ウイルス感染に対する防御をわざわざ失っているかもしれない

新型コロナウイルスの感染者が増加し、連日テレビでは大騒ぎです。現在では中国人観光客はかなり減少しましたが、1月の時点では大量の旅行客が日本にいたのです。新型コロナの感染者で無症状や軽症の人は大勢いるでしょうから、ウイルスは十分に広がっている可能性は否定する方が難しいはずです。それなのに水際対策ばかり注目されてきました。それにしても、厚労省や感染の専門家は本気で水際対策が有効と考えていたのでしょうか?まともの考えであれば、それでは防ぎきれないことは明らかなはずです。厚労省は「ちゃんと対策してますよ」というパフォーマンスをしていたように思えます。

そして、中国への渡航歴がない人、中国人との接触がない人に感染者が発見されたので、マスコミは大騒ぎです。通常風邪症状や熱がちょっと出たくらいでは、ウイルス検査は行わないでしょう。冬なので一応インフルエンザの検査は簡単にできるのでするかもしれませんが、それ以外の風邪のウイルスが何のウイルスかは調べません。

おそらく、今年に入り風邪症状があり、インフルエンザ陰性の方のすでに何割かはこの新型コロナウイルスなのではないかと推測します。新型インフルエンザの流行のときも最初は水際対策を必死に行っていましたが、結局流行しました。

今回の新たな感染者が感染経路が不明であることが問題であるというようなことが言われていますが、そもそも感染経路を特定して本当に意味があるのでしょうか?特に潜伏期でも感染力があると考えられている今回のウイルスでは、いつ感染したかもわからないし、その後発症するまでの間にどこでウイルスを巻き散らかしたかもわからないのに、その人の2週間の行動を把握してももうすでに遅いはずです。発症前2週間の間に、誰と会い、どこに行き、どこを触ったか、把握することは困難です。

また、感染経路が不明な感染者がたくさん現れたように報道されていますが、これまでは感染経路がわかる人、つまり武漢への渡航歴があったり、感染者との濃厚接触があった人のみをウイルス検査していただけであり、逆にそれ以外の人は見ないふりをして、検査を行ってこなかっただけの話です。

もちろん、何らかの対策を国が行うことは必要ですが、我々自身がウイルスが入ってきたときの防御策を持っていることの方が重要です。そこら中にウイルスは存在しているのですから。

昨日の夏井先生の記事に非常に興味深い記事が紹介されていました。(その記事はここ

記事の内容は、「インフルエンザウイルス感染から私たちを守ってくれているのは「喉と鼻の細菌叢」だったことがアメリカの研究で判明。そこから悟った中国でのコロナウイルスの感染力が爆発的である理由」です。

中国の抗生物質の使用量は異常です。(図はこの論文より)

上の図は中国、イギリス、アメリカにおけるヒトの抗生物質の使用量の比較です。左の図は1日1000人あたり1日あたりの量(DID)で、右の図は動物(赤いバー)とヒト(黒いバー)への使用量全体を示しています。中国はアメリカやイギリスの約5倍もの抗生物質を使用しています。日本の2018年の抗菌薬販売量は12.83DIDでした。(データはここより)結構日本は低めですね。中国は日本の10倍以上の使用ということになります。しかも、中国の動物への抗生物質の使用量は尋常ではありません。

このような狂ったような抗生物質の乱用が今回のような新型ウイルスを生み出したり、蔓延させている可能性は十分にあるでしょう。記事にも、「2009年に北京、上海、広州、武漢、重慶の病院の5カ所の病院の小児科で調査を行ったところ、抗生物質の使用量は国外の小児科の 2- 8倍に達していた。」と書かれています。今回の武漢の病院の様子が報道されていますが、患者の多くは点滴を受けています。「ウイルスに効く薬はないはずなのに、何の点滴?」と思っていましたが、もしかしたら抗生物質を点滴していたのかもしれません。

現時点での日本の唯一の80代の死亡例、北海道で昨日わかった重篤で集中治療を行っている方も二人とも重篤になる前に、報道では抗生物質での治療を行っています。通常の風邪症状で抗生物質を処方する医師はいません。(現実にはいっぱいいますが…)しかし、推測の域を出ませんが、なかなか症状が改善せずに、抗生物質処方に踏み切って、その後一気に重篤化へ向かった可能性はあるでしょう。

マウスの実験ではありますが、記事にも紹介されていたように、抗生物質を投与されたマウスは生来の適応的な抗ウイルス免疫応答の障害を示し、粘膜のインフルエンザウイルスへの暴露後にウイルスのクリアランスを大幅に遅らせることを示しています。つまり、マウスを抗生物質で治療すると、細気管支上皮の変性が増加し、インフルエンザ感染後の死亡リスクが高くなることがわかったのです。すべてではないとしても人間にこのことが当てはまる可能性は十分にあるでしょう。だから中国の死者だけが突出して増加しているのかもしれません。

人間は菌と一緒に生きています。体のいたるところに菌がいます。常在菌は我々の知らないところで様々な役割を担っていると考えられています。抗生物質はその我々に有益な仲間の菌を殺してしまいます。そして、有害な菌が蔓延ってしまいます。抗生物質を飲んだ時に下痢をするのも腸内細菌の乱れによるものです。

鼻や咽頭の常在菌は非常に重要性でしょう。

さらに、アメリカでは今年、インフルエンザが猛威を振るっています。(関連記事はここ

やはり、アメリカも抗生物質の使い過ぎがあるのかもしれませんが、その他の様々なことが常在菌を殺していたり、細菌叢を悪く変化させているのかもしれません。その一つが糖質過剰摂取でしょう。腸内細菌は食事によって変化します。糖質制限を始める前の私は、結構頻繁に下痢をしていました。しかし、糖質制限を始めた後に下痢の回数は極端に減りました。最近いつ下痢をしたのか覚えていません。糖質過剰摂取は口腔の細菌叢も変化させ、歯周病を起こすと考えられます。その他の細菌叢に変化を起こす可能性は十分にあるでしょう。口腔、鼻腔をはじめ様々な細菌叢は抗菌作用を持つバクテリオシンなどの物質を出しています。正常な細菌叢が出す物質で、悪い菌を寄せ付けないとか、制御しているのでしょう。恐らくウイルスに対しても抑制的な効果を示すと考えられます。

新型インフルエンザとの関係では、小児での研究では黄色ブドウ球菌が検出された患者さんが亡くなっていて、ウイルス単独では亡くなっていないというデータがあるそうです。インフルエンザウイルスの表面にヘマグルチニン(HA)というタンパクがあり、これが黄色ブドウ球菌が産生するプロテアーゼというものでHAが切られると、ウイルスは感染力を発揮するそうです。インフルエンザの肺炎では黄色ブドウ球菌が感染している場合に死亡率が高いと言われているようです。

では、黄色ブドウ球菌はどのような人が持っているのでしょう。実は30%程度の人の鼻腔にはこの黄色ブドウ球菌が常在しているようです。(関連記事はここ)70%の人には常在していないのに、30%の人に黄色ブドウ球菌が常在しているのはなぜでしょう。それは、鼻腔の中に常在するStaphylococcus lugdunensis(スタフィロコッカス ルグドゥネシス)という細菌が黄色ブドウ球菌と戦う抗生物質ルグドゥニンを産生していたのです。(その論文はここ

薬の抗生物質が乱用されれば、このような自分の体を守ってくれる常在菌が減少したり、消滅したりする可能性があるでしょう。

さらに糖尿病や高血糖では、黄色ブドウ球菌の鼻腔への定着が増加します。(この論文参照)つまり、糖質過剰摂取でも黄色ブドウ球菌が鼻腔に常在する可能性が高くなるのです。そうすると、インフルエンザウイルスは病原性、感染性を発揮してしまいます。黄色ブドウ球菌を保菌していても通常何も起こりませんが、ウイルスが入ってきたときには、いきなり存在感を示すのかもしれません。

さらにさらに、アメリカはマウスウォッシュが日本よりも一般的に使われているようです。一度以前にリステリンというものでマウスウォッシュをしてみましたが、殺菌作用のある成分が含まれていて、ものすごい刺激で、舌が痛いほどでした。これは体に悪いと体験できます。このようなマウスウォッシュの常用は口腔の細菌叢を破壊、変化させると思われます。

ほとんど行っている人はいないと思いますが、イソジンのうがいは最悪でしょう。口腔や喉の正常細菌叢を破壊してしまうでしょう。

我々は細菌と共生して生きています。そして、知らない間にその細菌たちに助けられ、ウイルスの防御も行ってもらっています。しかし、過剰なアルコールなどでの消毒、せっけんなど頻繁な使用、マウスウォッシュや薬品によるうがい、糖質過剰摂取、抗生物質の不必要な使用などにより、わざわざその防御機構を失ってしまっているように感じます。

全てのウイルスは同じではないので、新型コロナウイルスの防御に当てはまらないものもあるとは思いますが、可能な限り、常在菌にやさしい生活をした方がウイルス感染は防げると考えます。

糖質過剰症候群

「The respiratory microbiome and susceptibility to influenza virus infection」

「呼吸器微生物叢とインフルエンザウイルス感染に対する感受性」(原文はここ

コメント

  1. 鈴木武彦 より:

    夏井先生著書『患者よ医者から逃げろ』に、
    ハンドソープなどの界面活性剤が皮膚バリア破壊、の記述あり、以来手洗いは水流でのみ行っています(原因は多様ですし、自己責任ですが)今シーズンはインフルなどの感染症とも無縁です。

    賛否両論ありますが、シャンプーやボデイーソープも長年使用しておりません。

    テレビなどでは手洗い方法が改めて喧伝されています。念入りに洗っても直後に菌やウィルスに晒されるわけですから、元々ある皮膚のバリアを大事にして、菌などとの共存も必要(というより長い目で見ると健康に資する)と考えます。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      今年は不思議とインフルエンザウイルスの勢いは昨年の3分の1程度ですからね。
      様々なバリア、防御が人間には備わっているので、それを大切にすることは重要なことだと思います。

  2. 吉岡 斎 より:

    コロナウィルスの水際対策が有効なのは、感染者がごく一部に特定されている場合に、そのルートを辿って接触者を全て抑えれば感染は防げる、という発想だと思いますし、それはその通りだと思います。ただ、コロナウィルスは無症状でも感染する気配があるので、すでに1月あたりに日本にたくさん来ていた中国人の方々から感染している可能性は否定できず、そうなったら感染ルート等調べようがありません。

    そうなったらドクターの言われるように、重要なのは感染ルートではなく、我々の感染に対する防御である事は言うまでもありません。そしてそれは、我々一般人が出来る事としては、マスクの正しい着用であったり、無用な外出はしない事であったり、こまめな手洗いやうがい・アルコール消毒等であったりするのでしょう。

    ただ、ドクターは「過剰な」アルコール消毒や抗生物質の使用、うがい薬の使用等は、常在菌を無くしてしまう等、我々の持つ免疫力を低下させることに繋がり、返ってウイルスに罹りやすくなってしまう、と言われており、それはとても説得力がありその通りだと思いますが、しかしこれはあくまで「過剰使用」がダメなのであって、「適度な使用」はすべきであろうと思うので、そこを一般人に勘違いさせない事が重要だと考えます。

    なぜこんな事を言うのかというと、このようなドクターの文章を読むと、「アルコール消毒やうがい薬は全く使わないほうが良い」等と勘違いする人が出てくる可能性があるからです。あくまで「過剰使用がダメ」であるに過ぎない事を、しつこく言ったほうが良いように私は思いました。

    • Dr.Shimizu より:

      吉岡 斎さん

      >こまめな手洗いやうがい・アルコール消毒等
      >「過剰使用」がダメなのであって、「適度な使用」はすべきであろうと思う
      「こまめ」「過剰」「適度」というのは非常に曖昧ですよね。
      いずれにしても、今そこにあるウイルスや細菌に対して、アルコールが無効であるとは思っていませんが、残留効果がないアルコール消毒をしてもその次の瞬間には
      ウイルスや細菌がいる可能性があります。様々な職種でアルコール消毒が必要になる場合はあると思いますが、
      日常生活でアルコール消毒が必要な場面があるとは思えません。流水で手洗いすれば十分です。自宅でアルコール消毒することはすでに「過剰」です。
      だから、アルコール消毒薬が品切れになっている現状は非常に疑問です。
      武漢では街中を消毒していますが、耐性菌がウヨウヨ出てきそうで、非常に怖いですね。

      うがいはもっと必要ないでしょう。ウイルスが粘膜に付いた瞬間にうがいできるのは奇跡的なタイミングです。
      通常鼻呼吸なので鼻うがいも必要になってきますね。
      まして、うがい薬は正常な細菌叢を乱すので、「全く使う必要はありません」、有害だと思います。
      気休めにうがいしたいなら、水で十分です。そんなことしなくても水分を飲めば胃の中に流れて胃酸がやっつけてくれるでしょう。

      吉岡さんが正しいと思ったことはご自身のSNSなどで発信していただけると幸いです。
      私自身は私の言っていることだけが正しいとは思っていません。記事を読んでいる方のほとんどもそうだと思います。みなさん様々な情報からご自身で何が正しか判断していますよ。

  3. ミホ より:

    シミズ先生、こんにちは。

    私はほぼテレビを見ないのですが、知人の話を聞いていると、マスコミの報道に恐怖を煽られているように思われました。

    「細菌やウイルスが可視化出来るようになればいい」と言っていましたが、もし見えるようになったら、マスクも石鹸も消毒も意味がないと分かるのかもしれませんね。

    それでも2:8の法則が示すように、8割の人はまだ「いや、必要だ」と言い張るのでしょうか? 笑

    細菌やウイルスから身を守るためのシステムが身体に備わっているのだから、そのシステムの邪魔をしないことが一番の対策だと私は考えています。

    • Dr.Shimizu より:

      ミホさん、コメントありがとうございます。

      マスコミも仕事ですから、仕方がないのでしょう。
      しかし、最近出演している感染の専門家の方たちは、予防については手洗いだけで、うがいやマスクのことはほとんど言わなくなった印象があります。
      「細菌やウイルスが可視化」できたら、潔癖の人の中にはパニックになる人が大勢出てくるかもしれませんね。ウイルスや細菌をなくそうとすれば1日中消毒で寝る暇もないでしょう。
      1日消毒しても消えませんが。

  4. 鈴木武彦 より:

    ウィルス感染とは別の話題、糖質制限繋がりで。
    今日昼TVでマヨネーズをダイエットの際の調味料として推奨、
    それに対してtwitterでは炎上的に叩かれています。

    マヨネーズ、糖質ほぼ無くてダイエットに良いのに、、、

  5. 不肖森 より:

    シナの実情が知れて興味深い記事でした。
    現在の中共一党独裁体制ではまともな医療を受けれるのは富裕層だけだそうです。
    そしてシナ人の哲学というのはお金持ちになること、なるべく早く(物が)豊かになることが全てにおいて正しい、素晴らしいということだそうです。ですからたくさんの投薬を患者が望むのも(それが無意味どころか害があったとしても)当然かもしれません。

    文化大革命のエピソード、スズメを稲穂を食べる害鳥として狩りまくったら害虫が増えてもっとえらい目にあったと同じ事をしてるんでしょうね。

    • Dr.Shimizu より:

      不肖森さん、コメントありがとうございます。

      >文化大革命のエピソード、スズメを稲穂を食べる害鳥として狩りまくったら害虫が増えてもっとえらい目にあったと同じ事をしてるんでしょうね。
      なるほどそうですね。人間はなかなか学ばないですね。

  6. たこ より:

    毎回興味深く拝読させていただいております。ところでこの記事、ほとんど同じ内容で他の人(坂崎文明さん?)のNOTEに上がっているようです。
    https://note.com/sakazaki_dc/n/n4a1762a61ab0
    気持ちの良いものではありませんね。お知らせまで。

    • Dr.Shimizu より:

      たこさん、コメントありがとうございます。

      一応私の記事を引用していることが書かれているので、問題はないと思います。