現在、みなさんに血液データをご提供いただいております。(「ブログをご覧の皆様へ 血液検査データ提供のお願い2020」)ご協力くださった方、本当にありがとうございます。できる限り多くのデータを集めたいので、まだの方は、よろしければデータをご提供ください。よろしくお願いいたします。
途中経過ですが、毎日飲酒する方が50%弱いました。1回量がかなりの方もいました。肝機能も悪くなっている方もいますので、そのような方は少し減らした方が良いかもしれません。(余計なお世話でしょうか…)
さて、夏になり蒸し暑い日も増えてきました。(と言っても、北海道はそこまでではありませんが)
糖質制限をしている方は、ビールをあまり飲まないかもしれませんが、暑い日の冷たいお酒は格別ですよね。しかし、一方で夏は汗をかくので、脱水気味となると連日マスコミが騒いでいて、水分補給の連呼が続いています。そして、一部のマスコミは、その際ビールなどを飲むと利尿作用により、脱水を助長すると言っていたのを聞いたことがあります。
今回の研究では、暑い中運動をした後に、水分補給としてビールを飲んだ場合についてその影響を調べています。
実験室の温度(35±1°C)と相対湿度(60±2%)の環境で最大酸素摂取量の60%のランニングを1時間ほど行ってもらいました。その後、標準的なビール(4.5%)を最大660mlまで飲んだ後、自由にミネラルウォーターを飲む群、または自由にミネラルウォーターのみを飲む群(対照群)にランダムに分けました。運動後2時間の間自由にミネラルウォーターを飲むことができました。
運動による脱水は、体重の約2.5%(対照群:2.4%±0.3%、ビール群:2.3%±0.1)でした。(表は原文より改変)
運動前 | 運動後 | 水分補給後 | ||
---|---|---|---|---|
重量(kg) | 74.2±6.5 | 72.4±6.3 | 水 | 73.5±6.5 |
74.3±6.8 | 72.6±6.7 | ビール+水 | 73.6±6.9 | |
除脂肪量(kg) | 57.9±4.5 | 56.6±4.5 | 水 | 57.4±4.6 |
58.1±4.9 | 56.9±4.7 | ビール+水 | 57.5±4.5 | |
脂肪量(kg) | 10.5±3.8 | 10.0±3.6 | 水 | 10.3±3.6 |
10.5±3.7 | 10.0±3.3 | ビール+水 | 10.1±3.7 | |
ヘマトクリット(%) | 45.7±3.0 | 46.6±2.5 | 水 | 45.5±2.3 |
45.1±2.9 | 45.6±2.2 | ビール+水 | 45.0±2.1 | |
血漿量変化(%) | −5.3(−8.3; −0.1) | 水 | 3.5(0.9; 9.3) | |
−5.1(−5.7; 0.7) | ビール+水 | 3.3(0.5; 7.9) | ||
MCV(fL) | 87.7±3.0 | 87.4±2.8 | 水 | 87.5±3.0 |
88.1±3.4 | 87.8±3.4 | ビール+水 | 87.7±3.5 | |
鉄(g / dL) | 95.7±27.3 | 125.0±31.6 | 水 | 122.9±29.9 |
92.6±32.0 | 114.6±32.5 | ビール+水 | 108.0±30.5 | |
尿素(mg / dL) | 40±6 | 47±6 | 水 | 44±4 |
39±8 | 45±7 | ビール+水 | 40±8 | |
クレアチニン(mg / dL) | 1.2±0.1 | 1.3±0.1 | 水 | 1.2±0.1 |
1.2±0.1 | 1.3±0.1 | ビール+水 | 1.2±0.1 | |
ナトリウム(mEq / L) | 138±2 | 138±2 | 水 | 137±3 |
138±2 | 139±3 | ビール+水 | 137±2 | |
カリウム(mEq / L) | 4.6±0.4 | 4.7±0.4 | 水 | 4.2±0.4 |
4.7±0.4 | 4.7±0.3 | ビール+水 | 4.3±0.3 |
両方の群で、鉄、尿素(原文では尿素窒素とは書いていないので、そのまま尿素と書きます)、クレアチニンは運動後に有意に増加した一方で、体重、除脂肪量、血漿量、MCVは有意に減少しました。両方の群で水分補給後、体重と除脂肪量は有意に増加しましたが、体重は依然としてベースラインレベルを下回っていました。どちらの群でも約0.7kg(ベースライン体重の1%未満)でした。
尿素とクレアチニンは水分補給後に有意に減少しましたが、尿素は対照群でベースラインレベルよりも有意に高いままでした。
カリウムは、 運動後変化していなかったにもかかわらず、両方の群で水分補給後に減少しました。いずれのパラメータも両方の群で差はありませんでした。
水分補給後 | ||
---|---|---|
総水分摂取量(mL) | 水 | 1644±620 |
ビール+水 | 1620±587 | |
総尿量(mL) | 水 | 223±245 |
ビール+水 | 281±374 | |
体液バランス(mL) | 水 | 1429±490 |
ビール+水 | 1329±350 | |
尿浸透圧(mOsm / kg) | 水 | 681.50±181.04 |
ビール+水 | 587.17±252.23 | |
尿素(g) | 水 | 3.4±2.7 |
ビール+水 | 2.5±1.1 | |
クレアチニン(g) | 水 | 0.30±0.16 |
ビール+水 | 0.25±0.15 | |
尿酸(mg) | 水 | 40±42 |
ビール+水 | 39±43 | |
カリウム(mEq) | 水 | 9.80±3.70 |
ビール+水 | 8.33±3.45 | |
ナトリウム(mEq) | 水 | 12±8 |
ビール+水 | 13±7 | |
カルシウム(mg) | 水 | 20±16 |
ビール+水 | 20±10 |
上の表は水分補給後の体液バランスと尿排泄を示しています。分析したパラメーターはいずれも、両群で有意差はありませんでした。
自発的な総水分摂取量は、運動で失われた体重の約90%でした。総尿量を考慮すると、体液バランスは運動で失われた体重の約80%でした。水分補給後の喉の渇きのスコア(1が「のどが渇いていない」、10が「非常にのどが渇いている」の10段階の自覚する喉の渇きのスコア)は、両方の群の全員で1でした。
つまり、脱水時にアルコールを飲んでも尿量が大きく増加して、脱水を助長するということはないということです。人間の体はそこまでポンコツにできていません。もちろん、脱水状態ではないときには利尿作用があると思います。
汗をかいて脱水時に、お酒を飲んでもさらに脱水になることはありません。というよりも、このような暑い環境で運動をしたり、暑い日にエアコンも付けずにずっと汗をかいて、水分補給もまともにしない場合など以外では、自由に水分補給ができる状態であれば、通常脱水なんて起きません。水分が足りなければ、通常の人間は喉が渇くのですから、それに従えばいいのです。
以前の記事「日常の水分補給にスポーツドリンクを飲んではいけない」に書いたように、間違っても日常生活で水分補給にスポーツドリンクを摂らないようにしましょう。
「Effects of a Moderate Intake of Beer on Markers of Hydration After Exercise in the Heat: A Crossover Study」
「暑さの中の運動後の水分補給のマーカーに対するビールの適度な摂取の影響:クロスオーバー研究」(原文はここ)
以前、1週間を振り返って気がつけば、口にした液体はビールとコーヒーだけと言う事が時々ありました。決して体に良い事ではありませんし、糖質制限を始めてから意識的に水分を摂取するようにしていますが、その体験から利尿作用があるとされる飲料だけを摂取したとしても決して脱水にはならないし、水分が必要であればビールからでも水分は摂取できるのだろうと思っていましたが、やはりそのようですね。そうでないととっくに死んでいたでしょうw
ただし、そんな状態で採血すると、血がドロドロで「水分摂ってますか?」と驚かれました。
西村 典彦さん、コメントありがとうございます。
高血糖自体で脱水になる可能性がありますからね。