物は予防的であり、野菜はわずかに予防的または有益でも有害でもないこと。
- 魚は有益でも有害でもなく、魚が有益であることを示す研究は、有害な他の食品に取って代わるためである可能性が高い。
- 卵は有益でも有害でもないので、罪悪感無く卵を食べましょう。
いかがでしょうか?世界の心血管疾患の分野では炭水化物、つまり糖質が一番の犯人であると認めています。もちろん、これは心血管疾患についてなので、がんや糖尿病、その他の疾患を考えたら、糖質はもっと少なくて良いという結論が出てもおかしくはないでしょう。
次のアドレスに動画が掲載されています
https://www.youtube.com/watch?v=RwGteseHyas
A world renowned cardiologist THE DIETARY GUIDELINES ARE A LIE! Salim Yusuf full speech 2017
FesteringCorpse
2017/03/23 に公開
情報提供さん
情報提供ありがとうございます。見てみます。