インフルエンザワクチンは新型コロナウイルスの感染のリスクを上げているかもしれない

以前の記事「新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが同時感染すると死亡率低下?」では、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスのウイルス干渉による同時感染の減少は起きないのではないか?ということを書きました。

しかし、インフルエンザワクチンに関して、新型コロナウイルスとのウイルス干渉は起きるのでしょうか?インフルエンザワクチンは不活化ワクチンなので、通常で考えればウイルス干渉は起きないと考えられますが、今回のプレプリントの研究では、逆のことが起きている可能性があります。つまり、インフルエンザワクチン接種により、新型コロナウイルス感染が増加している可能性があると考えているのです。

OECD加盟国29カ国の最新の年から、65歳以上の人口層におけるインフルエンザワクチン接種率を取得し、新型コロナウイルスの感染率と分析しました。その結果、OECD29カ国のインフルエンザワクチン接種率と新型コロナウイルスの発症率の間のピアソン相関係数rはr=0.58、とかなり相関が認められる結果でした。

このような結果は今までも、他の研究で認められていました。あの「8割おじさん」として有名になった西浦先生の名前も論文の中に認められる研究では、インフルエンザワクチンを接種した子供では、ウイルス学的に確認された非インフルエンザ感染のリスクが4.4倍も増加しました。(その論文はここ)ただ、この研究ではコロナウイルスについては書かれていません。

別の研究では、インフルエンザワクチン接種によりコロナウイルスとヒトメタニューモウイルスの感染の増加を認めました。(下の表は原文より改変)

VirusVaccinated (%)Not Vaccinated (%)OR (95% CI)P-Value
Influenza2050 (31.3)1299 (44.4)0.57 (0.52, 0.63)<0.01
Influenza A1256 (19.2)741 (25.3)0.70 (0.63, 0.78)<0.01
Influenza A H1N1225 (3.4)227 (7.8)0.42 (0.35, 0.51)<0.01
Influenza A H3N21023 (15.6)512 (17.5)0.88 (0.78, 0.98)0.02
Influenza B662 (10.1)474 (16.2)0.58 (0.51, 0.66)<0.01
Influenza B Victoria7 (0.1)8 (0.3)0.39 (0.14, 1.08)0.07
Influenza B Yamagata85 (1.3)77 (2.6)0.49 (0.36, 0.67)<0.01
Influenza Coinfection9 (0.1)9 (0.3)0.45 (0.18, 1.13)0.09
Non-Influenza Virus2050 (31.3)830 (28.3)1.15 (1.05, 1.27)<0.01
Adenovirus144 (2.2)78 (2.7)0.82 (0.62, 1.09)0.17
Coronavirus(コロナウイルス)507 (7.8)170 (5.8)1.36 (1.14, 1.63)<0.01
Human Bocavirus69 (1.1)34 (1.2)0.91 (0.60, 1.37)0.64
Human Metapneumovirus335 (5.1)101 (3.5)1.51 (1.20, 1.90)<0.01
No Pathogen Detected2441 (37.3)799 (27.3)1.59 (1.44, 1.75)<0.01
Parainfluenza139 (2.1)92 (3.1)0.67 (0.51, 0.87)<0.01
RSV369 (5.6)202 (6.9)0.81 (0.68, 0.96)0.02
Rhinovirus/Enterovirus875 (13.4)400 (13.7)0.98 (0.86, 1.11)0.71
Non-Influenza Virus Coinfection225 (3.4)138 (4.7)0.72 (0.58, 0.89)<0.01

上の表ではコロナウイルスが1.36倍、ヒトメタニューモウイルスが1.51倍になっていました。

もちろんこのコロナウイルスは新型ではありません。従来の風邪のコロナウイルスです。しかし、新型コロナウイルスでも同様のことが起きてもおかしくありません。

これもウイルス干渉なのでしょうか?不活化ワクチンでも何らかのウイルス同士の影響があるのでしょうか?

高齢者ほどインフルエンザワクチンの接種率が高いでしょう。しかし、そのワクチンが新型コロナウイルスの感染率を増加させるとしたら、結局何をやっているかわからないですね?

このことを踏まえた場合、今年の冬インフルエンザワクチンを積極的に接種することを推奨できるのでしょうか?また、もし仮に新型コロナウイルスのワクチンができた場合、他の感染症との関連はどうなるかはもちろんわかりません。

BCGワクチンが結核だけでなく他の感染症防御に効果があるように、ワクチンはその対象としている感染症だけでなく、他の感染症に対する感染に影響を及ぼし、それが良い影響の場合もあれば悪い影響の場合もあるようです。

免疫は非常に複雑ですね。自分の免疫力を維持する方が重要でしょうね。

「Association between Influenza Vaccination Rates and SARS-CoV-2 Outbreak Infection Rates in OECD Countries」

「OECD諸国におけるインフルエンザワクチン接種率とSARS-CoV-2アウトブレイク感染率の間の関連」(原文はここ

「Influenza Vaccination and Respiratory Virus Interference Among Department of Defense Personnel During the 2017-2018 Influenza Season」

「2017年から2018年のインフルエンザシーズンにおける国防総省の担当者間のインフルエンザワクチン接種と呼吸器ウイルスの干渉」(原文はここ

コメント

  1. 鈴木 武彦 より:

    コロナ感染症などで、やはり安定感の小池百合子都知事が再選されましたね。終わってみれば、落ち着く所に落ち着いた印象でした。

    『ケトン食ががんを消す』(古川健司先生著)を読んでいますが、
    時々ふに落ちない記述もあります。
    「極端な糖質制限をあまりにも長期にわたって続けると、(中略) インスリンの出番はほとんどありません。その結果、働き場を失ったすい臓のランゲルハンス島が十分に働かない「インスリン抵抗性」を出現させてしまうこともあるのです」
    とのこと。

    色々な要素が人体には影響するのでしょうが、上記の意見は納得しかねました。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限でインスリンの出番はほとんどない、わけがないです。
      基礎分泌、12~15分程度の周期的分泌、そして糖質だけでなく、タンパク質摂取でも分泌される追加分泌です。
      糖質制限のときに認められる一時的なインスリン抵抗性はすい臓の問題ではなく、恐らく末梢性のものだと思います。
      しかし、これは糖質を摂らない限り問題にならないでしょう。

  2. 鈴木 武彦 より:

    ありがとうございます。

    正確な情報ほど、人生で大事な物はあまりありませんね。