血小板は止血、血栓に対して最も主要な役割を担っています。しかし、血小板の機能はそれだけに留まりません。血小板には炎症や免疫とも強く関連しています。
血小板減少症は、ウイルスおよび細菌感染症のよく知られた合併症です。どうして血小板が減少するのかははっきりしたメカニズムはわかっていないと思います。
しかし、ウイルスが血小板との直接的な相互作用によって血小板減少症と関連している可能性があります。
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに対しては、血小板はマクロファージのような食細胞として振舞っているかもしれません。(図はこの論文より)
図の左上がインフルエンザやコロナウイルスなどのRNAウイルスの図です。
(上の図はこの論文より)
上の方の図は血小板がウイルスを取り込んでいる様子です。赤い矢印はウイルスです。血小板表面にあるウイルスが段々と中に取り込まれていきます。下の方の図は血小板内のウイルスです。赤い矢印のウイルスが血小板内にいくつも認められます。
ウイルス量が多いと血小板数もその分減少し、重症化する可能性が高くなります。さらにこのようなウイルスと血小板の相互作用は血小板凝集を活性化し、凝固能を促進する役割があると考えられています。そうすると血栓ができやすくなります。
血小板の活性化は血小板由来の微小粒子の形成にもつながります。以前の記事「糖尿病での塩分制限は血栓をもたらすかもしれない」で書いたように、循環血小板微小粒子の増加は、アテローム性動脈硬化症の発症と関連していますし、血栓症にも関連しています。呼吸器系のウイルス感染後、心筋梗塞や脳梗塞などが大きく増加するのは、このような血小板によるものも非常に多いでしょう。
新型コロナウイルス感染でも血小板の活性化は重症化に大きく関連しています。(図は原文より)
上の図はICU患者40人と非ICU患者10人で、可溶性P-セレクチン(内皮細胞と血小板の活性化のマーカー)、sCD40L(血小板とT細胞の活性化のマーカー)、可溶性トロンボモジュリン(内皮細胞の活性化のマーカー)を測定したグラフです。それぞれの図の左がコントロール、真ん中が非ICU患者、右がICU患者です。
可溶性P-セレクチンとsCD40Lの両方が、コントロールと比較してICU患者で有意に上昇しました。また、可溶性P-セレクチンは、ICU患者の方が非ICU患者よりも有意に高くなりました。可溶性P-セレクチンと可溶性トロンボモジュリンの両方の濃度は、フォンウィルブランド抗原(血小板凝集に大きく関連する因子)と有意に相関し、フォンウィルブランド抗原と可溶性トロンボモジュリンの両方が全患者の死亡率と有意に相関していました。
血小板は止血だけでなく、炎症や免疫に大きな役割を果たしています。血小板だけでなく、LDLなどのリポタンパク質も免疫システムの一部です。(「LDLやHDLは免疫システムの一部である その1」など参照)
感染では血栓、心血管疾患のリスク増加を常に考える必要があるかもしれません。人間の体はそこにあるすべての物質で一つのメカニズムになっているのです。血液だけを切り取ったり、脂質状態だけを切り取ったり、感染だけを切り取ってもダメだということです。まだまだ人体に対してわからないことがいっぱいあるでしょう。人類がどのように進化してきたかを考え、それに近い生き方をするのが人体にとって一番安全なような気がします。
糖質制限
「Endotheliopathy in COVID-19-associated coagulopathy: evidence from a single-centre, cross-sectional study」
「COVID-19関連凝固障害における内皮障害:単一施設横断研究からの証拠」(原文はここ)
AGEが老化の大きな原因! NHKTV「朝イチ」でやってました。
それは良いのですが、気になったのはご飯やパンなどの糖質摂取は問題にせず、
焼いた肉などの茶色い食べ物(主にタンパク質に熱を加えた食材)に含まれる多量の
AGEの摂取が元凶とされていたことです。
体内で、摂取した糖質とタンパク質が結びついてAGEができることが問題で、
タンパク質のみの食材を食べるだけなら焼いてあろうと、生であろうとさほど体に悪影響はないと思うのですが、、、
食材自体のAGE値も体には影響するものなのでしょうか。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
実際のところ、外因性、つまり食べ物のAGEが悪さをすることはほとんどないと思っています。
一番重要なのはやはり内因性AGEでしょう。まあ、NHKですから。