17日にあった第121回ボストン・マラソンで、近年の日本男子マラソンのひ弱なイメージを、かつての箱根のスター、大迫傑が覆した。厳しいコースでペースメーカーもいないなか、世界の強豪を相手に、終盤にペースを上げてつかんだ価値ある表彰台だ。

 レースは序盤、2時間3分台の自己記録を持つムタイ(ケニア)、リオ五輪3位のラップ(米)が引っ張った。世界トップクラスの彼らは、細かくペースを上げ下げして揺さぶった。

 先頭集団にいた大迫は冷静だった。「いちいち対応する力はまだないので、1キロ3分4秒ぐらいのペースで淡々といこうと思った」。32キロ過ぎで優勝したキルイに離されても、慌てて追わず、リズムは決して乱さない。33キロを過ぎて3番手に上がると、35キロから40キロまでは15分7秒と、その前の5キロより23秒も上げてそのままゴール。「3位はうれしい」と笑顔が絶えなかった。

 早大時代は4年連続で箱根駅伝を走った。2015年から米オレゴン州を拠点にプロとして活動する。ロンドン、リオ五輪で5000、1万メートル2冠のファラー(英)やラップとともに、スピードを重視した練習を積んできた。

 リオ五輪はトラックの2種目で出たが、2020年東京五輪はマラソンで出場を目指す気持ちが強い。「ひとつの過程としてはよいスタートが切れた」。久々に、世界と勝負できそうなマラソンランナーが誕生した。