新型コロナウイルスによる感染で、貧困や医療レベルの低さなどが重症化に関連しているのではないかという人がいます。アフリカ諸国はそのような貧困や低医療レベルの国が多いので、今後アフリカへ新型コロナウイルスが拡大すると先進国よりも大量の死者が出る、と専門家たちは危惧しているようです。
しかし、今回の感染に関しては、先進国の自負している高度の医療レベルをあざ笑うかのように、先進国の間で感染爆発が起き、大量の死者が出ています。欧米各国で感染爆発が起こり、「日本はこれから感染が拡大する」「今のニューヨークは2週間後の東京だ」「アフリカで広がったら大変なことになる」などと言っていました。つまり、先進国にとっては、自分たちが非常に悲惨なことになっているので、他の国でも同じようなことが起きるのは当然だと思い、さらにもっと発展途上国や貧困の国ではもっともっと悲惨なことにならなければおかしいと思い込んでいる可能性があります。
ただ、今のところ欧米の先進国が最も悲惨な状況です。
最近のニューヨークの報告では、住んでいる地域により死亡率が違い、貧困層の方が死亡率が高いことを示しています。では、どちらなのでしょうか?(図は原文より)
上の図はニューヨークの地区の特性です。ブロンクスが最も黒人が多く、白人が少なくなっています。貧困率も最も高く、収入も最も少なくなっています。一方マンハッタンは白人比率が60%近くで、黒人は最も少なく、収入が最も高い地区です。
上の図は左がニューヨークの地区による入院率、右が死亡率です。ブロンクスが最も入院率、死亡率共に高く、マンハッタンが最も低くなっています。これを見ると貧困は新型コロナウイルスに対してリスクが高いのではと思ってしまうかもしれません。そうするとそれよりももっと貧困の国ではもっと死亡率が高くなると考えるのも当然かもしれません。
インドは膨大な人口数や人口密度、大規模なスラムと不安定な医療システムを抱えていて、感染爆発が起きても不思議ではありません。しかし、いまだに欧米のような状態になっていません。インドの死者は10人から1,000人になるのに35日かかっています。スぺインは13日です。もちろん、インドが人数を把握できていない可能性も十分にあります。
そして多くのアフリカの国でも感染爆発は数字上表れていません。もちろん、アフリカも十分に把握できていない可能性も十分にありますが、日本よりも人口当たりのPCR検査数が多い国はいくつもあります。
国 | 陽性者数 | 死亡者数 | 死亡/100万人 | 検査/100万人 | 男性寿命 | 女性寿命 | 男性肥満率 | 女性肥満率 |
アルジェリア | 3,848 | 444 | 10 | 148 | 75.4 | 77.4 | 19.9 | 34.9 |
モロッコ | 4,321 | 168 | 5 | 892 | 74.8 | 77.0 | 19.4 | 32.2 |
エジプト | 5,268 | 380 | 4 | 879 | 68.2 | 73.0 | 22.7 | 41.1 |
チュニジア | 980 | 40 | 3 | 1,867 | 74.1 | 78.1 | 19.1 | 34.3 |
リベリア | 141 | 16 | 3 | 62.0 | 63.9 | 5.5 | 14.2 | |
南アフリカ | 5,350 | 103 | 2 | 3,324 | 60.2 | 67.0 | 15.4 | 39.6 |
カメルーン | 1,832 | 61 | 2 | 56.7 | 59.4 | 6.1 | 16.4 | |
ブルキナファソ | 641 | 43 | 2 | 59.6 | 60.9 | 2.6 | 8.1 | |
ソマリア | 582 | 28 | 2 | 53.7 | 57.3 | 3.9 | 12.3 | |
ニジェール | 713 | 32 | 1 | 213 | 59.0 | 60.8 | 2.5 | 8.7 |
マリ | 482 | 25 | 1 | 107 | 57.5 | 58.4 | 4.6 | 12.4 |
スーダン | 375 | 28 | 0.6 | 63.4 | 66.9 | 3.8 | 12.4 | |
ガーナ | 1,671 | 16 | 0.5 | 3,414 | 62.5 | 64.4 | 4.5 | 16.6 |
コートジボワール | 1,238 | 14 | 0.5 | 53.6 | 55.7 | 5.8 | 15.2 | |
コンゴ | 491 | 30 | 0.3 | 58.9 | 62.0 | 5.5 | 13.5 | |
タンザニア | 480 | 16 | 0.3 | 62.0 | 65.8 | 4.0 | 12.7 | |
ケニア | 384 | 15 | 0.3 | 335 | 64.4 | 68.9 | 2.8 | 11.1 |
ナイジェリア | 1,728 | 51 | 0.2 | 62 | 54.7 | 55.7 | 4.6 | 13.1 |
インド | 33,062 | 1,079 | 0.8 | 602 | 67.4 | 70.3 | 2.7 | 5.1 |
日本 | 13,965 | 425 | 3 | 1,299 | 81.1 | 87.1 | 4.8 | 3.7 |
アメリカ | 1,064,572 | 61,669 | 186 | 18,549 | 76.0 | 81.0 | 35.5 | 37.0 |
スペイン | 236,899 | 24,275 | 519 | 30,253 | 80.3 | 85.7 | 24.6 | 22.8 |
寿命を見てわかるように、アフリカの多くの国の平均寿命は50歳代~60歳代です。日本やスペインのように80歳代の国と大きな差があります。
(図はここより)
人口ピラミッドを見てもわかるように、特に高齢化社会の日本では70歳以上が非常に多いことがわかります。しかし、インドやナイジェリアでは70以上の人口がほとんどいません。今回の新型コロナウイルスで重症化、死亡のリスクの高い高齢者層が発展途上国にはもともとそれほどいません。
さらに肥満率を見ても、アフリカの中で比較的死亡率の高いところは肥満率が他の国より高くなっています。しかし、他のほとんどのアフリカ諸国は肥満率が極端に低いのです。特にリスクの高い男性の肥満率の低さはアメリカと比較すると一目瞭然です。
さらにさらに、新型のウイルスに対して、人間は丸腰ではありません。これまで暴露されていない病原菌に対しても記憶があると考えられています。免疫のT細胞の記憶は通常、何らかの病原体の抗原に直接暴露された場合に起きると考えられていますが、成人ではこれまで感染したことのない病原体に対する記憶を持つメモリーT細胞が、何と約50%もあることがわかっています。(ここ参照)
この研究では成人から採取されたサンプルの5分の1において、有害なウイルスや細菌だけでなく、他の無害な環境微生物にも反応する、交差反応性のメモリーT細胞があることもわかったのです。例えば、HIVに反応性のあるメモリーT細胞は、3つの腸内細菌、土壌に生息する細菌、海藻な植物など、多数の一般的な環境微生物を認識できることがわかりました。
つまり、病原性があるか無いかにかかわらず、この交差反応性は、土や家や環境の一般的な微生物にさらされることで、未知の感染症に感染しにくくなることを説明できるのです。また、BCGや麻疹のワクチンにより、そのワクチンが標的としている病原体による感染にとどまらず、その他の病原体から保護し、異種または非特異的な保護をもたらし、死亡率を低下させる可能性があると考えられています。
貧困な国、発展途上国では、道は舗装されていないところも多く、土と接することも多いでしょう。野生の動物も先進国よりも多いでしょう。上下水道の整備も整っていないでしょう。そのような意味で、先進国よりも生まれた瞬間から感染との闘い、共存を強いられています。それに打ち勝たなければ幼い時に死んでしまいます。
そして、アフリカ諸国や発展途上国はアメリカやスペインと違い、BCGワクチンを接種しています。
つまり、アフリカ諸国や他の発展途上国は、新型コロナウイルスに対してリスクのある世代が非常に少なく、新型コロナの重症リスクの男性で肥満の人も非常に少なく、重症化からの保護と関連のある可能性のあるBCGワクチンを接種し、もともとの自然の環境によって感染に対する免疫が鍛えられていると考えられます。アフリカ人は黒人で、血栓ができやすいですが、その不利な遺伝的要素を上回る有利な点があると思います。
よって、アフリカ諸国や発展途上国は欧米のような感染爆発が起こらないと思います。医療レベルが低いことはもしかしたら感染には強い可能性があるのです。アメリカの貧困層は逆に、最先端の医療はお金がなくて難しいかもしれませんが、ある程度の医療は受けられますが、食料事情は安い低品質の糖質を過剰摂取し、ブクブクと太ってしまいます。(アフリカでは糖質が多くても肥満になるほどのエネルギー量が得られていないことや、活動性が高いので肥満が少ないのかもしれません。)土は少なく舗装された場所ばかりです。アメリカではBCGもありません。狭い風通しの悪い部屋に多くの家族で一緒に住んでいます。アフリカの貧困層よりもアメリカの貧困層は新型コロナウイルスに対して危険であるのです。
医療レベルの高さよりも、BCGワクチンやこれまでの様々な感染により得られた免疫、清潔ではない環境が未知のウイルスに対して保護的なのだと考えられます。先進国の方が脆弱なこともあるのです。
日本は先進国でありながら、BCGワクチンを接種し、血栓のできにくいアジア人であり、肥満が少なく、清潔でありながら、高齢化社会でありながら非常に低い死亡率を維持しています。このまま行けそうな気がします。
「Variation in COVID-19 Hospitalizations and Deaths Across New York City Boroughs」
「COVID-19入院とニューヨーク市自治区全体の死亡の変動」(原文はここ)
先進国が必ずしも、「後進国」より健康的な生活環境では無いのかもしれませんね。
ステレオタイプかもしれませんが、アメリカの貧困層よりもアフリカの人達の方が生き生きしているように感じます。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
所詮人間は動物なので、動物らしい健康的な生活は土の上にあるのかもしれません。
今回の記事に大賛成です。数年前から藤田紘一郎氏の書籍を読んできて、現在でも人間の知らない細菌は多く、それらの菌の免疫力を得たり、共生して人間として生き延びてきたと考えてます。猫の糞があるかもしれない砂場で、子供を遊ばせた方がいいと思っているくらいです。
日本株BCG接種がコロナに効果があるのも、たまたまかと思いますが、人の免疫力を高めることになったと考えます。
今回のコロナ騒動から教訓を活かすためには、菌は危険で全て消毒・滅菌すべしという考え方を変えていくしかないです。
コロナ女王、8割おじさんの言うことを正しいと思っている人が多い現在の状況はなかなか急速には変わらないと思いますが、そうなると願ってます。
ジンさん、コメントありがとうございます。
現在、どこもかしこも消毒で、この感染が収まった後の世界での病原体の変化が怖いです。
根拠のない8割おじさんは、もう8割減自体が目的になってしまって、方向性が全く別の方に向かっています。
他の専門家はいないのでしょうか?また、可能な限り早急に経済のまともな専門家を加えるべきです。
感染症の専門家は感染を感染をゼロにすれば勝利ですが、その時には日本は死んでいるでしょう。